You're My Only Shinin' Star (255) 新しい日常 4 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「すいません。」


ドアの向こうには見知らぬ女の姿。とっさにそう口にしたテギョンが掴んでいたドアノブから手を離すと、重い扉は静かな音を立てながら閉まっていった。






ここ数日、毎日帰宅は深夜で朝も早いテギョン。ぎゅうぎゅう詰めのスケジュールにアン社長からの無理難題。相変わらず肝心な時に使えないマ室長と先行き不安な新人マネージャーに囲まれて、身も心も疲れ果てる毎日。

そんな中、今日は思いがけず仕事が早く終わった。外部のトラブルで予定していた撮影が延期になり、ぽっかりと時間が空いた。


「どうだテギョン、久しぶりに皆でサウナにでも・・・」


「帰ります。」


アン社長の誘いをすげなく断り、一刻も早く帰ろうと車に乗り込んだ。

予定よりもかなり早い帰宅。驚きながらも嬉しそうに笑うミニョの顔を想像していたのに・・・

ドアの向こうで驚きの表情を浮かべている女は、どう考えても知らない顔。

家を間違えるほど俺は疲れていたのかとため息をつき、その直後、そんな筈はないと思い直す。

今よりもっと忙しい時はいくらでもあった。収録中に立ったまま居眠りをしてしまうことも。いくら疲れているとはいえ、自分の家を間違える筈はない。

それに第一、指紋認証のドア。別の家のドアをテギョンが開けられる訳がない。


とすると、考えられるのは・・・幻か?


家にはメンバーや事務所の人間以外は入れたことがなく、自分の知らない人間がそんなところにいるとは思いもよらないテギョンは、やっぱり相当疲れているのかと軽く頭を振りながら再びドアを開けた。






一方、靴を履き玄関を出ようとしたソユンは、突如開いたドアの向こうに見えた人物に驚いていた。


「えっ!何で!?」


少し長めの前髪から覗く鋭い目。スッと通った鼻筋に引き締まった口元。そして痺れるような低い声。

あっという間の出来事だったが、今、自分の目の前には確かにファン・テギョンがいた。何年もファンをやっているソユンにはチラリとしか見えなくても、今のはA.N.JELLのファン・テギョンだという自信があった。

そして混乱する、どうしてここに・・・と。

その理由を考えてみたくても、頭の中は!マークと?マークで埋め尽くされていて、全く思考がまとまらない。さっき見た麗しい顔がしっかりと脳裏に焼きつけられ、興奮した身体は心拍数を上昇させ発汗を促し、余計に考えることを邪魔してくる。

閉まったドアを見つめながら、あまりの驚きに「何で?」とうわごとのようにくり返すソユン。

その後ろでは予定よりあまりにも早いテギョンの帰宅に、ミニョも驚いていた。






再びドアが開き、テギョンが姿を現す。

幻ではなく、実際に目の前に立っている女を訝しそうに見た後、その後ろにミニョがいることに遅ればせながらテギョンは気がついた。


「ただいま、ミニョ。・・・誰だ?それは。」


「えっ!ただいま?ミニョ!?」


「おかえりなさい、オッパ。・・・えーっと、それは・・・」


「おかえりなさい?オッパ!?」


テギョンはこんな状況でもミニョの顔を見ると反射的に「ただいま」と口にし、ミニョもいつもと同じように「おかえりなさい」と返す。

位置としては丁度二人の間に立ち、二人の言葉に律儀に反応してはおうむ返しのように同じ言葉をくり返していたソユンの頭の中は、更に混乱していく。

テギョンとミニョの顔を交互に見て「ミニョ・・・オッパ・・・」と口の中で何度も呟いていたソユンは、やがてパッと顔を明るくした。


「もしかして、お兄さん!?」


目の前の現実に、”ファン・テギョン=ミニョの夫”という結論にどうしても辿り着けなかったソユン。いや、認めたくない心がそれを避けていたのかも知れない。

そんなソユンの言葉にテギョンはあからさまに嫌な顔をすると、


「誰がお兄さんだ。」


不愉快極まりない、と小さく吐き捨てた。




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