You're My Only Shinin' Star (151) 救いの手 6 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

ミニョが涙を堪える為に止めていた息をふうっと吐くと同時にいくつもの涙が頬を伝い、テギョンの手の上へと流れ落ちる。

ミニョはその涙を乱暴に手の甲で拭うと大きく息を吸った。


「今日の撮影、見てしまいました。オッパがミンジさんと・・・・・・。判ってたはずなのに、いざ目の当たりにすると動揺しちゃって・・・。オッパからの電話にわざと出ませんでした・・・ごめんなさい。」


目を瞑り俯くミニョの横顔にテギョンは優しい眼差しを向ける。


「ミニョ、俺の質問に正直に答えてくれ。・・・俺がミンジを抱きしめるのは嫌か?」


「・・・はい・・・」


「俺がミンジとキスをするのは嫌か?」


「・・・はい・・・」


「ならどうしてそう言わない?仕事ですねって、平気そうな顔をして。」


「・・・怖かったんです。」


「怖い?」


自分が嫌な顔をすればテギョンを困らせると思った。

余計な気を遣わせると思った。

そう思いたかった。

でも本当は違った。

テギョンに知られたくなかった。

嫉妬している自分を。


「私はずっとシスターになる為に修道院にいました。シスターになることしか頭になかった私には、嫉妬とか独占欲というものはありませんでした。でも今の私は嫉妬してるんです、独占欲があるんです。オッパは仕事してるだけだって判ってるのに、私だけを見て欲しい、私だけに触れて欲しいって、そんな思いばかりが頭の中にあって・・・。それがどんどん大きくなって、自分でもどうしたらいいのか判らなくなって・・・。そんな私を知られたら呆れるんじゃないか、嫌われるんじゃないかって・・・それが怖かったんです。」


ミニョは心の内を見せた自分にテギョンがどんな反応をするのか不安になると、テギョンの顔を窺うようにチラリと見た。


「はぁ~、まったく、お前は・・・」


テギョンは大きなため息をつくと、ミニョの目尻に残る涙を拭い、肩を抱き寄せた。


「俺は恋愛なんてよく判らないし、誰かをを好きになったのも愛しいと思ったのもミニョが初めてだ。だけど好きになった相手に、自分だけを見て欲しい、自分だけに触れて欲しいと思うのは当たり前のことじゃないのか?」


「そう・・・でしょうか・・・?」


「あー、まったく、呆れるよ、そんなことで俺がお前のことを嫌いになるんじゃないかと心配してるお前に呆れる。」


テギョンはもう一度大きなため息をつくとベッドから立ち上がり、上目遣いで不安気な瞳を見せるミニョの前に立った。


「俺にお前だけを見て欲しいか?お前だけに触れて欲しいか?」


目の前で自分を見下ろすように立っているテギョンの目をじっと見つめ、ミニョは小さく頷いた。


「ミニョ・・・そういう嬉しいことはちゃんと言え。」


「え?」


テギョンはミニョの手を摑むと引っ張って部屋から出た。


「オッパ?」


ミニョは引っ張られるままテギョンについて行く。


「お前がそんなことくらいで嫌われると思っているなら、俺なんかとっくの昔にお前に嫌われてるぞ。俺はお前が他の男と一緒にいると思っただけで腹が立つからな。」


テギョンは玄関に着くと足を止めた。


「俺が今日ここに来た理由を知ってるか?」


「カトリーヌさんから私のことを聞いたからではないんですか?」


テギョンは口を尖らせると、ミニョの身体を横抱きに抱き上げそのまま部屋まで歩いて行く。

突然のことに驚き目を丸くするミニョをベッドへ降ろすと、上から覗き込むようにミニョの大きな瞳を見つめた。


「今日こういうことをした奴がいるだろう。」


ミニョは考えるように首を傾げ眉根を寄せたがすぐに誰のことだか判り、あっと小さな声を漏らした。


「ミニョの携帯にあいつが出たんだ。ミニョはベッドで寝てると言いやがった、他にも色々と・・・。俺はお前があいつに何かされたんじゃないかと心配で不安で・・・慌てたぞ。」


「何かって・・・オッパ、何考えてるんですか、テギョンさんはそんな人じゃありませんよ。何かなんてある訳ないじゃないですか。」


「判るもんか、あいつはお前に惚れてるだろう。」


「えっ!?」


ガバッと身体を起こし、驚いたようにテギョンの顔を真正面から見つめるミニョにテギョンはため息をついた。


「やっぱり気付いてなかったんだな。その調子じゃあいつが勘違いしそうなこと、色々としてそうだな。」


「そ、そんなことはありません。」


「どうだか・・・お前は鈍いからな。」


「だったら、オッパだって・・・」


フンと口の片端を上げるテギョンにミニョは上目遣いで拗ねたような視線を向ける。


「オッパだって、ミンジさんの頭撫でてたじゃないですか、笑いながら・・・。私、見てたんですから、今日の撮影・・・キスシーンの後、オッパ笑いながらミンジさんの頭撫でてました。あれは演技じゃないですよね。・・・本当のこと言うと、私・・・キスシーンよりもそっちの方がショックでした。ミンジさんオッパのこと好きなのに・・・あんなことされたら、きっともっと好きになっちゃう・・・」


ズキンと痛む胸。

撮影の中なら・・・演技している時のことならまだ仕事だと思うことができる。キスシーンもあらかじめテギョンから聞いていた。まさか目の前で見ることになるとは思わなかったが、それでも写真撮影の時のように何も知らなかった訳ではない。しかし、それ以外であんな優しい笑顔をミンジに向けているテギョンを見て、そのことの方がミニョにはショックだった。


「ミンジが俺を?それはないだろう、ただの仕事相手だ。ミンジはベタベタくっついて来ないし、それほど話しかけても来ないし・・・まあ、最近は少ししゃべるようになったが、仕事の話がほとんどだぞ。」


何をバカなことを言っているんだ、という感じでしゃべるテギョンを見ながらミニョは小さくため息をつく。


「オッパだって、鈍い・・・」


「何!?」


ミニョに鈍いと言われ、ムッとしながらもミニョ以外恋愛経験のないテギョンは反論できずに口を閉ざす。それ以前に他人にあまり興味を示さないテギョンは、相手が自分をどう思っているかなどということはあまり考えたこともなかった。

人の感情に対して鈍いと言われても仕方ないと思う反面、ミニョにそれを言われたらお仕舞だと、複雑な表情を見せるテギョンの顔を見るミニョの瞳は、いつの間にか涙が乾いていた。



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