You're My Only Shinin' Star (144) それぞれの想い3 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

今日の撮影は野外ロケ。そのこと自体は特に珍しくもないが、今日はキスシーンがある。

いつもは見物人でごった返しているロケも、今日の撮影はトップシークレット。どこからも情報が漏れないように細心の注意が払われた。

広い公園の隅で行われるロケは着々と準備が進められている。

奥まっていて木々に囲まれていることもあり、普段から人影の少ないこの場所は天気のせいもあってか、ガランとしている。

今にも雪が降りそうなどんよりとした冬の寒空。

まるで自分の心を表しているような空模様にテギョンは苦笑いを浮かべた。

救いは見物人がいないこと?


― 誰が好き好んでしたくもない相手とのキスシーンを見物人の前でするか。相手がミニョなら大勢の人の前で見せつける様にしてやってもいいが・・・ミニョは絶対に嫌がるだろうな。


この間から今日のキスシーンのことを考えると、どうしても 『相手がミニョだったら』 と思ってしまう自分にフッと笑みが漏れてしまう。


「初めて見ました、テギョンオッパのそういう顔。」


椅子に深く座り、ジャンパーのポケットに手を入れ口元を緩めているテギョンを見て、ミンジが声をかけてきた。

ドラマの中では笑顔も見せるが、普段あまり笑った顔を見たことがない。他の共演者やスタッフ達と話をしていて笑うこともあるが、一人でいる時に笑みを浮かべているテギョンを初めてみたミンジは何だか得をした気分になった。


「この間はすみませんでした。勝手に控室に入ってしまって。」


歌番組の収録の時のことを言っているのであろう。身体を縮こまらせて謝るミンジ。


「俺も少し気が立ってたからな・・・悪かった。」


サプライズを計画したのはミンジではない。苛立っていたのは自分の計画が上手くいかなかったから。

わだかまりを残したままでは今日の撮影に影響があると思い、テギョンは自分も言い過ぎたと素直に謝った。


テギョンは台本を持ったまま白い息を吐き、目の前に立っているミンジにコーヒーを二つ持ってこさせると、隣の席に座らせ自分の前に二つ置かれたコーヒーのうちの一つをミンジの前へ移動させた。


「いつもボロボロだな。」


テーブルの上に置かれたミンジの台本に目を遣ると、テギョンは温かいコーヒーに口をつけた。


「恥ずかしいですよね、私の役、台詞少ないのに。緊張すると憶えてた台詞がどっかいっちゃうんです。台本めくってると何となく落ち着くから・・・」


台本に目を向けていないとついテギョンを目で追ってしまいそうで・・・

ミンジはチラチラとテギョンを気にしながら台本を読むフリをした。


「あの・・・テギョンオッパは・・・キスシーン・・・て、やったこと、ありますか?」


「あ?」


台本を開きながら何となくソワソワと落ち着かない様子のミンジ。


「あの・・・私・・・キスシーン、初めてなんで・・・」


台本の陰に隠れながら呟くミンジを見ながら、テギョンが思い出したのは 『言葉もなく』 のPV撮影の時のユ・ヘイとのキスシーン。


「ああ・・・俺はまあ、一応あるが・・・」


フリで済ませる筈だったのに。

最悪だった・・・という言葉を飲み込むようにコーヒーを飲んだ。

いくらミニョの秘密を守る為とはいえ、あの頃の自分はずいぶんとミニョの為に動いていたなと色々なことを思い出し、我ながら感心してしまう。

他のメンバーにばれないように相部屋になり、壊れたヘアピンを見て落ち込むミニョに新しいヘアピンを買ってやった。記者にばらされないようにユ・ヘイと恋人のフリもした。トイレで歌い、テジトッキを作り、高熱で倒れたミニョを夜通し看病して・・・。今思うと、服ならワン・コーディに頼んで用意してもらい、マ室長に届けさせれば済むことなのに、自分でわざわざ婦人服を買いに行ったことを思うと、何だか笑いが込み上げてくる。

結局は自分がやりたくてやっていたことなのではないか、と。・・・ユ・ヘイとのキスシーン以外は。


テギョンがミニョの為にしていた事を思い出し、微かに笑みを浮かべているのを見て、ミンジは人に触られるのが嫌いなテギョンでも、キスシーンは嬉しいのかなと思ってしまう。


「私とのキスシーン・・・嫌じゃないですか?」


もし、嫌じゃないのなら・・・少しでも嬉しいという気持ちがあるのなら・・・

ドキドキと速くなる鼓動を感じながらミンジはテギョンに聞いてみた。

ミニョ以外とのキスなど考えたくもないし、いくら仕事とはいえ、初めからキスシーンがあると判っていたら、このドラマには出ていなかった、と言いたかったが、自分の返事次第ではミンジがNGを出さずに済むかもしれないと思うと、テギョンはどう答えようかと頭を悩ませた。


「まあ、別に・・・ミンジもあまり深く考えるな。」


― 深く考えなくていいなんて言われたら・・・今までテギョンオッパって私に何となく優しいような気がしてたから、嫌じゃないって思ってしまいますよ?いいですか?


ミンジはコーヒーを飲みながら周りを気にしている様子のテギョンを台本越しに見つめている。

テギョンはなかなかスタッフから声がかからないことに少し苛立ち始めていた。

この公園はミニョが施設に通う為に利用しているバス停が近くにある。

撮影がスムーズに進めば昼過ぎには終われるだろうが、NGが出て長引けば夕方までかかるかも知れない。夕方にはミニョの仕事も終わる・・・

出来る限りこの場所から早く離れたいと焦っていたテギョンは、いつになったら撮影が始まるのかと気になっていた。


テギョンがコーヒーを飲み終えた頃、スタッフから声がかかり撮影が始まった。

テギョンの祈りが神に通じたのか、その日のミンジは一、二度のNGで済み、問題のキスシーンに至っては、 『ミンソ』 の台詞がなかったことが幸いしたのか、NGを出さなかった。

OKの声がかかり、意外とあっさりと今日の撮影が終わったことに半ば拍子抜けしたテギョンは顔に笑みを浮かべると、ミンジの頭にポンと手を置いた。


「頑張ったな。」


口の両端を上げて笑うテギョンにミンジは顔を赤くすると笑顔で頭を下げた。



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何かすっかり週休2日になってきてしまったような・・・


あ~ら不思議、その割には何故か下書きが進まない、ストックが減っていく・・・


不本意なものは載せたくないので、マイペースで進めさせてもらいますね。



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