You're My Only Shinin' Star (273) ヘイの動揺 6 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

レストランの個室。初めてミナムと二人で食事をした場所 。

その後も何度かここへ来た。


ミナムはまだ来ていない。

大事な話・・・いい話だなんてとても思えない。ミナムが”考え直した結果”を告げに来ると思うと、ヘイは苦い想いを抱きながら緊張した面持ちで座っていた。


別れよう、別れてくれ、他に好きな娘ができた、もうヘイのことは好きじゃない・・・

何と言われるか頭の中でいろいろとシミュレーションしてみるが、思いつくのはストレートな哀しい言葉ばかり。

ミナムのことは今でも好きだった。たとえミナムが別の女のことを好きになったとしても、それでも好きという気持ちに変わりはない。

それにまだ完全に信じた訳ではなかった。ミナムが自分以外の女を好きになるなんて。それくらいヘイにはミナムに愛されているという自信があった。

しかしその自信も毎日目にする報道によって、徐々に失われていく。


「ミナムのことだから、きっと平然とした顔で久しぶりとか言うのよね。で、ニコニコしながら最近どうだった?とか、俺忙しくてさぁとか当たり障りのない話をして。食事が終わる頃に”大事な話”ってのをサラッと言うのよ。その前にミアっていう女のこと、どういうことか問い詰めてやる。」


目の前の空いた席を見ながらグラスのシャンパンを少し飲む。時計を見ると待ち合わせの時間を三十分も過ぎていた。


「遅いわね・・・」


今までは遅れる時はちゃんと連絡があった。何の連絡もなくこんなに待たされるのは初めてのこと。携帯を取り出しミナムへ電話をかけるがつながらない。


イライラと、グラスの中を上っていく気泡を見つめながら更に三十分。


すっぽかされた?それとも初めからからかうつもりだった?もしかしたら、こうしてる間もミアという女と一緒にいるのかも知れない・・・


そんな考えが頭を過ると、ここにこうして座っていることがバカらしくなる。唇を噛むとこの場所を去る為にヘイはバッグを手にした。

その時、テーブルの上に置いてあった携帯が鳴った。

ミナムからの電話なら大声で文句を言ってやろうと思ったのに、かかってきた相手はミニョ。こんな時に一体何なのと思いながらも電話に出た。


「え?」


初めはよく聞き取れなかった。慌てた様子のミニョの声がとぎれとぎれに聞こえてくる。どこか少し震えているようにも感じる声。



『お兄ちゃんがバイクで事故に遭ったって、さっき連絡があって・・・』



お兄ちゃん?お兄ちゃん・・・お兄ちゃんって、ミナムのことよね・・・

ミナムがバイクで・・・事故?



『今オッパと病院に向かってるところなんです』



そう言うミニョの後ろから「着いたぞ」と低い声が聞こえる。



『ヘイさんも早く来てください。場所は・・・』



話し声の消えた携帯を耳に当てたまま、しばらくの間ヘイの身体は動けなかった。ミニョの話を理解しようとしても、頭が全く働かない。


目の前の空いた席。

いつまで待っても来ないミナム。

そして今の電話・・・


止まっていた思考が動き出した時、ヘイの身体も動き出した。






ミナムがバイクで事故・・・

信じられなかった。それでもヘイはタクシーを止め、乗り込んだ。

しばらく走ると混むような時間ではないのに、目の前には赤いテールランプの長い列。


「この先で事故があったみたいで車線規制されてるんですよ。そこを過ぎればスムーズに行けると思います。」


ノロノロと走るタクシーにいら立っていたヘイは、運転手の言葉にハッと顔を上げた。窓の外を見る。しばらくすると事故現場と思われる場所を通り過ぎた。そこには大型トラックと、そのすぐ傍に壊れたバイクが転がり、周囲には破片が散らばっていた。



『バイク買ったんだ』



数ヶ月前、ミナムが買ったばかりのバイクを走らせ自慢げに見せに来たものとよく似ている。そしてその横に転がっているフルフェイスのヘルメット。



『やっぱこっちじゃないとね』



アイドルだから顔はもちろん頭を護るならフルフェイスじゃないと・・・としっかり頭にかぶっていたのを思い出す。


震える手を握りしめ、ヘイは両目をぎゅっと閉じた。




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