You're My Only Shinin' Star (272) ヘイの動揺 5 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「俺は今日ほど一部のマスコミのいい加減な記事に腹を立てたことはないぞ。」


事務所の一室で。入ってくるなりマ室長はそんな感じで話を始めた。

部屋の中にいたのはA.N.JELLのメンバーと新人マネージャーのスンウ。

一体何事かとみんなの注目を浴びながら、マ室長は手にしていた週刊誌をテーブルの上に置いた。

表紙に載っていたのはミナムの写真。それは 『ユ・ヘイと破局!』 『新しい恋人と深夜のデート』 など、購買意欲を煽る見出しで飾られていた。

それを見ながらマ室長はずり下がった眼鏡を人差し指でぐいっと押し上げた。


「この記事はひどいよな、忙しくてヘイさんと会えないだけなのにいきなり破局だなんて。それに共演者と食事なんて普通だろ。それをデートに仕立て上げるんだから。」


掲載された写真はミナムがミアと食事をしているもの。それは発売前にFAXで事務所にも届いていた。しかしミナムが共演者と二人で食事をしている光景は珍しくはなく、まさかこんな文章をつけられるとは思ってもみなかったマ室長は、デタラメな記事だと珍しく怒り顔で、そうだろ?と周りの顔を見る。

その様子に、記事の内容以前に自分の時とはあまりにも違うマ室長の反応にテギョンが口を尖らせた。


「俺の時とはずいぶん違うんだな。」


妊婦と並んで写っている写真を見て記事を鵜呑みにし、そんなヤツだったのかとテギョンを非難していたのはそれほど前のことではない。


「あーいやーそれはだなぁ・・・まあ過ぎたことだ、気にするな。そんなことより今はミナムの記事だ。」


反論の言葉どころか言い訳すら出てこないマ室長は、テギョンの冷ややかな視線から逃れるように、泳がせた目と話をテーブルに戻した。


「頻繁に見られたユ・ヘイとのツーショットだが、最近は全く見られず、かわりに別の女性と出歩く姿が見られ・・・って、適当なこと書いてるよなぁ。」


「でもミナムって、ここんとこヘイさんと会ってないよね。前はよくヘイとデートって出かけてたのに、最近はそれ、全然ないし。こないだ街で女の子と買い物してるとこ見かけたよ。それってたぶん、この娘だったと思う。」


「そ、そりゃあミナムだってヘイさん以外の女性と出歩くことだってたまにはあるだろう。別に彼女の部屋に泊まったわけじゃあるまいし・・・」


「あ、俺泊まったことあるけど。」


サラリと言うミナムにマ室長は驚いて顔を上げた。


「こないだも仕事帰りに行ったよ。スンウに送ってもらった。」


「スンウ、本当か?」


「はい、合宿所に向かってたんですけど、途中でミナムさんに電話が入って。で、ミアんとこ行ってーって言われたんで、送って行きました。」


「な・・・じゃあミナム、この記事、本当のことなのか?」


新人マネージャーのスンウですら知っているのに、自分だけが知らなかったのかとマ室長は大きなショックを受けた。


「う~ん・・・事実と虚構が半々ってとこ、かな。」


ミナムは週刊誌の記事を目で追うと、その内容を楽しむかのような顔をした。


「ミナムのプライベートだ、俺達が口を挟むことじゃない。」


何か言いたげに口を動かすマ室長をけん制するようにテギョンが口を開く。


「サンキューテギョンヒョン、みんなには迷惑かけないようにするからさ、温かく見守ってよ。」






ガラスのローテーブルの上にはいくつもの新聞と雑誌。その全てにミナムの記事が載っていた。

見なければいいのに・・・そう思いつつ、店で目にするとつい手に取ってしまう。

空港で待っていた記者に、「別れ話はどちらからですか?」と聞かれた時は何のことだか判らなかったが、自宅へ向かう車の中で、ネットとマネージャーの買ってきた週刊誌を見た瞬間、「何よコレ!」と大きな声を上げてしまった。

記事のことを聞くために何度もミナムへ電話をかけたが、その度に、今忙しいからとろくに話もせずに切られてしまう。

帰国して一週間。

ミナムから連絡はなく、目に入ってくるのは”新しい恋人”という名の知らない顔の女とのツーショットばかり。


「愛想つかされちゃったのかな、私は別れたつもりなんてないのに・・・」


”破局”という文字が大きくて、いやがおうでも目に入ってしまう。

ミナムの言った、『考え直す』という言葉の意味が、今の状況を表しているのは間違いないと思うと、ちゃんと向き合おうとしないで言葉を濁し、誤魔化してばかりいた自分が悔やまれる。


「・・・グラビアアイドルだか何だか知らないけど、誰よコレ、全っ然売れてない娘じゃない。」


ミナムの隣で笑う女を見て、ヘイは雑誌を放り投げた。




久しぶりのオフ。ヘイはスタイリストに誘われ飲みに行った。そこにはワンコーディもいて、女三人で深夜まで飲んだ。


「今日は言いたいこと全部言っちゃいなさい。」


ワンの言葉に、酒の勢いも手伝って今までたまっていたミナムに対する不満を口にするヘイ。それは最近の熱愛報道やプロポーズのことなど様々だったが、最後には「私はずっと好きなのに・・・」とうつろな目で呟いていた。


いつもなら記憶がなくなるほど飲むことはないのに、昨夜はかなり飲んだようで、いつ帰って来たのか、どうやって家まで来たのかも思い出せない。二日酔いで痛む頭を抱え、喉の渇きを潤したあと、何気なしにテレビのリモコンを手に取ると、大きな画面に映し出されたのはミナムの顔。



『ヘイさんとのことはハッキリされてるんですか?』


『俺、二股ってできないんだよね』


『ミアさんのアパートから早朝ミナムさんが出てきたのを目撃されてますが・・・』


『あれ、見られてたんだ。結構早く出たつもりなのに、記者さん達も大変だなぁ』



囲まれた記者に質問され、それに答えるミナム。

ヘイはすぐにテレビを消した。


数日後、ずっと連絡のなかったミナムから電話が入った。


「明日の夜、会えないかな。大事な話があるんだ。」


久しぶりに聞いた電話の声はどこかよそよそしく、距離を感じさせる声だった。




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