You're My Only Shinin' Star (260) 小さな来訪者 2 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「重いっ、ジェルミ、どけっ!」


「ああ、ゴメン。」


部屋の入り口でべったりとうつ伏せで床にくっついているミナムと、その上に乗っかっているジェルミ。

ジェルミが慌ててミナムの上から身体を移動させると、ミナムもやっと冷たい床から離れることができた。


「お前達、何でここに・・・うわっ!なんだこりゃっ!?」


入り口から一番遠いところにある机に突っ伏していたマ室長は、ガタンと音をさせ立ち上がると、寝起きのまだハッキリとしない頭でミナムとジェルミを認識した。その後、しょぼしょぼと目を瞬かせながら辺りを見回し、その惨状に丸い眼鏡の奥の小さな目をめいっぱい見開き言葉を失った。

口の字状に並べられた机は、赤やら青やらとにかくいろんな色で絵が描かれている。

四角がちょっと欠けた図形の下に、丸が描かれているのは車だろうか?

四角の下に丸が描かれ、それと同じものがいくつもいくつも並んでいるのはどうやら電車らしい。

他にも花のような絵、動物と思われる形、更には未知の生物がうようよと机の上を徘徊している。

床の上には小さくなった何本ものクレヨンが散乱していて、どうやらこれでらくがきをしたらしいということは考えるまでもなくすぐに判った。


「やってくれたな、ミンジュン・・・」


マ室長が傍にいた子供に顔を向けた。

しかしミンジュンと呼ばれた男の子は、ホワイトボードの前にずりずりと椅子を運んできてその上に乗り、手に持ったクレヨンで新たに新生物を誕生させるのに夢中で振り向きもしない。

マ室長は全身の力が抜けたように、椅子にへたりこんだ。


「なにこれ、どうなってんの?」


「ジェルミ、ちょっと来てみろよ。」


ミナムは椅子に乗って歌を歌いながらホワイトボードいっぱいにらくがきをしている男の子の顔を見て、訝しげに目を細めていた。


「この子さぁ、何となくマ室長に似てると思わない?」


それまでジェルミの視線はすごい状態になっている机に集中していたが、ミナムに声をかけられ子供の方へと視線を向けた。

四、五歳くらいだろうか、あどけない顔で楽しそうに次の作品を作り上げようとしている男の子の目元が、確かにマ室長に似ているように見える。


「ホントだ、似てる。それって、もしかして・・・」


「マ室長の・・・子供?」


二人は顔を見合わせるとはじけるように声を上げた。


「えーっ、マ室長って子供いたの!?」


「てか、結婚してないよな、認知だけしたとか?」


「こないだテギョンヒョンにあんなこと言っておきながら、自分の方がひどいじゃん。」


「確かにこれは秘密だな・・・」


”未婚のマ・フニ、秘かに子供がいた!”説で盛り上がっているミナムとジェルミ。


「おい、違うぞ、俺の子じゃないって。」


ガタンッと椅子が倒れるほど勢いよく立ち上がったマ室長は、ブンブンと大きく頭を横に振った。





マ室長の話によると、この男の子はマ室長の妹の子、つまり甥にあたるらしい。

今朝、といってもほとんど昼頃まで寝ていたマ室長は、起きると朝食兼昼食を食べ、借りたDVDを見ようとテレビをつけたところで、妹が訪ねてきた。突然明日の夜まで子供を預かって欲しいと言われ、断りはしたがどうしてもと拝み倒され、仕方なく引き受けることに。

しかし、持ってきたリュックに入っていたおもちゃでおとなしく遊んでいたのは最初だけで、しばらくすると部屋の中にある物をいろいろと触りだした。あまり片付いているとは言い難いマ室長の部屋は、あっという間にぐちゃぐちゃになり、たまりかねて事務所へ連れて来たという。

ジェルミが見たのはこの部屋に待たせてあるミンジュンに、ジュースを買ってきたマ室長の姿だった。


「こっそり連れて来たのはいいが、俺、子供の相手なんてしたことないから、これからどうしようかと考えてる間に寝ちゃったらしいな。起きたらこのザマだ。」


寝てしまう前まではきれいだった机が、わずかな間に悲惨な状態に・・・


「黙ってないでアン社長に言えばよかったのに。」


「そうだよ、どうせマ室長は今日休みなんだから、仕事の邪魔にならない程度に事務所の中の見学とかできたんじゃない。こんなとこに閉じ込めておかないでさ、アン社長だって別に怒らないと思うよ・・・って、今更遅いかも知れないけど。」


確かにミナムの言う通り、今のこの部屋の状態を見てしまったら、アン社長の頬はひきつり、とても笑顔なんて見せてもらえそうにない。


「あ~~、とりあえず掃除しなくちゃ。ミンジュン、もう描いちゃダメだ。お前達、手伝ってくれ。」


「え~~~~っ、何で俺達が。」


「いいだろ少しくらい。あと、このことはテギョンには黙っててくれよ。」


「もう遅いな。」


丸眼鏡の奥の小さな目をギュッと瞑り、手をこすり合わせていたマ室長は、聞こえてきた低い声にビクリと身体を震わせた。




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