You're My Only Shinin' Star (228) 幼馴染です 4 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

ピアスを見ていたテギョンのいる場所からでは会話の内容までは聞き取れない。チラチラと様子を窺っていると、男がミニョの頭に手を乗せたのが目に飛び込んできた。グッと拳を握ると足早に近づき、男の手を払いのけミニョの腕を掴む。

目深に被ったキャップのつばはテギョンの顔に影をつくり、濃い色のサングラスは下から見上げるミニョからもその表情を隠している。

しかし低く冷ややかな声色が、テギョンの不機嫌さを表していた。


「行くぞ。」


短く発してミニョを連れて行こうとするテギョン。


「え?あ、何?」


間の抜けたような声を出すソンジェ。


「話は終わりだ。」


サングラスの奥からソンジェを睨みつけたテギョンはミニョの腕を掴んだまま店の外へと向かう。

突然の成り行きに一瞬呆然としたソンジェだが、振り向き困ったような顔を見せるミニョを見て後を追いかけようと数歩足を進めた。だがそれを阻止するようにミナムがソンジェの肩を掴む。


「悪いな、一応ヒョンには来ない方がいいって言っといたんだけど。」


「なんだよあいつ、いきなり・・・何でミニョを連れてくんだよ。いくらミナムの知り合いだからって・・・何なんだよ、あいつ。」


「ファン・テギョン。名前くらい知ってるだろ?」


「ファン・テギョン?A.N.JELLの!?知らない訳ないだろ!どうしてそんな有名人がこんなとこに・・・ってミナムもA.N.JELLか。そういえばワンさんがファン・テギョンも来るかもって・・・でも何でミニョを連れてくんだ?」


ファン・テギョンの名前に大いに驚いたソンジェ。

先程のムッとした表情はすっかりどこかに消えてしまっている。


「ま、たとえ相手が幼馴染だろうと、男と親しそうに話してる姿ってのは見てて腹が立つ・・・ってとこかな。いや幼馴染っていう関係自体が既にNGか。それにお前、とんでもない爆弾落としたし。」


そう言ってミナムは自分の頭にポンと手を乗せる。


「このクセ、相変わらずだな、まさかとは思ったけどあまりにも期待通りで笑える。目の前で自分の女がこんなことされちゃ怒るのも無理ないね。」


クスクスと笑うミナムにソンジェは怪訝な顔を向けた。


「自分の女?」


「そ、だいぶ前にワイドショーとか週刊誌なんかでかなり騒がれてたろ、『ファン・テギョン 交際発表』って。一般人ってことで顔も名前も俺の妹だってことも伏せてるけど・・・ミニョだよ、テギョンヒョンの相手。」


「えっ!!」


一瞬声が詰まるほど驚きながら、そういえば・・・とソンジェは思い出す。

いつだったか店に来た客がファン・テギョンの交際発表のことで話をしていたことがあった。実際にテギョンと恋人らしき女性が一緒にいるのを見たという客もいて、コ・ミナムに似ていたとも。


「何でミニョがよりにもよってファン・テギョンと・・・」


「さあね、そこんとこは俺にもよく判んないし、未だに不思議なんだけど。ま、世の中には信じられないようなことなんて山ほどあるし。・・・それとついでにもう一つ、教えといてやるよ。テギョンヒョン、俺の義弟になるから。」


「はあ?」


思わず大きな声が出てしまったソンジェはぽかんと口を開けたまま暫し呆然とミナムを見る。


「もうすぐ結婚するんだあの二人、まだ内緒だけど。あ、でも結婚発表してもミニョの名前も俺の妹だってことも出さないことになってるから。あ~あ、にしても、やっぱ連れてくるんじゃなかったな、あの様子じゃあ明日の仕事にも影響しそうだ。それに予想通り過ぎて面白味に欠けるよな。」


呆れたような口ぶりだが、この状況を楽しんでいるかのようにミナムの顔には笑みが浮かんでいる。

世間一般的にはあまり物事に動じないと思われているテギョン。しかしミニョのことになると途端に理性的ではいられなくなると意外な一面を聞いたソンジェは慌てて外へと駆け出した。




店を出たソンジェは辺りをキョロキョロと見回した。薄暗い駐車場で二人の影を見つけると、走り出す。


「あ、あの・・・」


声をかけ近づくソンジェに二人が振り向いた。

キャップを取り、サングラスを外した男の顔は確かにソンジェもテレビで見たファン・テギョンで、ミナムの言ったことが信じられなかった訳ではないが、ミニョと並んで立つその姿に今更ながら驚いた。

そして顔をしかめるテギョンを意識しながらソンジェは口を開いた。


「ごめんミニョ、俺テギョンさんがミニョの彼氏だなんて全然知らなくて。てっきりミニョの彼氏ってこの間バス停で一緒にいた人だと思ってたから・・・。テギョンさん、俺、子供の頃ミニョのことが好きでした。今でも好きです。でもそれって恋とか愛とかじゃなくて、妹みたいに好きって意味で。今考えると、昔もそういう気持ちだったのかなって。同い年なのに妹だなんてって思うかも知れないけど、ミナムみたいにミニョを護りたかった。二人は仲が良くてミナムはミニョをすごく大事にしてたし、俺一人っ子だから二人の関係にすごく憧れてた。」


ソンジェは幼い頃を懐かしむように目を細めると小さな笑みを浮かべた。


「でも結局俺が原因でミニョに嫌な思いをさせたんだから、兄貴だなんてずうずうしいと思うけど。」


テギョンへ向き直ったソンジェは軽く頭を下げる。


「今日は無理言ってミニョを呼び出してすみませんでした。さっきのは特に意味がある訳じゃなくって、俺の子供の頃からのクセで・・・可愛いって思うとつい、くしゃくしゃってやっちゃうんです。あ、誤解しないで下さい。ミニョにするのはあくまで妹みたいに可愛いっていう意味なんで。」


ミニョへチラリと視線を遣り、ハンチング帽のつばをぐいっと下へ下げるとソンジェは二人に背を向けて歩き出す。

ミナムは店の入り口で壁にもたれて立っていた。


「いいのかソンジェ、ミニョのこと・・・」


「俺はミニョが幸せならそれでいいの。」


「幸せだと思うか?相手はアイドルでスターだぞ。色目を使う女は多いし、何かと騒がれることも・・」


「幸せじゃなきゃ、そんな風にミナムが平気な顔してる訳ないだろ?」


ミナムが少し驚いたように視線を向けると、帽子のつばの下からのぞくソンジェの口元が笑っているように見えた。


「今からどっか飲みに行かないか、もちろんミナムのおごりで。」


「何だよ、もちろんって・・・・・・あーもう、しょーがない、付き合ってやるよ。」


そう言ったミナムの口元にも微かに笑みが浮かんでいた。




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