You're My Only Shinin' Star (239) 秋空の下で 7 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

大きな遊覧船がゆっくりと船着場を離れて行く。

いきなり船に乗せられ、何の説明もないままテギョンに手を引かれ後をついて行くミニョ。訳が判らないまま歩いているミニョだが、こうしてテギョンと手を繋いでいれば不安な気持ちは微塵もない。

少し後ろを歩くミニョにはテギョンの顔は見えないが、先程の声の様子と、今、目の前を歩く足取りの軽さから、その顔には笑みが浮かんでいるのだろうと思うとミニョの顔も自然と綻んだ。

握られている手に少し力を込めれば、テギョンは振り向くことなく力強く握り返してくる。たったそれだけのことが何となく嬉しくて、ミニョは心の中が温かくなるような気がした。


テギョンに連れられ着いた先は遊覧船の一階。

広い船内にはきちんと並べられた椅子に座る大勢の人の背中が見える。その向こうではアン社長がマイクを持ち何やら話をしている最中だった。


「オッパ、これって・・・」


「創立記念パーティー。招待客は全員降ろして今度は社員の為のパーティーだ。今から・・」


「テギョン、遅いじゃないか、早く前へ来い。」


ミニョに説明していたテギョンの声はアン社長の声で遮られた。そして社員達は振り向き、テギョンの存在に気付くと立ち上がり拍手をした。

スッと軽く曲げた肘を出したテギョンに、え?と首を傾げるミニョ。


「今から結婚の報告だ。」


皆の視線を浴び、戸惑いと恥じらいを浮かべたミニョの顔はうっすらと赤く色づき、おずおずとテギョンの腕へと手を絡める。

聖堂の中のバージンロードを歩いたように、前方へと真っ直ぐに伸びる道を歩いて行き、皆の方へ向き直ると二人揃ってお辞儀をした。

マイクを受け取ったテギョンが結婚の報告を行うと、会場からは大きな拍手がおこる。

はにかむミニョの横で満足げな表情のテギョンは、ポケットから封筒を取り出し中に入っていた一枚の紙を広げた。


「今からここで書こう。」


それは婚姻届。


「えっ!ここでですか!?」


「名前・・・間違えるなよ。」


隣でテギョンがボソッと呟いた。


「自分の名前は間違えません。」


自信満々に答えるが、皆に注目され、ミニョは緊張で手を震わせながらテギョンに続いて婚姻届にサインをした。

祝福の声が上がる中、一番前にいたジェルミが「式に出られなくて残念~」と言うと、マ室長が得意げな顔で結婚式の様子をスクリーンに映し出した。

そこには黒いフロックコートを着たテギョンがミニョのウエディングドレス姿に見惚れて声が出せなかった場面がしっかりと収められており、アン社長の『グッジョブ!』という仕種に、ワンは『当然』という顔を見せる。


「テギョン、顔がにやけてるぞ~」


「ミニョさん、綺麗~」


社員から声が上がる。

スクリーンに映っている口元の緩んだテギョンの顔に、クスクスと笑うシヌとジェルミ。

しかし聖堂の祭壇の前でミニョを待つテギョンの顔は真剣で、その姿はまるでドラマのワンシーンのように美しく、多くの女性社員は甘いため息を漏らした。

新郎新婦の誓約、指輪の交換と続き、そして・・・


『は、は・・・・・・っくしょんっっ!!』


ミニョの顔にかかるベールを上げ、今まさに誓いのキスをしようとしている二人は誰かの大きなくしゃみと共に、突然姿を消す。


『フニ、何だってあんたは・・・』


『仕方がないだろう・・・』


ワンとマ室長の声が聞こえ、その間スクリーンに映し出されていたのは、すねを靴のつま先で蹴られているマ室長の脚。再びカメラが祭壇前の二人を捉えた時には既に誓いのキスは終わっていた。

会場から沸き起こるブーイング。


「ほんっとに肝心なとこで役に立たないんだから。」


ワンに睨まれ小さくなるマ室長は、テギョンとミニョの二人に、「誓いのキスだけここで再現してくれないか」とこっそり持ちかけ、あっさり断られた。






「ミニョ。」


「カトリーヌさん!」


華やかな微笑みを顔に浮かべ優雅に歩いてくるカトリーヌの姿に、ミニョは驚き目を見開く。


「おめでとう、ミニョ。」


「ありがとうございます。」


「式に出られなくてゴメンね。」


この日、仕事の都合で結婚式の時間には間に合わないと言っていたカトリーヌ。テギョンから式の後、遊覧船でパーティーをやると聞き、船に乗せてもらうことになっていた。

忙しいカトリーヌがイギリスから来てくれたことにミニョは驚きと嬉しさでうっすらと涙を浮かべる。以前と同じようにふんわりと優しくミニョを抱きしめた後、カトリーヌはプレゼントと言って二人の為に、一曲歌った。

ミニョ同様、思いがけないサプライズにその場にいた全員がカトリーヌの美しい歌声にうっとりと耳を傾けた。


「ミニョ、ブーケトスやってよ。」


ワンからのリクエスト。


「車に置いてきちゃいましたけど。」


「トス用のをちゃーんとこっちで用意してあるわ。」


ピンクやイエローのバラで作られた可愛いラウンドブーケを手渡されると、すでに女性達が前の方に集まってきていた。皆、ワンに声をかけられ、未婚、既婚関係なく『イベント』を楽しんでいる。


「ほら、ヘイも早く!」


「私は別に・・・」


ワンに引っ張られたヘイがブーケを待つ女性陣の一番後ろへ混ざると、ミニョが後ろ向きでブーケを投げた。

宙を舞うブーケに伸ばされるたくさんの手。

が、それは大きく伸ばした幾本もの手の中には収まらず、全く別の、とんでもない方へと飛んでいく。

ブーケに群がる女性陣を横で見ていたミナムのところにパサリとブーケが落ちてきた。


「ノーコン。」


呆れたように笑いながら手に持ったブーケを見て少々困惑気味のミナムは、苦笑いを浮かべるミニョに小さなため息をつくと、ブーケを持って歩き出した。

ミナムの動きに合わせ、その場の皆の視線も移動する。

そして・・・


「ヘイ・・・結婚しよっか。」


皆の視線が集まる中、手にしていたブーケをヘイの目の前に差し出すと、ミナムは少年のような笑顔を見せた。





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