好きになってもいいですか? 30 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

湿った匂い。

身体に感じるわずかな衝撃。

暗く、しんと静まり返った空間の中、すぐ近くの木々の葉はパラパラと軽い音を立てていた。

ほんの数秒前までは――




雨の音が聞こえなくなった。

空からこぼれ落ちる銀の滴は相変わらず私の身体を濡らしているのに、さっきまではっきりと聞こえていた雨の音が、今は聞こえない。

かわりに聞こえているのは、テギョンさんの息遣いと驚くほど大きな自分の心臓の音。


自分の置かれている状況が判らなかった。

腕を掴まれたと思ったら急に引っ張られ、テギョンさんの声が耳元で聞こえてきて。

立ちすくむ私の身体は息もできないくらいしっかりとテギョンさんの腕に包まれている。

突然の出来事に、頭の中は真っ白。

次から次へと溢れ出していた涙さえ、驚きのあまり止まっている。

肌に感じる温もりは私の頭よりも直接身体に働きかけ、一気に心拍数を上昇させていた。


「テ、テギョンさん・・・いたい、です」


強い力で抱きしめられている身体も痛かったけど、それ以上に暴れている心臓が壊れそう。

私の言葉にテギョンさんの腕が緩んだ。

でも完全に解放された訳ではなく、私の身体は依然としてテギョンさんの腕の中。


耳にテギョンさんの息がかかる。

髪にテギョンさんの唇が触れる。

ついさっきまで肌寒く感じていた雨は頬に当たるその冷たさが気持ちいいと感じるほど、私の顔は火照っていた。



こ、こ、これは、一体、何!?



私の頭は混乱したままで、何が起こったのか理解できないでいる。


会いたいという一心でここまで来て、自分の想いを伝えて。

でもそれは傷つくのが怖くて躊躇した私の心が逃げ道を用意した表面的な言葉。

テギョンさんに促され、自分の心の奥底でくすぶっていた本当の気持ちを口にした。

いくらお兄ちゃんの妹でも、ファンという領域を越えてテギョンさんへ近づきたいと思っている私を鬱陶しがると思ってたのに・・・


ゆっくりとテギョンさんの身体が私から離れる。

私は慌てて俯いた。



抱きしめられている間は恥ずかしくて、緊張して、胸がドキドキして、早く離してって思ったのに、こうして触れていた温もりが遠ざかると、今度は何だか寂しいって・・・ああ、私、何考えてるんだろ。



ドクドクと暴れる胸を手で押さえ、そっとテギョンさんの顔を窺い見ると、テギョンさんは何だか嬉しそうな表情を浮かべていた。

テギョンさんに抱きしめられたショックはまだ続いていて、考えが上手くまとまらない。耳元で聞いた言葉もはっきりとは思い出せない。

でも私が告白するのを待っていたというようなことを言ってた気がする。

何度も思ったことだけど、やっぱりテギョンさんってよく判らない。恋人がいるのに・・・

そう思いながらふと今までのことが頭に浮かんだ。

包帯を巻いてくれたり、病院へ連れてってくれたり、一緒に夜空を眺めたり。

機嫌の悪い時もあったけど、私に向けてくれた優しさはお兄ちゃんの妹だからというだけじゃないような気がする。

それに合宿所で抱きしめられたことも。

もしかして・・・

一つのことが頭に浮かんだ。

私の勝手な想像かも知れないけど、拒まれたくないって気持ちがそう思わせたのかも知れないけど、もしかして、テギョンさんって・・・


「あの、テギョンさんって・・・見かけによらず、本当は”来る者は拒まず”って人ですか?」


ムスッとしてるけど、実は誰でも大歓迎!・・・とか?


「はあ?」


あれ?違う?


私の言葉があまりにも突拍子もなかったのか、テギョンさんはあっけにとられたような顔をした。

そして眉間にしわを寄せ、”お前は一体何を言っているんだ?”という目で私を睨んで。


「だって彼女がいるのに、テギョンさん何だか嬉しそうな顔してるから・・・」


「はぁ~~お前は・・・ったく・・・やっと俺のことを好きだと言ったと思ったのに、どうしたらそんな結論に辿り着くんだ?俺がコンサートで告白した相手は・・・お前だ」


大きなため息の後の呆れたようなテギョンさんの声。

でも笑いを含んだ目は、優しく私を見つめていた。




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