You're My Only Shinin' Star (312) けりをつけよう 2 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


温かみのある照明がぶら下がる店内。南向きの窓からはバラの咲く美しい中庭が見え、ステンドグラスの窓は虹色の光を床に映し出している。

ランチタイムを過ぎ、徐々に空席が目立ちだした。店の従業員は目の回るような忙しさからいっとき解放されると、ずっと気になっていたのかその視線はヘジンの座るテーブルに向けられていた。


「遅いわね、普通先に来て待ってるもんじゃない?」


隣にいたカップルが席を立つと周りには誰もいなくなったからか、あからさまに顔をしかめてヘジンは不満を口にした。


「今朝になって急に一時間遅くして欲しいって言い出したのはヘジンだろ、それに約束の時間まではまだある。」


マネージャーは頬杖をつきながらストローの先でグラスの氷を突っつくヘジンを見てため息をついた。

新たに入って来た客が南側の眺めのいい席へと案内される。自分たちの周りに他の客はおらず、話し声が誰かに聞かれることはないと判っていても、マネージャーはキョロキョロと辺りを見回し、声を落とした。


「また今日も作り話か・・・合わせるこっちは大変なんだぞ。社長とどんな風に話をつけてあるか知らないが、わざとスキャンダルを起こすヤツは初めてだ。売れないタレントじゃあるまいし。しかもでっち上げのスキャンダルで、相手がファン・テギョンだなんて。」


「結婚してなかったらこんなに騒がれなかったかしら。」


「あたりまえだ、世間の目の色が違う。せっかく今まで清純なイメージで売って来たのに、何でこんなこと・・・」


テギョンが独身ならここまで大きな騒ぎにはならなかっただろう。もっとも意図的に騒ぎを大きくしているのはヘジン本人だが。


「そんなの・・・・・・私にもよく判んないわよ。」


ヘジンはストローを咥えると手の中のオレンジジュースを吸い上げる。まるで他人事のように話すヘジンに、マネージャーのため息は大きくなった。






つやつやとよく磨かれた木の床をコツコツと靴の踵が叩く。店の入り口から続くその音は迷うことなく、真っ直ぐに目的のテーブルへと近づいた。

カツンとすぐ横で止まった足音に顔を向けたヘジンの目に映ったのはテギョン。

まさかこんな所に突然現れるとは思っていなかったヘジンは驚き、すぐには声も出ないようで目を見開くようにテギョンを見上げた。


「ずいぶん意外そうな顔だな。」


「だって入院したって・・・」


「そんなのウソだって知ってるんじゃないのか?ドラマ降ろされてCMも打ち切り、少しでも世間の目をスキャンダルから逸らす為だって。監督が謝ってたよ、自分が無理に誘ったのにスポンサーの圧力が尋常じゃなくてどうにもならなかったって。」


ヘジンの目の前に座ったテギョンは静かだが鋭い視線を真っ直ぐに向けた。

今のテギョンはテレビや雑誌などメディアへの露出はゼロ。それに比べ、ヘジンは今までと変わらずにファッション誌の表紙を飾っていた。


「テギョンさん、恨み言を言う為に来たんですか。ヘジンに当たるのはやめてください、自分が何をしたか棚に上げて。迷惑してるのはこっちなんですよ。」


ヘジンの横で険しい顔をしているマネージャーを一瞥すると、テギョンはフンと口の片端を上げた。


「被害者ぶるのはやめてくれ、あんたもグルなんだろ。あの朝いかにも驚いたフリしてカメラの後ろから慌てて入って来たが、そんなのありえないって、昔みんなの妖精って呼ばれてたヤツが言ってたぞ。あの番組、ドッキリなんて言ってるが、カメラが入る前に必ずマネージャーが来てタレントを一度起こすってな。」


それはホテルでの話を聞いたヘイが教えてくれたこと。

ヘイの言っていたことが本当なら、ヘジンを起こす為にマネージャーはカメラよりも先に部屋に入っていることになる。当然その時点でテギョンがいることに気づいている筈で、そのままにしておいたのはわざとカメラに撮らせる為以外に考えられない。


「薬で眠らせて不倫でっちあげるなんてよく思いついたな、あんたの入れ知恵か?表紙飾ってても本当は落ち目なんだな、話題作りに必死だ。次はどんな手を用意してるんだ?」


「ち、違う、俺も店に呼ばれるまで知らなかったんだ。まさかヘジンがあんなことするとは・・・社長だって・・」


そこまで言いかけたマネージャーはヘジンに脚を蹴られ、慌てて口をつぐんだ。


「ふん・・・案外あっちこっち上の方で繋がってるのかもな。それと、そっちのヤツも・・・」


テギョンはマネージャーと背中合わせに座り煙草を咥えている男の方を見た。

その男はあの朝テギョンが殴った男。


「何の嫌がらせかと思ったが、やっぱりグルだったって訳だ。わざと俺を怒らせて殴るように仕向けて・・・警察が来るタイミングもよすぎだし。」


「あんなんに引っかかる方がバカなんだよ。」


振り向いた男は笑いながら煙を吐いた。


「ずいぶん大がかりなことしてくれたよな。おかげで俺がみんなに叩かれてるって、ミニョがずいぶん傷ついてるぞ。」


「効果あったんだ。テギョンさんとの写真見せても平気な顔してたから、つまんなかったのよね。」


それまで黙っていたヘジンはミニョの名前に反応するように顔を上げると、何食わぬ顔でコクンとジュースを飲みこみクスクスと笑いだした。


「俺を嵌めたのはミニョを苦しめる為らしいな。ミニョにどんな恨みがあるんだ。」


「気に入らないだけよ、テギョンさんと結婚してるのにシヌさんと家で二人きりとか、ジェルミさんとデートとか、ありえないでしょ。そうそうカフェで会った時も知らないの男の人がミニョに声かけてた。親しそうに話して、会う約束でもしてたんじゃない。ほんと、ミニョの周りって男ばっかり、あんな女のどこがいいのよ。」


「結局は妬みか。で、俺に睡眠薬飲ませて服脱がせて。俺が寝ぼけて抱くとでも思ったのか?それとも自分にそれだけ魅力があるとでも?あの時言ってたよな、媚薬にすればよかったって。はっきり言ってやる、そんな物使ったってムダだ、俺が抱くのはミニョだけだ。」


空になったグラスの中でカランと氷が冷たい音を立てる。ヘジンはストローでくるくると氷を混ぜると口元に意地悪な笑みを浮かべた。


「そんなことより、いいんですかテギョンさんこんなとこにいて、周りのお客さん気づいてますよ。私と一緒にいるとこ見られて、マズくないですか?」


ヘジンの言う通り、店にいる客がチラチラとテギョンを見ていた。中にはカメラを向ける客も。

入院中だと姿を見せなかったテギョンがこんなところでヘジンと会っていたらどんな噂が流れるか。


「それに私、今からここで取材受けるんです。もうそろそろ来ると思うんだけど・・・」


時計の針は記者と約束した時刻を過ぎている。早く来ないかと入り口を見ていたヘジンは、開いたドアから入ってきた男がヘジンに気づき軽く頭を下げるのを見て、口角を上げた。


「ついでだからこっそり会ってるような感じで撮ってもらいますか、派手な見出しつけてもらって。ミニョがどんな顔するか楽しみだな。」


カツカツと少し慌てた足音がテギョンの背後へ近づいてきた。




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