「ミンジ・・・まだこんなとこにいたのか?」
今までミニョの後ろにいた女性の存在を全く気にしていなかったテギョンは突然目の前に現れたミンジに驚いた。
確かに打ち上げをやった店はこのすぐ近くだが、一時間も前に終わっているのに何故まだここにいるのかと首を傾げる。
「スタッフの人と話しこんじゃって・・・帰る途中だったんです。そしたらさっきの人達に声をかけられて、絡まれて・・・困ってたところにミニョさんが助けに入ってくれたんです。ごめんなさい、私が悪いんです~」
赤い顔で酒の匂いをさせ、その場にペタンと座りこみ泣き出してしまったミンジに、こいつ泣き上戸か?とテギョンの首が更に傾く。
「マネージャーはどうした。打ち上げだって仕事のうちだろう。」
「忙しいからって断られました・・・」
ミンジをそのままにしておく訳にもいかず、大きくため息をつくと取り敢えず車へと連れて行った。
「あれぇ、今日はマネージャーさん二人なんですね~」
さっきの涙はどこへいってしまったのか。
ミンジは車に乗ると何がおかしいのか運転席にいるマ室長を見てクスクスと笑い出した。
今度は笑い上戸か?
ミンジの変化にテギョンの眉間にしわが寄る。
「いいですねー、二人もいて。私なんかたった一人のマネージャーが来てくれないんですよ~」
テギョンは笑い続けるミンジから何とか住所を聞き出し、そこへ向かうようにマ室長に言う。
「何で俺が・・・」
ブツブツ言いながらマ室長が車を走らせるとミンジは程無く眠ってしまったようで、笑い声が止んだかと思うとシートにもたれきった身体が少しずつ傾いていった。
「ミンジさん、寝ちゃったみたいですね。」
スタジオで見たミンジとは随分違った姿にミニョはクスッと笑った。
「泣いたり笑ったり忙しいヤツだな。いつもこうなのか?打ち上げでもかなり飲んでたみたいだが・・・」
テギョンは静かになったミンジにやれやれとため息をつきながら後部座席を見た。
「ミニョ・・・何やってるんだ?」
後ろを振り向いたテギョンの表情が固まる。
「何って・・・私何か変なコトしてます?」
後部座席では身体を横にしたミンジに膝枕をしているミニョの姿が。
キョトンとした顔で答えるミニョはテギョンの頬が微かに引きつっていることに気づかない。
「そう言えばテギョンが撮影で酔った時にもミニョさんそうやって後ろの席でテギョンに膝枕してましたよね。」
「ちょっと待て、俺は知らないぞ。」
「オッパ、今のミンジさんみたいに眠ってましたから。」
そういう嬉しいことを何で寝ている時にするんだとテギョンの口が尖る。
「ミニョさんもあの時は大変でしたね。テギョン、重かったでしょ。」
テギョンが撮影で酔った日・・・
マ室長と二人でテギョンを部屋まで運んだ。
ベッドの上でぐったりとしているテギョンの服を着替えさせようとしたところから始まったあの夜の出来事。
酔って眠るテギョンの薄く開いた唇から目が離せなくなり、まるで引き寄せられるようにミニョは自分から唇を重ねていた。
ベッドの上でテギョンの身体の重さを感じ、少し強引なキスを受けつつ、初めて自分の胸に直接触れたテギョンの手の感触にミニョの心臓は壊れそうなほど速く強く脈打っていた。
この先に起こるであろうことが頭をよぎり、それを受け入れてもいいと思っていた自分。
胸の上に手を乗せたまま眠ってしまったテギョンを見ながら、ホッとしたような、ちょとだけ残念なような、複雑な気持ちのままテギョンの横で丸くなって眠った。
朝、目を覚ましたら何故か膝までずり下がっていたズボンに驚き慌てて飛び起きたテギョン。
強烈な頭痛と闘いながら昨夜のことを思い出そうと必死で考えていた。
ミニョの首筋に幾つも残る赤い痕。
自分がつけたのは間違いないだろうが全く記憶が無く、それ故にもしかしてミニョに何かひどいことをしてしまったのではないかと狼狽え悩んでいた。
部屋まで運ぶのは大変だったんだぞとマ室長があの日いかに自分が役に立ったかを説明している間、テギョンとミニョはそれぞれあの日のことを思い出し、窓の外の暗闇を眺めていた。
アパートの前に車を停め、まだ眠っているミンジを揺り起こす。のそのそとゆっくり身体をを起こし、額に手を当て暫くボ~っとしていたミンジは車の中をぐるっと見回すと慌ててドアを開け外へ出た。
多少酔いが醒めたのか、今の状況理解すると何度も頭を下げている。
「ミンジさん、大丈夫ですか?」
「あ、はい、大丈夫です。」
まだ少しふらついている足を心配してアパートの下までついて行くと、ミンジは小さく笑って答えた。
「撮影でも散々ご迷惑おかけしたのに、最後の最後まで・・・本当にすみません。」
「今更一つ二つ増えたところでどうってことない。」
大きく頭を下げるミンジにテギョンは口の片端を上げる。
アパートの階段へと歩き出したミンジがポケットに携帯がないことに気が付くと、ミニョが車へと走って見に行った。
ミニョの後ろ姿を見ているテギョンにミンジが声をかける。
「ミニョさんって・・・いい人ですね。」
「人が好すぎるっていうのも問題だと思うけどな。」
腕組みをし、ミニョの方を向いたままのテギョン。テギョンの後ろ姿だけではその表情は判らないが、ミンジにはテギョンの穏やかな表情が見えるような気がした。
「あまり飲み過ぎるなよ。」
「私いつもそんなに飲まないんですよ、今日は特別です。テギョン・・・さん、この間の話・・・私、誰にも言いませんから。」
ミンジは振り向いたテギョンにニッコリ笑ってみせるとミニョから携帯を受け取り、ありがとうございましたと頭を下げ階段を上って行った。
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― ピグのお部屋より ―
ハァハァと荒い息のテギョンとミニョ。
二人の身体からは幾筋もの汗が流れ落ちる。
「あっ・・・オッパ・・・」
「・・・ここか?」
「ん・・・違っ・・・もうちょっと・・・右・・・」
「・・・こっち・・・か?」
「もう・・・ちょっと・・・左・・・」
テギョンは暗闇の中ミニョの声に導かれるままゆっくりと身体を進めていく。
「この辺・・・か?」
「ん・・・あっ・・・・・・そこ~~っ!」
その瞬間ミニョは両手を握りしめ、テギョンは息を止めた。
ホッと息をつくと、目隠しを外したテギョンの前には見事に割れた大きなスイカ。
「オッパ、やりました、お見事です!」
「当然だ。」
胸の前で両手の拳を握り笑顔を向けるミニョにテギョンは得意気に答える。
「おーい、二人共、いつまでやってるんだ。いい加減にしておかないと倒れるぞ。」
炎天下の砂浜でスイカ割りをするテギョンとミニョだった。
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以前スイカを頂いた時に浮かんだ話?です。
こ~んな話ですみません。
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