You're My Only Shinin' Star (254) 新しい日常 3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

わずかに傾きだした太陽に夕暮れの気配を感じ始めた頃、仕事を終えたミニョはバスに揺られていた。

帰宅客で混み合う前の車内はすんなりと座席を確保することができ、いつものように窓際の席に座ると、流れゆく景色に目を向けながら今晩のメニューを考えていた。


バス停からマンションまでは徒歩数分。何人かの乗客と共に降りたミニョは、大通りから一本中へ入った道へと歩いて行く。

今日は予定通りならテギョンの帰りはそれほど遅くはならない筈。もっとも、予定といってもあってないような日が多く、突然アン社長から声がかかり、スポンサーと食事をしなければならないことも。そんな時は必ず「今日は遅くなる」とテギョンから連絡が入っていた。

今のところ、そういう電話はかかってきていない。

ここ数日テギョンの帰りは深夜で、夕食はミニョ一人で食べていたので今日は一緒に食べられそうと、ウキウキと軽い足取りでマンションへ向かっていた。

あと十数メートルで到着、というところで誰かが道端に座っているのが見えた。もっと近づくと、その人は座っているのではなく、片膝をつくようにしてうずくまっているということが判った。

どうやら具合が悪いらしい。


「あの、大丈夫ですか?」


ミニョの問いかけに、蒼白い顔をした女性は「大丈夫です」と答えたが、その声は細く頼りなげでとても言葉通り大丈夫だとは思えない。かといって、見た目だけで判断はできないが、救急車を呼ぶほど深刻ではないようにも思われる。

どうしようか・・・と、うずくまっている女性の顔を覗き込むように見たミニョは、ん?と首を傾げた。


「ソユン・・・さん?」


目の前にいる女性がアフリカで一緒にボランティアをしていたソユンに似ていると思い、ミニョはそう声をかけた。

うずくまっていた女性は、まさか自分の名前を呼ばれるとは思っていなかったらしく、驚いた表情で顔を上げ、そこに知った顔を認めると、どこか少し安心したように、ホッと小さな息をついた。


その場でうずくまっていたソユンだったが、しばらくすると顔に赤みもさしてきて少しは具合がよくなってきたように見える。しかしそのまま放っておく訳にもいかず、ミニョは目と鼻の先にあるマンションを指さし、「少し休んでいってください」と、ソユンを自宅へ案内した。





リビングのゆったりとしたソファーに身体を沈め、背もたれにもたれると、ソユンはまだ少し苦しかった呼吸を整え、ぐるりと視線を巡らせた。

ミニョに支えてもらいここまで来たが、思い返してみるとかなりの高層マンション。どこまで上って行くんだろうと目を向けたエレベーターの表示は最上階を示していて、指紋認証のドアに、マンションの一室とは思えないほど広い室内・・・

以前聞いた、もとは修道院にいてシスターを目指していたという話からは想像もつかない暮らしぶりに、ソユンは目を丸くしていた。


カチャカチャとお茶を運んできたミニョはソユンの具合がだいぶ良くなっていることにホッと胸をなでおろした。


「ソユンさん、もしかしてお腹に赤ちゃんが・・・」


部屋に来るまでソユンの身体の様子を見ていたミニョは、少し膨らんだお腹が気になっていた。

「実は・・・」と嬉しそうに笑うソユン。最近、だいぶ目立つようになってきたの、と愛おしそうにお腹に手を当てる姿は、とても幸せそうに見える。

今日はたまたまこの近くに住んでいる友人の家に遊びに来ていて、帰りにバス停へ向かう途中で具合が悪くなり、ミニョが声をかけたあの場所で少し休んでいたという。


「そんなことより・・・ミニョさんも結婚したんでしょ?」


一人で住んでいるとは到底思えないマンション。そして男性が一緒に住んでいる気配。

こんなところに住めるなんて、相手は一体どんな人なの?とソユンは興味津々。


「前に会った時に話してた彼よね。二つしか違わないならまだ若いでしょ。どっかの社長さん?」


ついさっきまで辛そうにしていた彼女はどこへ行ってしまったのかと思えるほどソユンの体調は回復したらしく、ミニョの結婚相手が気になって仕方がない様子。しかしミニョははっきりとは答えられない。


テギョンは今でもミニョの名前も、コ・ミナムの双子の妹であることも公表していなかった。公表してしまえばたとえ一時だとしてもミニョの周りが騒がしくなる可能性は充分にありうる。ミニョの仕事場である養護施設にマスコミが来るかも知れない。院長様に迷惑をかけるようなことになれば、ミニョは自分を責めるだろう。

だからといって、テギョンがミニョを隠そうとしている訳ではない。二人で出かける姿はあちこちでよく見られている。

一般人というのを強調しているのはマスコミに対するテギョンの無言のプレッシャーだった。

”ミニョにかまうな”という。

それはしっかりとマスコミにも伝わっているようで、テギョンがミニョと外出しても必要以上にミニョの写真が撮られることも、ミニョのことが記事として単独で載るようなこともなかった。

マスコミにつきまとわれる鬱陶しさは誰よりもテギョンが知っている。


”ミニョを護りたい”


そんなテギョンの想いを判っているミニョは、自分から「ファン・テギョンの妻です」と言ったことは一度もなかった。

しかし、いつかはソユンの耳にも入るだろう。メディアから知られるよりは自分の口から・・・と、ミニョは思い切ってテギョンの名前を口にした。


「えっ?」


ソユンの笑顔が止まった。そして・・・


「やだ、ミニョさん、エイプリルフールはとっくに過ぎましたよ。」


プッと噴き出したソユンが笑う。

ミニョの言ったことを冗談だと思ったのか、全く信じていない様子で「よっぽど訳ありな人なんですね・・・」と何をどう解釈したのか判らないが、ソユンは一人納得したように頷いた。





「今日はどうもありがとうございました。」


声をかけてもらって助かりましたと礼を言うソユンは、そろそろ帰りますと立ち上がり玄関へ向かった。


「バス停まで送って行きます。」


靴を履いているソユンの背中にそう声をかけると、ミニョも玄関へ向かい・・・

ソユンがドアに手を触れる前に、それは唐突に外側へ開いた。




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最近PCの調子が悪くて・・・


そろそろ新しいの買わなきゃいけないかなぁ


自分専用のが欲しい~


無理だろうけど・・・(;´д`)




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