You're My Only Shinin' Star (310) 調査 4 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


ハン・テギョンの後に続き部屋に入ったミニョは壁が発する光に目を奪われた。それは壁一面に並んだたくさんのモニターで、ミニョは見慣れぬ光景に息を呑んだ。



『機械なら見てる筈だよ』



防犯カメラのモニタールームでは、今この時もエントランス、ロビー、エレベーターや廊下などホテルのあらゆる場所をその壁に映し出している。

ハン・テギョンが椅子に座る年配の男に話しかけるとその男は小さく頷き、手元の機械をカチャカチャと操作した。

珍しそうに辺りをキョロキョロと見ていたミニョは「ちょっとこれ見て」と呼ばれ、机の上にあるモニターを指さしているハン・テギョンの横に並んだ。

モニターに映し出されているのは、テギョンがこのホテルに泊まった日に録画された映像。キョロキョロと辺りを窺うようにしてエレベーターから男が出て来る。その後ろからはぐったりとした人をおぶった男とそれに続いて一人の女。その女は紛れもなくヘジンで、男の背中にいるのはテギョンと思われる。廊下を歩きヘジンの泊まっていた部屋へ向かう姿がしっかりと映っていた。

この映像から、「一杯飲んだら帰る」とテギョンが押し切るように部屋へ入り込んだというヘジンの言葉がウソだったということは一目瞭然。

従業員からは期待していた話は聞けず、がっかりしていたミニョの顔が一気に明るくなった。


「本当はこれコピーしてあげたいんだけど、さすがにそこまでは僕の力じゃできなくてここで見せることしかできないんだ、ごめん。」


「いいえ、そんな。見せていただいただけでも十分すぎるくらいです。」


「僕はミニョちゃんの役に立てたかな。」


「はい、ありがとうございました。」


笑顔で大きく頭を下げるミニョと満足げな笑みを見せる男を、テギョンは不愉快そうな顔で見ていた。


外へ出るとすでに日が暮れかけ、青鈍色の空にはぽつりぽつりと星が見え始めていた。

風が雲を押し流していく。

ミニョはオッパの疑惑ももうすぐこんな風に晴れるわよねと、増えていく星を見上げた。




部屋へ戻ったテギョンは上着を脱ぐと片手でネクタイを緩め、ソファーに沈み込んだ。ふうっと息を吐き出し、今までかけていた大きなサングラスを外す。「お水持ってきますね」と動くミニョを目で追いかけ、テーブルにグラスが置かれたタイミングでミニョに声をかけた。


「ミニョ、俺にウソをついてないか?」


何のことか判らないミニョは小首を傾げた。


「調べたことを記者に話して記事にしてもらうと言ってただろ、あれはウソだな。」


静かな声は決して責めている訳ではない。しかし断定するような鋭い目にミニョの視線が泳いだ。


「どうして・・・」


「お前の性格を考えれば判ることだ。お前はヘジンは友達だと言った。いくら俺を助ける為だとしても、友達を売るようなこと、お前はしない。」


図星だった。あれはとっさに口を突いて出た言葉で、本当は記者に話すなんて考えてなかった。


「でも、ヘジンには話すつもりです。ヘジンの言ってることがウソだって証拠があるって。で、オッパに謝ってもらって、みんなに本当のこと話してもらって・・・」


「それは無理だろうな、ミニョに諭されたくらいでマスコミの前でウソだったと認めるとは思えん。」


「だからって何もしないでいるなんて・・・」


「何もしないとは言ってない、俺だってこの狭い空間の中でやってたことがあるんだからな。ま、防犯カメラは思いつきもしなかったが。何であの男はあんなことできるんだ・・・」


関係者以外立ち入り禁止の場所に堂々と入り、その上中にいた男に指示を出していた姿はただの飲料メーカーの社員とは思えず、テギョンは訝しみ小首を傾げた。


「そうなんです、あれは予想外でした。すごいですね、私ああいう部屋ってドラマでしか見たことなくて。」


「すごい?それはあの男に対する評価か?」


ただ単に滅多に入れない場所に入ることが出来たという喜びの反応だったが、明るく弾むミニョの声が気に入らないテギョンはムッと眉間にしわを寄せた。


「べ、別にそういう訳では・・・」


「だいたい何であの男と会ってたんだ。」


「会ってた訳じゃありません。スンウさんが従兄が協力してくれるって。で、ロビーで待ってたらテギョンさんが・・・」


従兄としか聞いていなかったミニョは、それがハン・テギョンのことだとは知らなかったと説明する。しかしテギョンはその話を聞き流し、黒い瞳を食い入るように見つめるとフンと口元を歪め、チョイチョイと人差し指を折り曲げ隣に来いとミニョを呼んだ。そしてイラついた様子でミニョの手を強く引っ張り、自分の方へと倒れかかる身体をソファーへ沈めると両手の自由を奪った。


「自分に惚れてた男との久々の再会はドキドキしたか?それが気まずくていつもと様子が違うのか?」


テギョンはそわそわと落ち着かない様子のミニョが気になっていた。

ミニョの上にのしかかり、至近距離でその顔をまじまじと見つめる。

いつもならこんな風に見下ろせば、少し恥ずかしそうにしながらも大きな瞳はテギョンの姿を映しているのに、キョロキョロと逃げるように動く瞳はどう見てもいつものミニョとは違っていて、テギョンの眉間のしわが深くなった。


「ち、違います、全然そんなんじゃありません。」


「だったらどうしてさっきから視線を逸らす。」


「それは、その・・・・・・オッパがいつもと違うから・・・」


「はあ?」


「今日のオッパは髪も目も違ってて、何だか別人みたいで・・・」


テギョンはミニョの後を尾ける為に金髪のかつらを被っていたが、それ以外にブルーのカラコンもつけていた。しかしずっとサングラスをかけていた為、この部屋に帰って来て初めてミニョはその青い目を見た。

たらりと垂れ下がった金色の前髪の隙間から覗く、青く鋭い光。目の前にいるのはテギョンだと判っていても、初めて見るその姿に何だか心が落ち着かない。吸い込まれそうな美しい二つの海に見つめられているだけで、ドクドクと鼓動が速くなっていくのに、こんな至近距離で目を合わせれば息が止まってしまいそうで、ミニョはまともにテギョンの顔が見られなかった。


「えっと、ですから・・・・・・今日のお星さまはキラキラ眩しすぎるってことです。」


それは夜空に輝く星ではなく、意地悪な笑顔を見せる魅惑的な星。


赤い顔を背けるミニョに、テギョンはクッと小さく笑った。

もともと疑っていた訳ではない。あの男に笑顔を向けるミニョにイラつき、ちょっといじめてみたかっただけ。それがこんな風にあからさまに”惚れ直した”という態度を見せられては、いじめる気も失せてしまう。

もっとも、別の角度からいじめたいという思いがムクムクと湧き上がってもきているが・・・

無防備に目の前に晒された首筋に唇を落とせば、いつも以上にピクリと跳ねる身体。

ミニョの吐息が切なく震える。

テギョンはどこか初々しさを感じさせる小さな抵抗を封じ込めると、わななく唇を熱く塞いだ。




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