You're My Only Shinin' Star (145) 動揺 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

何日も続く悪寒と身体のだるさは熱のせいだろうか?

数日前から体調を崩していたミニョはその日施設での仕事を午前中で切り上げ、家へ帰る途中だった。


今にも雪が降りそうなどんよりとした冬の寒空。

バッグと傘を持ち、冷たい風に首をすくめ、マフラーに半ば顔を埋める様にしながら歩いていたミニョは、バス停へ向かっていた足をピタリと止めた。

バスが来るまでにはまだ時間がある筈。

ミニョは公園へと足を向けた。


広い公園の一角にミニョのお気に入りの場所がある。奥まっていて木々に囲まれていることもあり、普段から人影の少ない場所だったが、ミニョは何となくこの場所が好きだった。

公園の中の舗道を歩いていると途中で道が二つに分かれている。片方は公園の中央へ向かう広い道。もう一方はミニョの目的地であるお気に入りの場所へと続く細い道。その細い道の方に 『舗道補修中の為 立入禁止』 の看板が立てられていた。


「舗道じゃなきゃ、いいよね・・・」


ミニョは看板をよけ、舗道から降りると芝生の上を歩き奥の広場へと向かった。

マフラーの隙間から白い息を吐きながらミニョが歩いて行くと、広場を囲うように植えられた大きな木々の隙間から、チラチラと人影が見えた。

あまり人を見かけないこの場所で、今にも雪が降りそうなこんな日に何をやっているのだろうと何となく興味が湧いてくる。

近づいて行くとどうやら何かの撮影をやっているようだということが判った。

動く人影。

ミニョは近づいていた足をピタリと止めた。

木々の隙間から見えたのはテギョンとミンジ。

走るミンジの後ろから追いかけてきたテギョンがミンジの腕を摑む。テギョンはそのままミンジを抱き寄せると手を頭の後ろへ回し、唇を重ねた。


「・・・・・・」


― これは神が私に与えられた試練ですか?


その場から逃げだしたいのに足が動かない。

見たくないのに顔を逸らすことができない。

言葉を発することも出来ず、喉の奥に何か詰まっているかのようにたどたどしい呼吸。

ただその場に立ちつくし、呆然とテギョンとミンジのキスシーンを見ているミニョ。


いつの間にか、唇が、手が、足が震えていた。


テギョンが笑顔でミンジの頭に手を置いているのを見てやっと動き出した足は、ミニョをその場から遠ざけた。


― いつから私ってこんなに運が悪くなっちゃったんだろう。


・・・嫌だ・・・


― テレビで見なくて済むように、オッパに教えてもらう筈だったのに、先に見ちゃったら意味ないわよね。


・・・嫌だ・・・


― 最後の・・・ミンジさんの頭に乗せていた手・・・あれも演技ですか?オッパ・・・


・・・嫌だ・・・


― お仕事・・・ですよね・・・


頭ではあれは仕事だと理解しようとしているのに、心が言うことをきかない。

嫌な感情で胸の中が一杯になって息をするのも苦しい。


公園の中を歩き続けるミニョの頬に冷たいものが当たる。

雨?雪じゃなく雨ってところが今の自分には合っているのかも。

呆然とそんなことを考えながら、ミニョは振り返ることなくバス停を目指して歩き続けた。






何故だろう。キスシーンよりもその後の光景の方が目に焼き付いて離れない。

テギョンがミンジに見せた笑顔。あれは演技じゃない。あれはテギョンがミニョに見せる笑顔と同じ、心を許した相手に見せる表情・・・

それが判るから苦しくなる。


― ミンジさんは他の女優さんとは何か違いますか?


そう思うと胸が痛くなる。嫌な感情で心が一杯になる。


テギョンのことを好きでいても構わないと許可をもらった時はあんなに嬉しかったのに。

ミニョの姿を見る許可が欲しいと言われた時はあんなに嬉しかったのに。

それだけでは満足できなくなっている自分に気付いてしまった。


― 私って、欲張りだ・・・


ミニョは徐々に激しさを増す冷たい雨の中、バス停で一人唇を噛みしめ佇んでいた。






「ミニョちゃん!」


不意に腕を摑まれ大声で名前を呼ばれたミニョは、自分の腕を摑んでいる人物にゆっくりと顔を向けた。


「テギョン、さん?」


ハン・テギョンは傘をミニョの頭上で差すとミニョの赤くなっている顔を見下ろした。


「何やってんだよ、こんなとこで傘も差さずに、ずぶ濡れじゃないか。」


雨が降っていることは気付いていたが、傘を差すという考えが全くなかった。そもそも傘が見当たらない。施設を出る時はバッグと傘を持って出たのに、今手にあるのはバッグだけ。


「とにかく僕の車に乗って、このままじゃ風邪ひいちゃうよ。」


「いえ、私はバスで家に帰るところですから。」


「バスならさっき行っちゃったよ、僕見てたんだから。ミニョちゃんの前でバス停まったのに、乗らなかっただろ。いいから、僕の車に乗って。」


ハン・テギョンはミニョの腕を引っ張るとすぐ近くに停めてあった自分の車へと、ずぶ濡れのミニョの身体を押し込んだ。



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