You're My Only Shinin' Star (146) 救いの手 1  | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「あ、あの、私こんなに濡れてて・・・車の中、汚れちゃいます。」


「ああ、気にしないで、どうせ会社の車だし。でもそのままじゃ寒いよな・・・。取り敢えずコートだけでも脱いで、これにくるまってて、何もないよりマシだと思う。」


ハン・テギョンは助手席に置いてあった膝掛を後部座席に座るミニョへと渡した。その後、鞄の中をごそごそと探り、ビニール袋に入ったタオルを取り出すと、袋をビリビリと破り、タオルをミニョへと放り投げた。


「これで頭拭いて。新品だから綺麗だよ。」


タオルには某飲料メーカーが出している缶コーヒーのロゴが大きく入っている。


「お客さんに配る為にたくさん持ってるから、一つあげるよ。今度うちのコーヒー買ってね。」


付け足しのように宣伝をするハン・テギョンの姿がおかしくて、ミニョの顔に笑みが浮かんだ。


「良かった、少しは元気が出たみたいだね。」


ハン・テギョンはミニョに家の場所を聞くと、車を走らせた。




バス停で見た時のあまりにも沈んだミニョの表情が気になっていたハン・テギョンは、車を運転しながら常に楽しい話題でミニョに話しかけていた。

ミニョはあのままバスで家に帰っていたら、きっと余計なことばかり考えてどんどん気分が落ち込んでいただろうと思うと、突然のハン・テギョンの出現がとてもありがたく思えた。


バッグの中でミニョの携帯が鳴る。着信音から相手がテギョンだということはすぐに判った。

いつもならすぐに出るのに、今は何故だか出るのが怖い。

ハン・テギョンは携帯に出ないミニョを気にし、チラチラとバックミラーで後部座席を覗いている。

暫くすると、また携帯が鳴る。ミニョの手は動かない。


「出なくていいの?」


「・・・大丈夫です、この音はオッパですから。今、仕事中の筈なのに・・・」


「何か急用なんじゃない?」


「いえ・・・いつものことですから・・・」


ミニョは携帯の入ったバッグから顔を逸らすと、ギュッと目を瞑った。


「お兄さんと喧嘩でもした?」


ハン・テギョンは携帯に出ようとしないミニョも気になったが、それ以上に赤い顔で息苦しそうにしているミニョの様子が心配だった。

家ではなく病院へ行こうかというハン・テギョンの言葉に、ミニョは首を横に振った。


「大丈夫です。大したことありませんから。」


今はとにかく家に帰って眠りたい・・・

ミニョはそのまま家へ向かってもらうように頼んだ。






車がマンションの駐車場に着くと、ミニョは礼を言って一人でエレベーターへ行こうとした。

熱のせいか、赤い顔でハァハァと苦しそうに口で息をしているミニョの足は覚束無く、ハン・テギョンはふらつく足で一人で大丈夫だと言い張るミニョの肩を半ば強引に抱くと、荷物を持ちミニョと一緒にエレベーターへ乗り込んだ。


ミニョの押したボタンの数字にハン・テギョンは思わず目を疑った。こんな高級マンションに住んでいるなんて、一体何者?と思っていたところに、今度は部屋が五十階建ての最上階だと判り、更に驚き目を丸くする。


エレベーターが目指す五十階まで昇っていく間誰一人乗り込むことはなく、狭い空間の中で急に二人きりだということを意識すると、ハン・テギョンはミニョの肩を抱いている腕に少しだけ力を込めた。


車の中でミニョが連絡しておいた為、ドアを開けるとすぐにカトリーヌが出て来た。


「ミニョ!大丈夫!?」


「ハハ・・・ちょっと、濡れちゃいました。」


ハン・テギョンに支えられて何とか立っていたミニョは、カトリーヌの顔を見て安心したのか、フッと身体の力が抜けた。

その場に崩れ落ちそうになったミニョの身体を慌てて抱き上げると、ハン・テギョンはカトリーヌの後について部屋の中へ入って行った。






「でっかいベッドだなぁ~」


どう考えても一人で寝るには大きすぎると思われるミニョのベッド。思わずカトリーヌと一緒に寝ているのかと聞いてしまったが、カトリーヌの部屋は別にあるという。よっぽど寝相が悪いのかと首を傾げながら、ミニョをそっとベッドの上へ降ろした。


アフリカでミニョが倒れた時もこうして別の部屋へ移動させたんだったなと数ヶ月前のことを思い出す。あの時抱き上げたミニョは小さな声だったが確かに 「好き」 と呟いた。あの時のことはずっと気になっていた。帰国して病院で再会した時、ミニョの行動にもしかしたら自分のことを好きなのではとも思ったが、いつまでたっても携帯の番号を教えてくれないところをみると、自分の思い違いかとも思う。ミニョの気持ちは気になっていたが、今日バス停で、バスに乗らず佇んだままのミニョを見て、頭で考えるよりも先に車から飛び出した自分はミニョのことが好きだと改めて思った。自分の気持ちを押しつける気はないが、いつか自分の気持ちを伝えたい・・・


ハン・テギョンは首にかかっていたタオルをそっと抜き取ると、雨の雫で濡れているミニョの顔を拭き、着替えをさせるというカトリーヌの言葉にミニョの部屋から出た。


高級マンションの最上階。広い部屋に大きなベッド。

ハン・テギョンはポカンと口を開けたまま辺りをキョロキョロ見回し、玄関に置いたままになっていたミニョの荷物をリビングへ移動させた。

バッグの中から携帯の着信音が聞こえる。車で聞いたのと同じメロディー。


「確かお兄さんだったよな・・・」


鳴っては止み、また暫くしては鳴る着信音にハン・テギョンの手がミニョのバッグへと伸びた。



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