ミニョがハン・テギョンと出掛ける。
約束の時間は午後三時。
それよりも一時間以上も前に来てミニョの住むマンションから少し離れた所に車を停めていたテギョンは、じっとハン・テギョンの車が来るのを待っていた。
彼の車を尾行する為に。
そしてそんなテギョンの車を更に尾行しようとしている車がここに一台・・・
「目標捕捉!」
「あ、ホントだ、ミニョ出てきた。うわあ、ほら、あの男ドア開けてあげてるよ、しかも助手席。」
「ジェルミ、当たり前だろ、デートなんだぞ。」
「えーっ!?」
「一人じゃ行き辛い場所ね・・・単なる口実だろうな。」
「そうなの?」
「そんなのミニョを誘う為の口実に決まってるじゃん。そうだよねシヌヒョン。」
「まあ、いきなりデートしてくれって頼んでも無理だろうしな。」
「それじゃあ余計に目が離せないね。」
今から自分たちがミニョとテギョンを尾行するということに真剣になっているジェルミ。
ミニョを誘うなんて物好きな奴、と鼻で笑うミナム。
あくまで客観的な意見を述べるシヌ。
そして・・・
「いいの?ほら、行っちゃうわよ。」
ミナムの隣に座り、三人を呆れ顔で見ているヘイがそう言った。
「あ、ホントだ、テギョンヒョンの車も動き出した。ジェルミ、ターゲット出発確認。」
「了解。マ室長、追跡開始!」
「おい、お前達、本当にやるのか?テギョンが怒るぞ~。だいたいまだ仕事が残ってるんだからな。」
ジェルミに声をかけられたマ室長が、後ろに座る四人を振り返り小さくため息をついた。
「いいから、ほら、早く、見失っちゃうよ。」
A.N.JELLの三人とヘイを乗せたワゴン車は、マ室長の運転でミニョを乗せた車と、その後を追うテギョンの車を追い、走り出した。
「ジェルミ、ずいぶん乗り気だな。」
「だってミニョがテギョンヒョン以外の男と二人で出掛けるなんて、ほっとけないよ。」
後ろの席からいつの間にか助手席に移ってきているジェルミを見ながらマ室長が声をかけると、ジェルミはすぐ前を走るテギョンの車を見失わないように、と瞬きもしないでじっと見ていた。
「それでテギョンが今日の午後のスケジュールを空けてくれって言ってたのか。気になって後つけるくらいなら行かせなきゃいいのに・・・。それにしてもミニョさんが他の男とデートだなんて、案外やるなぁ。」
マ室長が眉毛をピクリと動かしニヤリと笑うと、ジェルミがムッとして運転席に顔を向けた。
「デートじゃないよ、あのハン・テギョンって人に凄くお世話になったからそのお礼にちょこっと付き合ってあげるだけだよ。」
「ふうん、ま、どっちにしてもテギョンがじっとしてる訳ないか・・・。で?ヘイさんは?」
「あら、私はミナムがどうしても一緒に来て欲しいって言うから来ただけよ。」
「だってあそこのケーキすごくうまいって評判だから、前から一度ヘイと食べに行きたかったんだ。それに・・・俺だってミニョのことが心配だからな・・・」
急に真剣な顔になり、前方の車をじっと見つめるミナム。
「ミナム、本音は?」
「ん?面白そうだから。」
マ室長はそんなミナムとヘイの遣り取りを聞き流しながら、澄ました顔で座っているシヌをバックミラーで見た。
「シヌ・・・お前まで・・・」
「俺?テギョンとミニョが二人でいるところをスクープでもされたらマズいだろう?俺達がいれば誤魔化せる。店の方には先に連絡してブログに載せる写真撮影の許可ももらった。一応お忍びと言う形だからなるべく目立たない席も予約してあるし・・・問題はないだろ?」
口の端に笑みを浮かべ説明をする姿はどう見ても楽しんでいる様にしか見えない。
「あ、曲がるみたいだよ。ちゃんとついて行ってね。」
テギョンの車が交差点を右折するのを見てジェルミが興奮気味に声を上げる。
「目的地は判ってるんだから見失っても大丈夫だろ。」
「でももしかしたら違うとこにミニョ連れてっちゃうかも知れないだろ。心配だからちゃんと見てなきゃ。」
真剣な目つきで前方を見つめるジェルミにマ室長は大きなため息をつきながら、すぐ前を走るテギョンの運転する車を追い続けた。
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