You're My Only Shinin' Star (240) 秋空の下で 8 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

いつもと変わらないミナムの笑顔。まるで食事にでも誘っているかのような気軽な口調にヘイは唖然とする。


「ちょっ・・・何よいきなり・・・それに偶然手に入れたブーケでプロポーズだなんて、何考えてるのよ。」


「ダメ?じゃあ今度ちゃんと花束贈るよ。」


「そういう問題じゃなくて。」


「じゃあどういう問題だよ。」


周りのざわめきをよそに話しを続ける二人にアン社長が慌てて近づいてきた。


「おい、ミナム、そういうことは事前に少しくらい話をしてくれ。二人の交際を認めてはいるが、結婚となるとまた別だ。ヘイさんの事務所とも話をつけなきゃならないし・・・」


「アン社長、私はまだミナムと結婚するなんて言ってません。」


「何で?ヘイの相手が務まるのは俺くらいだろ?俺を逃したら、一生結婚できないと思うけど。」


「何よそれ、失礼ね。」


「だって本当のことだろ?」


自信満々のミナムにヘイは呆れて二の句が継げない。


「二人とも・・・注目の的だぞ。」


ブーケを持ったままヘイを口説き落とそうとしているミナムの肩を、ポンとシヌが叩くと、ヘイがハッと周りを見回した。

突然のことに周囲のことなどまったく目に入っていなかったのか、あらためて皆に見られていることに気づいたヘイは瞬時に顔を真っ赤に染めた。


「もう!信じらんない!」


そう言い残して脱兎のごとくその場を去るヘイ。


「おい、ちょっと待てよ、ヘイ!」


ヘイの後を追うミナム。

二人が部屋から消えると、ざわついていた船内が今まで以上に騒がしくなった。


「何だか凄い展開になったな。」


「はい、お兄ちゃんがヘイさんにプロポーズするなんて・・・」


事の成り行きを呆然と見ているしかなかったテギョンとミニョ。なし崩し的に結婚の報告は終わりとなり、本来のイベントである創立記念パーティーへと移行する。といっても後の時間はフリー。食事は二階でビュッフェだが、飲んだり食べたりよりもまず結婚した二人と話をしようと、テギョンとミニョの周りに多くの人が集まって来た。

「おめでとうございます」と笑顔の若手社員。

「結婚というものは・・・」と真面目な顔で語りだす年配社員。

入れ代わり立ち代わり次々に二人に話しかけた後二階へと移動して行き、最終的にテギョンとミニョの傍に残ったのは二人と親しいいつものメンバー。


「テギョン、ミニョさんと彼女はどういう関係なんだ?」


「彼女?」


「カトリーヌさん・・・キャサリン・ロット、いや、今はキャサリン・ジョーンズか。有名なソプラノ歌手がなぜこんなところに・・・」


テギョンの服を引っ張り、少し離れた所へ連れて行くと、アン社長がこそこそとテギョンに話しかける。

キャサリン・ロットという名前で歌っていた頃の彼女を知っているアン社長は、彼女がミニョととても親しそうでミニョの為にわざわざイギリスから来ていることに驚きを隠せない。


「ミニョがアフリカでボランティアをしている時に知り合ったそうです。彼女はミニョのことを友達だと言ってます。ミニョは彼女を姉のように慕っていて。俺は・・・今でも時々彼女のことをライバルだと思うことがあるんですが・・・」


久しぶりに会ったせいか、ミニョのカトリーヌに向ける笑顔が一段と輝いて見える。今もカトリーヌとぴったり寄り添うように並んで楽しそうにしている姿に、俺の存在を忘れてるんじゃないかとテギョンの口が尖っていく。


「ライバル?まあジャンルは違うがテギョンも彼女も歌手には違いないからな。」


テギョンの言葉の真意など知る由もないアン社長は、なるほどと頷いた。

そしてアン社長同様、カトリーヌ=キャサリン・ロットだということに驚いている人物がもう一人。


「俺カトリーヌさんがあのキャサリン・ロットだなんて全然知らなかった~」


カトリーヌを目の前にして興奮気味に話しているのはジェルミ。

母親がクラシック好きだというジェルミは子供の頃、家族でステージを見に行ったことがあると話した。

ミニョがアフリカから一時帰国した時、一緒に韓国へやって来たカトリーヌ。その時合宿所であいさつをして以来、ジェルミはカトリーヌとほとんど顔を合わせておらず、当然歌を聴いたこともなかった。


「もっと早く知ってたらな~」


「そんなにクラシックが好きだったなんて、意外だな。」


残念がるジェルミに少し驚くシヌ。


「クラシックが好きっていうのとはちょっと違うけど、俺ラジオで言ったことがあるだろ?キム記者を追っ払う為にネットとラジオで流したミニョの歌。あれを初めて聴いた時、子供の頃クラシックコンサートで聴いた歌を思い出したって。俺小学生くらいだったし、クラシックって全然興味なかったんだけど、あの時の声は凄く綺麗で感動したのを憶えてる。」


「あれはあの場を盛り上げる為の嘘じゃなかったのか。」


「俺、嘘なんかついてないよ~」


子供の頃の記憶を手繰りつつ、あの時ステージで歌っていた人物が、今目の前にいるカトリーヌだったという事実に、ジェルミはまた感動する。


「ママがファンでさ、この前もコンサート観に行ったって電話で嬉しそうに話してた。」


「そうなんですか、私もカトリーヌさんの大ファンです。」


「あら、私はミニョの大ファンなんだけど。」


二人で顔を見合わせてクスクスと笑う。

アン社長に解放されたテギョンも話に加わると、更にその場は賑やかになって。

一方、部屋の隅ではそんなミニョの様子をため息をついて見ている者が一名。


「なんで、ヌナなんだよ~」


マスコミ関係者の出入りもある事務所では、ミニョの名前もミナムの妹であるということも口外禁止で、テギョンの恋人は『一般女性』で通っていた。したがって、テギョンが結婚するということは少し前から知ってはいたが、相手の名前は聞いていなかった練習生のジュンホ。

テギョンの結婚相手がミニョだということを直接聞かないまでも、うすうす勘づいていた練習生や社員も多い中、ミニョに想いを寄せるジュンホにとっては全くの予想外の出来事で、ショックからなかなか抜け出せない。

うなだれて、大きなため息をつくジュンホはうらめしげに練習生のジフンを見上げた。


「ジフン、知ってたんだろ?何で教えてくれなかったんだよ。」


「だって口止めされてたし・・・だいたい普通判るだろ?ミニョさん来ると、テギョン先輩もの凄く機嫌よくなるし、俺ずっとミニョさん狙うのも、『ヌナ』って呼ぶのもやめとけって言ってたじゃないか。まあ相手がレベルの違いすぎるテギョン先輩なんだから、きっぱりあきらめもつくだろ。」


そう言って慰めるようにジュンホの肩に手を置き、何気なくテギョンの方を見たジフンは、すぐ横でかすかに微笑んでいるシヌと目が合い、無意識に視線を泳がせた。


ミニョが事務所へ来た時のテギョンの様子を思い出し、チラリと覗かせる穏やかな表情にあれはそういう意味があったのかと、寄り添うように立つ二人を見ながらジュンホはガックリと肩を落とした。




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