You're My Only Shinin' Star (224) 二人の距離 2 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

食事をしたのは大きな観葉植物の陰になっている店の奥のテーブル。

食事が運ばれてくるのを待つ間、テギョンは楽しそうに話をするミニョを頬杖をついて眺めながら、そのコロコロと変わる表情に顔を綻ばせた。


「この間、幼馴染に会ったんです。私と同い年なのに自分のお店を持ってて凄いなーって。アクセサリーのお店なんですけど・・・」


ざわつく店内にミニョは途中で話をやめ、辺りを見回すと声を落とした。


「やっぱりオッパは目立ちますね。」


いつものようにキャップを目深に被ってはいるが、スターのオーラは隠しきれないようで、テギョンに気づいた客がヒソヒソ、キャーキャーと騒いでいる。

さすがに一緒にいるのが恋人だと判ると、サインをもらいに近づいて来るようなファンはいなかったが・・・いや、テギョンの無言のプレッシャーでとても近づけない状態であったが、視線は常にテギョンとその恋人であるミニョに向けられていた。

店の一番奥のテーブルで、店の中央に背を向けて座っていたミニョは、たくさんの視線を背中に感じながらフォークに絡めたパスタを口へと運んだ。




「何だか味がよく判りませんでした。」


「周りを気にし過ぎだ。」


「そんなこと言われても・・・」


「視線を感じるのは俺といるからだ。それだけいい男を独り占めしてると思って優越感に浸ってろ・・・といってもミニョには無理か。」


そう言って笑いを含んだため息を漏らすテギョン。


「じゃあ、無理矢理浸らせてやろうか?」


ニヤリと口の片端を上げる。

被っていたキャップを取り、テレビや雑誌では見られない優しい眼差しと微笑みをミニョへ向けると、店内は「キャーッ!」という叫び声で一層騒がしくなる。差し出した手におずおずと控え目に重ねられたミニョの手を強く握り、テギョンは満足そうに笑みを浮かべ、手を繋いだまま店を出た。






食事を済ませた後、二人はそのままドライブへ。

賑やかな夜の街を青いアウディが走り抜ける。アスファルトに残る雨は、水しぶきを上げながら闇の中へと消えて行った。

やがて街の灯りは遠くなり、車は暗い坂道を上って高台にある公園へ。

見晴らしの良いこの場所は昼間なら街の様子が一望でき、夜になると灯りをともす家々が眼下に広がる。晴れていれば夜空には一面に星が輝いて見えるのだが、あいにく雲の多い今日はその合間から、時々星と月がわずかに顔を覗かせるだけ。

それでも雲の切れ間から見える星の輝きを、ミニョは嬉しそうに見上げた。


「結婚式・・・俺と二人きりじゃ、嫌か?」


隣に並んだテギョンがミニョと同じ様に夜空を見上げ、月を見ながら呟くように口にした。


「え?」


何のことだか判らないミニョは聞き返すようにテギョンを見る。しかしテギョンはすぐには口を開かず、黙って闇を見上げたまま。

夜空の雲は風に流され月を隠してしまい、すぐ隣にいるテギョンの顔さえよく見えない。


「あの、それってもしかして・・・」


ふと、不安が心を過った。

認めてくれた筈の二人の結婚を「やっぱり・・・」と、アン社長が反対したのだろうかとミニョの声が沈む。


「ああ、別にアン社長が反対している訳じゃない、ただ少し問題が・・・」


テギョンは今日事務所でアン社長に切り出された話をした。

テギョンの父、ファン・ギョンセには結婚のことは伝えたが結婚式の日はちょうどベルギーで公演の予定が入っており、式に出られないことをとても残念がっていた。そしてモ・ファランは海外へ行ったきり連絡はない。

ミニョの両親はすでに亡くなっていて親族といえばミナムと伯母のミジャくらい。そのミナムも今までのミニョに対する態度から、仕事よりも妹の結婚式を優先させるかどうかは判らない。

招待していた事務所の社員も船上パーティーの準備でその日揃って出席できないとなると、『二人きり』と言っても過言ではない。


雲が流れ月が顔を覗かせるとその蒼い月明かりの下、ミニョはテギョンを見ながら微笑んだ。


「私、小さい頃、中山聖堂で新郎新婦二人だけの結婚式を見たことがあるんです。神父様の前で愛を誓う二人はとても幸せそうに見えました。ですから、反対されているのでなければ、オッパと二人だけの結婚式でも私は全然構いません。」


月明かりに照らされたミニョの顔は晴れやかで、テギョンはほっと胸を撫で下ろした。


「でもオッパ、お仕事の方は大丈夫なんですか?船上パーティーでのステージは・・・」


「ああ、それなら何とかする。あいつらに協力してもらうことになるがな。」


あいつらというのはメンバー及びマ室長のこと。

テギョンは何か考えがあるのかフッと微笑んだあと、ミニョの身体を後ろから包み込むように抱きしめた。


「少し不安だったんだ、皆から祝ってもらえる筈の結婚式が俺達二人きりだなんて言ったら、哀しい顔をするんじゃないかと。式の日にちを変えたくないというのは俺の我儘みたいなものだし。」


秋に結婚すると決めてから、テギョンにはこの日がいいという日にちがあった。それは仕事の都合でも日柄が良いという訳でも何でもなく、秘かに、忘れずに憶えていたいと思っていた日。まだ誰にも、ミニョにさえ話していない理由。

ミニョはいつ気づくだろうか?ずっと気づかないかも・・・知ったら笑われるか?と考えると、この日にこだわる自分が滑稽に思えてテギョンは自嘲気味に口の端に笑みを浮かべる。


「・・・素敵な結婚式になるといいですね。」


「ミニョ、他人事みたいに言うな。俺達の結婚式なんだから、素敵な結婚式にするんだ。」


キッパリと言い切ると、テギョンは抱きしめている腕に力を込める。

ミニョはクスッと笑い、身体の前に回されたテギョンの腕にそっと手を重ね「そうですね」と、雲が晴れた夜空を見上げた。





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