You're My Only Shinin' Star (241) 秋空の下で 9 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

皆でワイワイと食事をして、お酒を飲んで。


「ちょっとだけだからな。」


ミニョも少しだけシャンパンを飲み。

夕暮れの空に一番星が輝きだす頃、遊覧船のデッキでテギョンとミニョは肩を並べていた。船内ではまだ皆飲んでいるのか、デッキには他に誰もいない。


「ふうーっ、風が気持ちいいですね。」


アルコールのせいで火照った頬に当たる風が心地良い。

ミニョは流れゆく景色を見ながらクスリと笑った。

今日一日を振り返ってみると、長いようであっという間だったような。朝から驚くことの連続で、嬉しいことがいっぱいで。

聖堂にミナムが来てくれたことも、船上パーティーで結婚の報告をしたことも、カトリーヌが歌ってくれたことも。

皆からの温かい言葉、温かい笑顔に、とても幸せな気持ちになる。

そして、隣にはテギョン。


「ん?」


テギョンが腕に目をやると、ミニョの左手が服の袖を掴んでいた。薬指には指輪が輝く。

テギョンは黙ったまま指を絡めるように手を繋いだ。

ミニョが嬉しそうに微笑むと、テギョンは口の端を上げる。

暮れゆく景色を眺めながら、優しい時間が流れていった。






「あ、いたいた、もう、捜したんだから。二人揃ってこんなとこで何してんのよ・・・って、聞くだけ野暮よね。はいミニョ、これ、私のバッグに紛れ込んでたから、探してたでしょ。」


デッキに姿を現したワンはミニョの手のひらに、きらりと光るものをのせた。それはミニョが大切にしていつも身に着けているテギョンからもらった星のネックレス。

ウエディングドレス用のネックレスをつける時に外してから行方がわからなくなっていたのを、ワンが見つけて届けに来てくれた。


「よかった、これがないと何だか落ち着かないんですよね。」


さっそく着けようと首に持っていった手をテギョンが止めた。


「貸してみろ、俺が着けてやる。」


ミニョの首の後ろに手を回し、小さな留め具を嵌める。

ミニョは胸元に輝く星を見つめてニッコリと微笑んだ。


「落ち着かないというのはよく判る、俺も同じだ。」


テギョンは服の中から月のネックレスを引き出すと、丸い石を指でつまんでじっと眺めた。


「ずっと着けて下さってるんですね、嬉しいです。」


「ああ、いつも着けてるぞ、ドラマも映画もこれを外さなきゃならない様な仕事は全て断ってるからな。」


ミニョからもらったムーンストーンのネックレス。

今ではライブの時でも外さずにステージに立っている為、テギョンのお気に入りのアクセサリーとしてファンの間では有名になっていた。


「もう、オッパは我儘ですね、そんなこといってたらマ室長が困りますよ。」


呆れ顔のミニョを見てテギョンはプイッとそっぽを向いた。


「どうせ俺は我儘だ。今日だって・・・皆来られないって判ってて式を挙げたしな。」


「動いている遊覧船にボートで近づいて行って乗るだなんて、危ないじゃないですか。どうしてそんなに今日にこだわったんですか?」


ここに来る途中、ワンから話を聞いたミニョは、「すごく心配したんですよ」と少々怒り気味。

テギョンは身を乗り出すように手摺に掴まり、遠くに見えるソウルの街の灯りを眺めながら静かに口を開いた。


「忘れたくない日・・・ずっと憶えていたかった日なんだ。でもたぶん忘れてしまうだろうから・・・その日を結婚記念日にすれば忘れないだろうと。・・・婚姻届にサインした時、俺が何て言ったか憶えてるか?」


「えーっと確か・・・名前を間違えるな・・・って。いくら私でも、自分の名前は間違えませんよ。」


「そうだな、あの時は間違えたんじゃなくて、わざと別の名前を書いたんだから。」


「あの時?」


「二年前、お前は重要な書類にサインをするのに、違う名前を書いた。」


「二年前・・・」


「コ・ミニョではなく、コ・ミナムと。」


それまでテギョンの言葉を反芻し、しきりに首を傾げていたミニョは、「あっ」と小さな声を上げるとテギョンを振り返った。


「もしかして今日って・・・」


「やっと判ったか、ここまで言って判らないようなら、「もういい」と話を終わりにするとこだったぞ。俺一人気にして・・・バカみたいだからな。」


二年前の今日。二人は初めて出逢い、今につながる未来へと運命の歯車が回り始めた。


「オッパ、ずっと憶えてたんですか?」


「いや、結婚式を秋にしようと考えてた時、偶然ミナムの契約書を見たんだ。あの時この紙を破っていたら、俺は何も変わらないままだったんだろうなって思ったら、何だか特別な日のような気がして・・・忘れたくなくなった。」


特別な日。

それはミニョも同じだった。あの日、契約書にサインをしなければ・・・ミニョの声をテギョンが認めなければ・・・今頃は、シスターになっていただろう。

その後の人生をガラリと変えることになった運命の日。


「・・・笑ってもいいぞ、何だか今頃になって今日にこだわってきたのが恥ずかしくなってきた。」


プイッと顔を逸らし、ムニムニと口元を歪めるテギョンを見ながらミニョの顔には笑みが浮かぶ。


「素敵ですね、出逢った日をずっと憶えていられるなんて。オッパの言った通り、今日は素敵な結婚式になりました。」






すっかり日の沈んだ秋の夜。ひんやりと冷たい夜風にミニョはぶるりと身体を震わせる。


「寒くなってきましたね、そろそろ船も着く頃ですし、中に入りましょうか。」


船内へと歩きかけたミニョの腕を掴むとテギョンはその身体を自分の腕の中に収めた。

ギュッと抱きしめられ、ミニョの頬はテギョンの身体にぴったりとくっつく。


「あ、あの、オッパ、外は確かに暗いですけど、ここは電気がついてて明るいですし・・・誰かに見られたら恥ずかしいです・・・」


「寒いと言ったのはお前だ。俺はただ温めてやってるだけだ。」


腕の中で顔を赤くし、わたわたと慌てるミニョの姿を見るのが楽しくて。

テギョンは笑みを浮かべたまま、この幸せを逃がさないようにとミニョを包む腕に力を込めた。




宜しければ1クリックお願いします

  更新の励みになります

         ↓

   にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
    にほんブログ村   ← 携帯はこちら



  ペタしてね    読者登録してね