You're My Only Shinin' Star (148) 救いの手 3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

テギョンは携帯を睨みつけるように見ながらその場に立ちつくしていた。

今の会話は一体何だったのか?

撮影現場付近に落ちていたという赤い傘のことが気になり、ミニョに傘を持っているかと聞くつもりだった。

仕事中は電話をかけても出ないことがほとんど。今日もミニョは電話に出なかった。そのこと自体特別なことではないのに何故か今日はミニョのことが気になり何度も電話をかけた。

何度目かの電話でミニョと繋がったかと思ったのに、聞こえてきたのは男の声。しかもハン・テギョンと名乗った。


「あいつ・・・」


テギョンは拳を握りしめると奥歯を力一杯噛みしめた。

自分の知らないうちにミニョと一緒にいるだけでも許せないのに、ミニョの部屋へ上がり込み、ミニョは今ベッドで寝ていると言った・・・

驚きと怒りでテギョンの頭はパンクしそうだった。


考える間もなく車に乗り込んでいた。

キーを差し込みエンジンをかけるとタイヤを軋ませながら車を走らせた。


あいつはミニョに何をした?

頭の中に浮かぶ様々なことを掻き消す為にカーオーディオのボリュームをいっぱいに上げる。

自分の車がこんなに遅く感じたのは初めてだった。いくらアクセルを踏んでも前へ進んでいる気がしない。

赤信号で止まる度に苛立ちは募るばかり。

ハンドルを握る手はあまりに強く握りしめているせいか指先が白くなっていた。


雨はいつの間にか雪に変わっていた。

フロントガラスに吹き付ける白い粒をワイパーでよけ、薄暗い街を走り続ける。

マンションの駐車場に車を停めるとエレベーターへ駆け込んだ。

自分の足で走って来た訳でもないのに何故だかハァハァと息が荒くなっていることに気付いたテギョンは、エレベーターのボタンを押すと何度も深呼吸をした。

いつもは何とも感じないのに階段を上っていった方が早いのではないかと思うくらい、ゆっくりと昇って行くように感じられるエレベーターに、何で最上階なんだと苛立ち、舌打ちをする。

玄関を開けると靴を脱ぎ捨てミニョの名前を呼びながら、どこかにハン・テギョンがいるんじゃないかと辺りを見回しながらミニョの部屋へ向かった。


「ミニョ!」


部屋のドアを開けるとそこにもハン・テギョンの姿はなく、ベッドで寝ているミニョの額をタオルで拭いているカトリーヌの姿があった。


「あら、テギョン君どうしたの急に。」


いつも必ず一言連絡をしてから来るテギョンが荒い息で突然何の前触れもなく現れたことに驚き、カトリーヌは目を丸くした。

テギョンはハン・テギョンとの電話での遣り取りのことを話し、ミニョのことが心配で慌てて車を走らせて来たことを話した。


「テギョンさんには改めてお礼を言わないとね。」


「え?」


「ベッドまで運んでくれて。彼のおかげでミニョの具合もそれほど酷くならずに済みそうよ。」


カトリーヌは赤い顔でスース―と寝息を立てているミニョの額に手を当てると、未だに息の荒いテギョンの背中を押しひとまずリビングへ行くように促した。




カトリーヌがバス停で雨に濡れたまま立っていたミニョをハン・テギョンが連れて来てくれた、と彼がこの部屋へ入った経緯を話すと、テギョンは大きな安堵のため息をつき、一気に力が抜けたようにソファーに身体を沈み込ませた。


「何日か前から具合が悪かったんだけど、今日のは精神的なものが大きいんじゃないかと思うの。」


リビングでテーブルを挟んでテギョンの向かい側に座ったカトリーヌはミニョの体調のことを話した。

ずいぶん前から様子が変だったミニョ。時々ボーッとしたり、ふさぎ込んだり、夜もあまり眠れなかった様子で、朝、暗い顔で起きてくることが何度かあったという。


「ミニョが眠れない原因なんてテギョン君とのことしか考えられないんだけど。体調が悪いこともテギョン君には言わないでって・・・何かあったの?」


ずいぶん前からということはテギョンがミニョにキスシーンの話をした頃だろうか?

それともミニョがテギョンと連絡を取りたがらなかった頃からか?


テギョンは膝の上に肘を乗せ、前かがみになった身体の前で両手を組むとその上に額を押しつけるように乗せた。


「たぶん、俺のドラマ絡みだと思いますが・・・。カトリーヌさん、俺、今日ここに泊まってもいいですか?」


自分のことが原因でミニョが体調を崩したというのなら尚更放っておけない。今はとにかくミニョの傍にいたい。


「そうね・・・ミニョとゆっくり話をした方がいいかもね。それにしてもミニョの体調が悪い時に一人にしたくないって言って私に同居を持ち掛けたんだったわよね。テギョン君が泊まるんだったら私がここにいる意味がないわね。」


クスクスと笑うカトリーヌにテギョンは申し訳なさそうに頭を下げた。




「私がいるとゆっくり出来ないでしょ。」


カトリーヌは鞄に荷物を詰めるとホテルに泊まると言い玄関へと向かった。

「俺が借りてるホテルの部屋を使って下さい。いつでも使えるようになってますから。」


傘立てから一本傘を取り出したカトリーヌを見てテギョンがふと思い出したように声をかけた。


「そういえばミニョの傘は?見当たりませんが。」


「朝、出掛ける時には持って行ったんだけど、テギョンさんの話だとバス停にいたミニョは傘を持っていなかったらしいわ。施設に忘れて来たのかしら。」


カトリーヌは鞄と傘を手にし、玄関を出た。



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