マンションのドアの外に立っていたミナムは赤い顔で酒の匂いをさせ一目見て酔っているのが判る状態だった。
酒には強いミナムだが今日は少しふらついている。
こんな風に外で飲んで酔っている姿を見るのはごく稀で、ヘイは少しだけ困惑していた。
「お、あったあった。」
冷蔵庫を開けたまま、ミナムが酔ってやって来た理由をぼんやりと考えているとすぐ後ろで声が。
ヘイの後ろから手を伸ばしたミナムは中から缶ビールを二本取り出すとリビングのソファーに座った。
黙ったままミナムの隣に座ったヘイはビールを一本手渡される。もう一本はしっかりとミナムの手の中にあり、プシュッと音を立て開けられていた。
「何よ、結局飲むんじゃない。」
「一緒に飲んだ方が美味いだろ?ほら、乾杯。」
缶同士がぶつかるゴツッという鈍い音。
喉を鳴らしながら飲むミナムを見てヘイは小さなため息をついた。
何しに来たの?
飲み直すならよそにしてよ
酔ってからうちに来るなんて珍しいじゃない?
歩けなくなるまで飲まないでよ
ヘイの頭の中に様々な言葉が浮かぶ。
「ミニョが原因ね。」
しかしヘイの口から出た言葉はそのどれでもなかった。
ビールを一口飲み、ミニョの名前にどんな反応を示すのかとまたチラリとミナムの顔を見る。
『テギョンとミニョが結婚する』
そう言った時もこんな風に酒を飲んでいたミナム。
ゴクゴクと飲み続けるミナムはあっという間に一本を空にし、新たに冷蔵庫から二本のビールを持って来た。
「私には話せないの?私だから話せないの?」
ミナムはヘイの隣で新しい缶を開ける。
しかし今度はすぐには口をつけず、手に持ったビールをじっと見つめていた。
「・・・何でミニョだって思うの?」
「だってそうでしょ。」
「・・・・・・」
黙ってビールに口をつけるミナムにヘイは言葉を続けた。
「初めは何でそんなに妹に無関心なんだろうって思ったわ。喧嘩でもしてるのかなって思ったこともあったけど・・・本当はミニョのことに関心がないフリをしてるだけなのよね。時々それが隠しきれずに表に出てくる。ほら、アフリカからの帰国が早まった時バイクで空港まで迎えに行ったでしょ。あの時、優しい兄を演じてるって言ってたけど、本当は純粋に妹のことが心配で迎えに行ったんじゃない?」
ミナムと付き合うようになり一緒に過ごす時間が増えるにしたがってヘイが気づいたこと。
ミナムの中に見え隠れするミニョへの愛情。
「周りには気づかれたくなくて・・・っていうより、ミニョに気づかれたくないみたいだけど、最近のミナム特に変なんだもん、何かある度にこうやって押しかけて来て飲みつぶれるの・・・やめて欲しいのよね。」
ヘイはそう言うとミナムの顔を見ることなくビールの缶を傾けた。
「・・・最後のひと言がいかにも らしい よね。言葉が足りないよ、ちゃんと『心配だから』やめて欲しいって言わなくちゃ。」
「そう思うんだったら私の胃に穴が開かないうちに何とかしてよ。」
「そんなに俺のことが心配?胃に穴が開くほど心配してくれてるの?」
「・・・言葉のあやよ。」
口ごもり顔を逸らすヘイ。
ミナムは喉の奥で笑い、持っていたビールを一気に飲み干すと、空になった缶を静かにテーブルへと置いた。
ヘイの言葉はぶっきら棒だが、その中にある優しさがミナムには判る。
ここへ飲みに来るのはもちろんヘイに会いたいからだが、話を聞いて欲しいという思いが心のどこかにあったのかも知れない。いや、酒の勢いを借りて、ただ話がしたかったのかも。
「酔っ払いのたわごとだと思って聞き流して。」
ミナムはテーブルに置いたビールの缶を見つめながら、ゆっくりと話しだした。
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すみませんサブタイトル変更しました。
珍しくあっさり決まったサブタイトルだったのに~(T_T)
環境依存文字を使っていた為、環境によっては違う文字で表示されているかも知れないので。
今まであまり気にせずに使っていた環境依存文字ですが、文字化けしちゃうかもしれないなんて知らなかった~(無知ですみません)
漢字も記号もそれだけで意味を成すものばかりなので、たとえ一文字でも自分の書いた文字が違って伝わってしまったら、意味ないですよね。
誤字脱字は読み直しすれば見つかるけど、環境依存文字は打ってる時しか見つけられない~(>_<)
これからは気をつけます。
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