You're My Only Shinin' Star (252) 新しい日常 1 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「オッパ、起きてください。」


シャッという軽い音とともに、暗かった部屋の中がうっすらと明るくなった。

日の出にはまだ早いが、闇の空間はすみれ色へと移り始めていて、東の空にはまるで他の星たちにおいていかれたように、ポツンと金星だけが輝いて見える。それは孤高で美しく、ミニョはその輝きが空の色に溶け込むまで眺めていたいと思った。しかし、今はそういう訳にはいかない。

カーテンから手を離すと、まだ眠りの中にいるテギョンの身体を軽く揺すった。


「オッパ、朝ですよ。」


昨夜も帰ってくるのが遅かったテギョン。ぐっすりと眠っているテギョンを朝早く起こすのは忍びないが、そろそろ起きてロケ現場へ向かわなければならない。

布団を捲るとベッドの端に腰かけ、顔を覗き込むようにしてテギョンを呼ぶが、眠りから覚める気配はなく、規則正しい寝息は乱れることがなかった。


「オッパ。」


いつもならこのあたりで瞼がピクリと動き出すのに、今日はしっかり閉じられたまま。

どうしようかとしばらく考え。


・・・キスしたら、起きる、かな?


そんなことが不意にミニョの頭に浮かんだ。


眠っているテギョンを見下ろし、ミニョはテギョンの顔の横に手をついた。小さく軋みながら少しだけ沈むベッドに、妙にドキドキと緊張してしまう。

腕に体重を乗せ、ゆっくりと肘を曲げていき、そっと瞼を伏せて・・・

軽く唇が触れ、すぐに離れた。

さすがに唇が触れる程度のキスでは起きないらしく、テギョンに変化は見られない。

それでも、もう一度・・・と同じことを繰り返すと、う~ん、という声とともに、テギョンの身体がもぞもぞと動いた。


「オッパ、起きてください。」


もうちょっとで起きそう、とテギョンを呼んでみるが、まだ目を覚まさない。


今日とは逆に、ミニョがテギョンにキスで起こされることは、何度もあった。

その時のことを思い出してみる。

ゆらゆらと気持ちよく波に漂っていた意識が無理矢理引っ張られ、目を開けると唇を塞がれていて。そういう時はたいていテギョンの手はミニョの胸の辺りでサワサワと動いていることが多くて・・・


もしかして、一緒に胸を触られてるから起きるのかしら?

もしそうなら、私もオッパの胸を触らないと、オッパは起きない?


どうしようかと悩んだが、それは最終手段にすることにして、もう一度キスをしてみることに。

テギョンのキスを思い出しながら先程よりも長めに唇を合わせ、そっと包み込むように、啄ばむように、キスを繰り返す。

しばらくすると、それに応えるようにテギョンの唇も動き出した。

ミニョが唇を離すと、パッチリと目を開けたテギョンと視線が合い・・・

一瞬で顔を赤くしたミニョの身体はそのままテギョンの腕に捕まった。


「逃げるなよ。」


テギョンが笑いを含んだ声で、低く言う。

驚いて身体をバタつかせたミニョの視界はぐるりと回り、テギョンを見下ろしていたのが、今では下からテギョンを見上げる格好で、ベッドに仰向けになっていた。


「朝っぱらから誘ってるのはお前だろ?」


カーテンの開けられた窓にチラリと目を遣ると、テギョンはミニョを見下ろし、喉の奥で笑う。


「ち、違います、オッパを起こそうと思っただけです。」


赤い顔でそこから逃れようとぐいぐいと胸を押すミニョを見て、テギョンは楽しげに口元に笑みを浮かべた。


「キスで起こす、か。ミニョにしてはいいアイデアだが・・・いまひとつだな、俺が手本を見せてやろう。」


そう言うとテギョンは薄く瞼を閉じ、唇を重ねた。

初めはミニョのぽってりとした唇を味わうように食んでいたが、次第に口づけは深くなっていく。

絡められる舌・・・


「んんっ・・・」


やがて鼻から抜けるような甘い声がミニョから漏れだすと、テギョンは満足げに唇を離した。


「これくらいはやってもらわないとな。」


ニヤリと口の端を上げるテギョンは、意地悪をしているようにしか見えない。さっき自分からしたキスでも精一杯だったミニョは、「そんなことできません」と火照る顔を横に向けた。

その様子にテギョンは再び喉の奥でクッと笑う。そして目の前に差し出されたような格好の白い首筋に唇を寄せた。


「はぁっ・・・んっ・・・」


不意を突かれたミニョは、いきなり走るゾクゾクとした快感に、いつもなら我慢している甘い声が、素直に口から零れてしまった。


「いい声だ、その声も目が覚めるな。寝てなんかいられなくなる・・・」


フッと笑いながら、なおも首筋に顔を埋めようとするテギョンを押しのけると、ミニョは服の襟元を握りしめ、首をすくめるようにしてベッドから這い出た。


「もう!目が覚めたんならベッドから出てください。」


赤い顔で慌てて部屋から出て行くミニョの姿が可愛くて、パタパタというスリッパの音を聞きながら、テギョンはベッドの上で座ったまましばらくの間笑っていた。




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