You're My Only Shinin' Star (296) 近づく影 3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。


はっきりとしたことは判らない、確信もない。ただ送られてきた写真とヘジンが何か関係あるのではないかという考えがテギョンの頭から離れなかった。


「テギョン、調べてきたぞ。」


一人では答えの出ない疑問をあれこれ考えていてもらちがあかない。素直に答えるかどうかは判らないが、とにかく直接聞いてみようと、テギョンはマ室長にヘジンのスケジュールを調べさせた。


「明後日、テレビ局が一緒だ。」


同じ番組に出演しなくても仕事が同じ局ならヘジンをつかまえることができる筈。テギョンはヘジンの収録が終わるのを待って、スタジオから出て来たところで話があると声をかけた。


「私も、テギョンさんにお話ししたいことがあったんです。」


突然呼び止められたのに少しも驚いた様子を見せず、まるでテギョンが来ることが判っていたかのようにヘジンは笑顔を見せる。

局内のカフェで話をしようとしたテギョンに対し、ヘジンはミニョのことで誰にも聞かれたくない話があると、今日はもう使う予定のないスタジオへとテギョンを誘った。ひと気のない場所はうす暗く、しんと静まり返っている。ヘジンは秘かに口に笑みを浮かべると、ここなら誰にも聞かれませんねとテギョンを振り返った。


「テギョンさん・・・記事見ました?」


先に話を切り出してきたのはヘジンだった。

どこか楽しげに聞こえる声と薄く笑った目がテギョンに不快感を与える。

その言葉だけでヘジンが何のことを言っているのか、テギョンには聞くまでもなく判った。


「あれって・・・ミニョでしょ?」


「やっぱり・・・記者とつながってるのか。」


シヌとジェルミの記事に載っていた女性の顔は、誰だか判らないようにしてあった。ジェルミですらシヌと一緒にいるのは誰だろうと言っていたくらいだ。それをヘジンはミニョでしょ?と聞いてきた。ということは、加工される前の写真を見たことになる。つまり、何らかの理由でヘジンが記者とつながっていると考えていいだろう。


「そうですね・・・でもあの写真、カメラマンが指示を出して撮ったんじゃないですよ。あれがミニョの本性。テギョンさんが留守の間にシヌさんを連れ込んだり、ジェルミさんとデートしたり。」


記者とつながっているということを否定しなかったヘジンは、平然とした顔でミニョを非難する言葉を口にした。


「あれはヘジンが思ってるような写真じゃない。」


はたから見ればそう見えるのだろうとテギョンは思った。しかしミニョとシヌ、ジェルミの関係はそういったものではない。あの記事、写真だけはその場の事実を写したものだが、交際しているとかいう記事はでたらめだ。


「ミニョがそう言ったんですか?で、テギョンさんはそれを信じるんですか?」


「ああ、信じてる。俺はミニョもあいつらも信じてる。」


テギョンはきっぱりと言い切った。それにもとはといえばミニョを送って行くことも出かけることも、忙しいテギョンが二人に頼んだこと。

何かを期待するかのようにわずかに上がっていたヘジンの口角が、ゆっくりと下がっていった。


「あ~あ、つまんないな、もうちょっとミニョのこと疑ってもいいと思うのに。でもまあ三人が仲いいのも無理ないか、短い期間だけどミニョも同じバンドのメンバーだったんだから。」


思いがけないヘジンの言葉にテギョンの頬がわずかに強張った。

それまでは食い下がるヘジン相手にやれやれといった表情をしていたテギョンの目が、ヘジンを射抜くように鋭い光を放つ。


「・・・・・・何のことだ。」


静かに声を発したつもりだった。いや実際テギョンの声は落ち着いていた、落ち着き払っていた。その不自然さに今度はヘジンが目を光らせた。


「とぼけても無駄ですよ、全く身に覚えのない話だったらそんな顔しないでしょ。テギョンさんてもうちょっとポーカーフェイスのできる人だと思ってたけど、案外顔に出ちゃうタイプなんですね。それとも、ミニョが絡んだ時だけですか?」


微かに歪むテギョンの顔を見て可笑しそうにくすりと笑うヘジンはそのまま話を続けた。


「私の父、結構いろんな方面に顔が利く人で、力もあって使える人も多くて。だからちょっと父の力を借りてミニョのこといろいろ調べたんです。そしたら・・・」


キム記者にも会って話を聞いたというヘジンは笑みを浮かべながらもテギョンの顔色を読むようにじっと視線を外さない。対するテギョンもじっとヘジンを見据えたまま。

シラを切り通せる相手かそうでないか、テギョンは一瞬で判断した。

”コ・ミナム女説”でこそこそと嗅ぎ回り、一人で騒いでいたキム記者はまだ隙があった。しかし目の前にいる女はただのモデルだというのに、どこかごまかしきれない雰囲気を漂わせている。

余裕のある顔はキム記者以上に詳しいことを知っていると言わんばかりに笑みを浮かべていた。


「やだなあ、そんな怖い顔しないでください。ミニョがA.N.JELLにいたって話は確かに興味深いけど、それよりもっと面白い話があるんです。ミニョって・・・」


「目的は何だ。」


ヘジンは面白いと言った言葉通り、楽しそうにくすくすと笑いながら話を続けようとするが、テギョンは不快な表情でそれを遮った。

沖縄でもそうだった。ミニョの話をするヘジンの目は攻撃的に光って見える。


「目的?そうですね・・・テギョンさん来週お仕事で公州に行きますよね。私も同じ日に行く予定があるんです。夜、向こうで一緒にご飯食べませんか?」


「俺を食事に誘う為にミニョのこと嗅ぎ回ってるのか。マスコミにバラすと言えば俺が断れないと思って。生憎だったな、バラされて困るようなことは何もない。」


ミニョがミナムの代わりにA.N.JELLにいたこと。キム記者と決着をつけた時からもし別の誰かが真実を突き止めたなら、その時はリーダーとしてテギョンが全ての責任を負うつもりでいた。

もともと巻き込まれたミニョに責任はないし、ミナムの代わりとして受け入れたことを後悔などしていない。だから今更そのことを盾に、たかが食事といえどもテギョンは従うつもりはなかった。


「だとよかったんですけどね・・・」


しかしヘジンをつっぱねるテギョンの返事は予想の範囲内だったのか、特に表情を変えることもなく、ヘジンは一枚の写真をテギョンへ見せた。そして誰もいない場所なのに、誰かに聞かれちゃまずいでしょといわんばかりにテギョンの耳元に口を寄せた。


テギョンの顔が険しくなる。


ヘジンの囁く息が耳に触れ、不快な表情を浮かべるとともに、その内容にテギョンは鋭い視線をヘジンへ向けた。


「これって秘密にしといた方がいいんじゃないかなぁ・・・変な噂が立ったら、ミニョ、コンサートに出れないと思うんですよ。それに・・・」


その後の言葉を再び内緒話のように小声で話すヘジン。

くすくすと笑うヘジンはテギョンの肩に手を乗せると素早く顔を近づけ、自身の唇をテギョンの唇に押しつけた。




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