You're My Only Shinin' Star (147) 救いの手 2 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

撮影の終了と共に降り出した雨は徐々に激しさを増していた。

バタバタと慌ててカメラ等の撮影機材を片付けているスタッフを眺めながらテギョンがテントの下で雨の様子を窺っていると、一人のスタッフがテントへと近づいて来た。


「この傘、誰のだか知りませんか?」


手に持ち、掲げているのは赤い女性物の傘。


「ちょっと見せて。」


何となく気になったテギョンは傘を手にした。

テギョンがスタッフに傘のことを聞くと、今日ここで撮影をすることは秘密にしてあるが、念の為にと人が近づかないように、舗道の補修中の看板を立てて置き、それを片付けに行く途中で落ちているのを見つけたという。撮影前にはなかったので、撮影中に誰かが落としたのでは、と持ち主を探していたらしい。

テギョンは傘をじっくりと見ている。

ミニョが使っていた傘に似ている。しかし同じ様な傘はいくらでもあるし、同じデザインのものを使っている人もいくらでもいるだろう。

それにミニョは今施設で仕事をしている筈。こんなところにミニョの傘が落ちている訳がない。

テギョンは傘を一通り見終わるとスタッフへと返した。






公園での撮影を済ませたテギョンは車を事務所へと走らせていた。

途中何度かミニョへ電話をしたが繋がらない。ミニョは今、施設で仕事中の筈。いつもなら特に気に留めることもないが、今日は何となく気になって仕方ない。

さっき見た赤い傘のせいだろうか?

ドラマの撮影は上手くいった。ミンジのNGもいつもよりぐんと少なく、キスシーンに至っては一度でOKが出た。

上機嫌の筈だが、何となく心に引っ掛かるものがある。

事務所へ着き、アン社長と次のライブの構成について話をした後、テギョンはもう一度携帯を取り出した。

何度かかけてみるが、やっぱりミニョは出ない。仕事中だから出られないのだろうと切ろうとした時、電話が繋がった。


「ミニョか、ちょっと話があるんだが。」


テギョンはミニョの声を聞く前に話し出した。


『あ、お兄さんですか?ミニョちゃん、今ちょっと出られません。』


「な・・・お前、誰だ。」


『僕、ハン・テギョンです。お兄さんこの前お会いしましたよね。』


「ハン・テギョン・・・!」


ミニョ以外の人間が出るとは思っていなかったテギョン。その上、それがミニョのことをちゃん付けで馴れ馴れしく呼ぶハン・テギョンだったことに、一瞬にしてテギョンの頭の中はパニックになり、お兄さんと呼ばれていることにも気付いていない。


「おい、ミニョはどうしたんだ、どうして出ない。何でお前がミニョの携帯に出るんだ。ミニョはどこにいる。」


何が何だか判らないテギョンだが、ミニョの携帯にハン・テギョンが出たということは二人は一緒にいるのかと、苛立ち始めた。


『ミニョちゃんなら、今ミニョちゃんの部屋にいますよ。』


のほほんとした声がテギョンの耳に聞こえてくる。


「何!?お前、ミニョの家に上がり込んだのか、どうやって。」


セキュリティーはかなりしっかりしているマンションだ。指紋認証だから予め登録していない人間は一人ではエレベーターにすら乗れない筈。


『どうやって?・・・ミニョちゃん抱っこして上がりましたけど。』


どうやって。テギョンは手段を聞いたのだが、ハン・テギョンは状況を聞かれたと勘違いしそう答えた。


「な、何!」


ミニョちゃん抱っこして・・・抱っこして・・・抱っこして・・・・・・

テギョンの頭の中では何度も同じフレーズが繰り返し響いている。


『ミニョちゃんなら今ベッドで寝てます。ずいぶん無理してたみたいだからすぐには起きられないと思いますよ。身体大丈夫かなぁ・・・』


「!!」


ハン・テギョンの台詞にテギョンは言葉を詰まらせ、同時に息も詰まらせた。


『いやー、それにしてもミニョちゃんのベッドって凄く大きくて吃驚しました。良いベッドですね、スプリングの硬さもちょうどいいし。僕身体が大きいからあれくらい大きなベッド欲しいな。でも僕の部屋狭いからちょっと無理だなぁ。』


ハハハと笑いながら話しているハン・テギョンの声がテギョンの頭の中でぐるぐると回る。


「なっ・・・おまっ・・・おまえっ・・・」


携帯を握りしめるテギョンの手がブルブルと震えだした。

ミニョに何をした!そう叫びたいのに怒りと動揺で上手く声が出せない。


『あ、僕そろそろいかなくちゃ。それじゃあお兄さん、また。』


「お、おい!待てっ!」


テギョンの叫びも空しく、電話は切れた。






リビングに戻って来たカトリーヌは帰ろうとしているハン・テギョンにお茶を出した。


「男性のお客様はテギョンさんが初めてよ。」


「へえ、それは光栄だなぁ。」


ハン・テギョンは紅茶を飲むと仕事の途中だからと帰り支度を始め、玄関で靴を履きながらふと隅に置いてある傘立てに目がいった。


「客じゃない男は出入りしてるみたいですね。」


ハン・テギョンの視線の先には男物の黒い傘が立っている。

以前会社の女性社員達が騒いでいたネットの記事を思い出し、カトリーヌの顔をチラッと見る。


「もしかして、僕の名前とそっくりな人が出入りしてます?」


「あら、何の事かしら?」


ニッコリと微笑むカトリーヌにハン・テギョンは口元にフッと笑みを浮かべた。


「大丈夫ですよ、誰にも言いません、別に興味ないし。ミニョちゃんさえ悲しまなければそれで・・・」


ハン・テギョンは自分の連絡先だと言ってカトリーヌに名刺を渡すと玄関のドアを開けた。



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