You're My Only Shinin' Star (300) 罠 1 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


ホテルの部屋の前。廊下でスタンバイするリポーターとカメラマン。

ディレクターの指示でドアが音も立てずに開けられた。

中は暗い。

それもそのはず、今はまだ夜明け前でこの部屋の宿泊客は寝ている時間。もっとも番組的には、寝ていてもらわなければ困るのだが。


”寝起きドッキリ”


芸能人の寝こみを襲い、寝起き姿を撮るという悪趣味な番組だが、アイドルたちの寝ぼけた姿が面白いと人気の番組だった。

今回のターゲットは女性モデル。

ライトで足元を照らしながら、暗い部屋の中をベッドへと近づいていくリポーターとカメラマン。その目が床に脱ぎ散らかされた服を捉えた。


「結構だらしないんですね。」


内緒話のように声をひそめて話すリポーター。その間にもカメラは落ちている服を順に映していく。

ブラウス、スカート、ストッキング、キャミソール・・・


「まさか裸で寝てるってことはないですよね。」


小声でハハハと笑いながら落ちていたブラを指でつまみ上げるリポーター。これ放送できるのかなぁというカメラマンの呟きをマイクが拾う。

ベッドの傍まで行くと、部屋の主は布団の中にもぐりこんで眠っていることが判った。

パチンと部屋を明るくする。

いつもならこの後、「おはようございます」と声をかけながらゆっくりと布団を捲るのだが、足元に落ちていた服を見てその手が止まった。

そこにあったのはあきらかに男物の服。

その場にいたスタッフ全員が顔を見合わせた。


「これってもしかして・・・ヤバくない?」


「まさか逆ドッキリ・・・とか?」


「超スクープ?」


「撮っても放送できるのか?」


スタッフがひそひそ声で会話する。その後ろからディレクターが布団を捲れと指示を出した。






「うわっ!」


大きな叫び声とまぶた越しに入り込む眩しい光にテギョンは意識を揺り起こされ、顔をしかめながら目を腕で覆った。そして続くざわめきにうっすらとまぶたを開け、辺りを見る。そこに見えたのは大きな口を開け固まっている男とカメラを担いだ男、その後ろにも何人か。どうやらテレビ局の人間らしい。

何とかそこまで頭が働いた時、更にその後ろからばたばたと足音を立て誰かが慌てて駆け寄ってくるのが見えた。


「ちょっと待って!ストップ、ストーップ!撮らないで!」


その男はカメラからテギョンを護るように両手を広げて立ちはだかる。


「すいません、今日のコレはなかったことに、見なかったことにしてください、お願いします!」


ぺこぺこと何度も頭を下げ、とりあえずスタッフを部屋から追い出した男は、ガチャンとドアの閉まる音と共に猛然とダッシュで駆け戻って来た。


「おいヘジン、なんてことしてくれたんだ!この状況をどう説明するつもりだ!それにテギョンさんもテギョンさんだ、一体何でこんなことに・・・」


一方的にわめき立て、その場に膝から崩れ落ちた男の顔にテギョンは見覚えがあった。

確かヘジンのマネージャー・・・

テギョンはまだ少しぼんやりとする頭で、どうしてこの男が・・・と上半身を起こしたところで自分が服を着ていないことに気づいた。かろうじて下着ははいているが、素っ裸同然。そして自分の横でもぞもぞと何かが動く気配に視線を移動させた。


「うわっ!何でお前が・・・!」


テギョンは心臓が止まりそうなほど驚いた。そこにいたのは何も身に着けていないヘジン。

白い裸体で横たわる彼女は、う~んと意識を取り戻すと、男二人の視線に「きゃあっ!」と布団にもぐりこんだ。


「どうして私、こんなかっこしてるの!?」


「それはこっちの台詞だ!あああ、何てことしてくれたんだ。万が一にもこんなことが起きないように、撮影の話はしてあった筈だ。なのによりによってこんな日に男を連れ込むなんて。」


「ちょっと待って、私だって知らない。昨日はテギョンさんとご飯食べただけで・・・」


二人の言い争いを耳の端に聞きながら慌てて落ちていた服を拾うと、テギョンは混乱する頭で昨日のことを思い出そうとした。

昨日の夜は仕事を済ませた後、車を走らせレストランへ行った。それはミニョのことをマスコミに売ろうとしているヘジンを止める為。「食べないなら私と食事したことにはなりませんよ」と言われ、運ばれてきた料理にほんの少しだけ手をつけた。楽しそうに一方的にしゃべるヘジンの話を右から左へと聞き流していたところまでは憶えているが、その後の記憶がない。気がついたらカメラが見え・・・


「テギョンさん、まさかヘジンを酔わせて・・・」


「ちょっと待て、俺は何も・・・」


「テギョンさんはそんな人じゃありません。憶えてないけど・・・きっと酔った私がテギョンさんを誘ったんです。テギョンさんも酔ってたから、それで・・・」


「俺は酔ってなんかいない、酒だって飲んでないぞ。」


それははっきりと憶えている、アルコールは一滴も口にしなかった。しかしテギョンにもその後の記憶がない。


「ああもう、どっちがなんてこの際関係ない。二人がこういう関係だってバレた以上、少しでも早く何か手を打たないと。」


「こういう関係って・・・俺は何もしてない、俺達は何でもないぞ。」


「この状況でそんな言い訳通用すると思ってるんですか。」


唸りながら頭を両手で抱え込んだマネージャーは、キッとテギョンを睨んだ。


「とにかく外にいる連中は何とかここから引き離しますから、その隙にテギョンさんは出てってください。」


遠のく声はやがてその姿と共にテギョンの視界からも部屋からも消えて行った。




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