シヌの記事が載ってから数日後、テギョンのもとに新たに封筒が届いた。
どこにでも売っていそうな白い封筒。宛名も送り主も書かれていないそれは、テギョンに渡して欲しいと事務所の受け付けに朝早く届けられたという。
嫌な予感がしたテギョンは顔をしかめながらすぐに中を覗いた。そこに入っていたのは予想通りたくさんの写真で、テギョンはその中の一枚を無造作に取り出すと、眉をひそめた。
「ジェルミ。」
テギョンは練習室に行き封筒をジェルミへと放り投げた。受け取ったジェルミは何だろうと中を覗き・・・
「あーっ、ミニョの写真だ、俺にくれるの?・・・あれ?これってこないだデートした時の・・・・・・テギョンヒョン、まさか尾けてたの?」
中に入っていた写真はこの間ジェルミがミニョと出かけた時のものだった。
大きな口でクレープにかぶりつくジェルミとそれを笑いながら見ているミニョ。コーラで服を汚した場面や、芝生に二人並んで座っているところなど、あの日にあった出来事が、まるで見てくれと言わんばかりにそこにある。
「誰が尾けるか、あいにく俺は忙しくてそんな暇はない。だからジェルミに頼んだんだ。それにあれはデートじゃない、ミニョの気分転換だ。」
二人で出かけたことは事実だが、そこのところを間違えるなとテギョンが訂正する。そして封筒から写真の束を出し、一枚ずつ目を通しているジェルミにこの写真についてどう思うか聞いてみた。
「どうって・・・ミニョが可愛く撮れてていいんじゃない。ツーショットいっぱいで嬉しい。ほら、これなんか恋人同士みたいで・・・って、テギョンヒョン、俺にくれるんじゃないの?」
のほほんとミニョとのツーショット写真に顔を綻ばせているジェルミの手から写真を全て奪い取ると、テギョンは同じ質問をシヌへ向けた。
「デートの記念写真じゃないことは間違いないだろうな。・・・ネットを調べた方がいい。」
その言葉でやっとテギョンの質問の意味を理解したジェルミはネットを見た。
「あったあった、うわー何かこうして見ると、俺とミニョの秘密のデートみたいでドキドキする。」
シヌの時と同じように、さっき手に取って見ていた写真と同じものが載っていた。
「俺の時と同じヤツが撮ったんだと思うが・・・これを撮ったヤツは一緒にいる女を調べてそれが誰だか判ったんだろうな。だから俺じゃなくテギョンに写真を送った。」
「何の為に?」
「記者にしてみれば浮気現場にしか見えなかったんじゃないか。それをテギョンに知らせてどうしたかったのかまでは判らないけどな。ミニョが一般人じゃなかったら、今頃顔も名前も晒されてただろう。」
テギョンはシヌの言葉に耳を傾けつつ、何かを思案するように一点を睨みつけていた。
その日の夜、テギョンは記事をミニョに見せた。
「うるさいマスコミには事務所を通して一般人の友人だと言ってあるから、お前の周りに記者が押し寄せることはないと思う。だがもし、変なヤツが声をかけてきたり、妙な視線を感じると思ったらすぐに俺に知らせろ。」
まさか自分がシヌやジェルミといるところを撮られるとは思ってもみなかったミニョは、その記事の内容にショックを受けつつコクリと頷いた。そして不機嫌そうに眉間にしわを寄せたまま画面を見ているテギョンに、おずおずと話しかけた。
「オッパ、あの、これはひったくりにあって怪我をした私を、ここまで連れて来てくださった時ので・・・」
ミニョが見ているのは、玄関のドアを開けシヌを見送っている写真。
「シヌから聞いた。」
シヌの前では誤解されるような行動はするなと極力余裕のあるフリをしたつもりのテギョン。(実際にはおどろおどろしいオーラが出ていたのだが、本人はそれに気づいていない)
「でも・・・」
ミニョの前では、たとえどんな理由があろうとも、この場所にシヌが入り込んだことは許せないなと、拗ねた子供のような顔をしてミニョを後ろから抱きしめた。
すみません、と謝るミニョを腕に閉じ込めたままテギョンはヘジンの言葉を思い出していた。
『昨日テギョンさんがいない間に、家にシヌさんを連れ込んだかも・・・』
ミニョが昔、二股をしていただとか、シヌの話ばかりしているという話はとうてい信じられない。しかしロケで沖縄に泊まった日、シヌが家に入ったことは事実。
単なる偶然か、それとも・・・
「オッパ・・・く、苦しいです。」
いつの間にかミニョを抱きしめる腕に力が入り過ぎてしまったようで、テギョンは慌てて力を緩めるが、頭の中からヘジンのことが消えることはなかった。
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