午後から予定していた雑誌の対談が相手の急病で延期になったと連絡があったのは、対談場所へと向かっている車の中だった。
夜に事務所でアン社長とアルバムの打ち合わせをする予定になっているが、それまではフリー。
テギョンはミニョにどこかへ出掛けようと電話をかけた。
『オッパ、昨日も夜遅くまでお仕事で今日も朝早くからお仕事だったんですよね。少し休んだ方がいいんじゃないですか?』
「ミニョと一緒の方が休まる。作曲で少し行き詰ってるからな、気分転換だ、ドライブに付き合え。」
でも・・・と渋るミニョを半ば無理矢理連れ出しドライブに出掛けた。
しかし上機嫌でハンドルを握っていたテギョンは一時間も経たないうちに合宿所へ帰ることに。
「具合が悪いなら悪いと何故もっと早く言わない。」
「すみません・・・」
蒼い顔をして、力ない声で謝るミニョは手で口元を押さえながらテギョンに支えられ、ヨロヨロと歩いている。
ドライブ中に気持ちが悪いと言い出したミニョをマンションよりもこっちの方が近いからと、テギョンは合宿所へ連れて来た。
「ミニョ、久しぶり・・・どうかしたのか?」
二階から下りてきたシヌはミニョの様子を見て心配そうに声をかけた。
「体調が悪いらしい、取り敢えず俺の部屋で寝かせる。」
テギョンはミニョの身体を支えながら階段を上って行った。
「ミニョの様子はどうなんだ?」
「少し落ち着いた、今眠ったところだ。」
暫くして二階から下りてきたテギョンは冷蔵庫から青い瓶を取り出しゴクゴクと水を飲むと、ふうっと息を吐いて椅子に腰を下ろした。
「何日か前から時々気分が悪かったらしい、帰る途中で吐いた。熱も少しあるみたいで・・・知っていれば俺だって連れ出したりしないのに、あいつ黙ってるから・・・」
テギョンは唇を噛んだ。
忙しくて会えない日々が続いていたが、毎日電話で話はしていた。
声の様子に特に変わったところはなく、今日もテギョンの身体を心配していた。
「俺のことより自分の心配をしろよ、ったく・・・」
蒼白い顔で冷や汗を流しながらコンビニのトイレへ駆け込んだミニョを思い出し、口元を歪めるテギョンにシヌがためらいがちに声をかける。
「なあ、テギョン・・・ミニョ・・・まさかってことは、ないよな?」
「はあ?」
「いや、だから、その・・・」
「何だよ、まさかって・・・ミニョが悪い病気にかかってるっていうのか?」
「そうじゃなくて・・・」
「はっきり言えよ、シヌ・・・症状に何か心当たりでもあるのか?」
「いや、心当たりがあるのは俺じゃなくて、テギョンの方だろ。」
「俺が?」
何のことだかさっぱり判らないテギョンは、はっきりと言わないシヌに苛々しながら水を飲む。
「ああ、ミニョ・・・・・・・・・妊娠、してる・・・とか?」
ブ―ッ!
飲んでいた水を噴き出したテギョンはそのままゴホゴホと咳込んだ。
さっきすれ違ったわずかな間に見たミニョの様子から、考えられる可能性を・・・と、落ち着いた口調でシヌは話す。
「さっきのミニョを見て思い出したんだ。まだミニョがミナムの代わりをしていた頃、ヘイがここに来て『オェッ』て・・・。あの時のヘイは演技だったけど、ミニョはもしかして・・・って。」
妊娠・・・
予想外のという点でこれ以上はないというくらい突飛で衝撃的なシヌの台詞にテギョンは言葉も出ない。
妊娠・・・確かにシヌに心当たりがあってたまるか、あったら殺す。しかし俺にも心当たりはない、ある筈がない・・・
「テギョン・・・俺が口を挟むことじゃないが・・・・・・ちゃんとゴム使ってるか?」
「なっ!・・・・・・誰が使うか、そんなもの!」
またもや発せられたシヌの予期せぬ言葉に、今度は思わずテギョンの声が大きくなる。
遺憾ながらまだそういう物を使う前の段階であって・・・
しかしそんなテギョンの心の声などシヌに聞こえる筈もない。
「テギョン、確かに結婚はもうすぐだろうがまだしてないんだし、ミニョの精神的負担も考えてやらないと。男の快楽だけで・・・」
「違う、ミニョは妊娠なんてしてない。」
する筈がない。
「でも使ってないんだろ?中で出さなきゃ大丈夫なんて考えは甘いぞ。」
「だから、使う使わない以前の問題だ。まだ・・・キスしか・・・・・・してないんだから・・・・・・」
病院でちゃんと検査した方がいいぞ、とテギョンの肩に置こうとしたシヌの手が止まった。
テギョンの顔が心持ち赤くなって見える。
「キスしか・・・してない?」
シヌが首を傾げる。
「・・・・・・・・・・・・」
「今まで何度も同じベッドで寝て、キスしか・・・してない?」
「・・・・・・悪いか?」
プイッと顔を逸らすテギョンを見てシヌは暫く思案するように目を瞑り、小さくため息をつくとテギョンの肩にポンと手を置いた。
「テギョン、男としてそれは辛いよな・・・・・・俺には全く縁のない症状だから病院へ行った方がいいというアドバイスくらいしか・・・」
「おい、シヌ・・・何の話だ?」
一瞬下がったシヌの視線が、自分の身体のどこに向けられているのか判ったテギョンの頬がピクピクと引きつる。
「・・・違うのか?」
「当たり前だ、俺は・・・元気だ。」
そう言ったテギョンが胸を張っているように見えて、シヌはクスクスと笑い出す。
そんなシヌを見てテギョンはばつが悪そうに顔を逸らした。
「ミニョはカトリックだからな。シスターにまでなろうとしていたし、今だって聖堂へ行ってシスターと一緒に仕事をしている。そんなミニョにほんの少しでも後ろめたい思いはさせたくない。」
テギョンは持っていた瓶に口をつけ、ひと口水を飲んだ。
「はぁ~ったく、何で俺はシヌとこんな話をしてるんだ。」
「同感だ、俺もまさかテギョンとこんな話をするとは思ってもみなかった。」
大きなため息をつくテギョンと小さく笑うシヌ。
「・・・・・・今の話、誰にも言うなよ。」
「判った、テギョンヒョン、誰にも言わない。」
口元を歪ませシヌを見るテギョンの後ろで声がした。
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今日は結婚記念日~
20回目~
さあ、旦那は憶えているか?
私は忘れてないよって意味も含め、ここにこうして書いておこう(笑)
もう20年も経ったのね・・・このままだとあっという間に30年目を迎えてしまいそう。
そしてこの日がくるとちょうど2週間後には誕生日がきてしまう。
私は、今年は平成〇〇年だから・・・ではなく、西暦〇〇年だから・・・と自分の年齢を計算します(笑)
ちょうど計算しやすい年の生まれなので。
はい、自分の歳なんて憶えてられませ~ん。
計算で出します(笑)
1年前にも結婚記念日と誕生日のことを書きました。
今回で2回目。
来年は・・・もうお話書いてないかな~
いや、このままのペースだと本編終わってなかったりして(;^_^A
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