You're My Only Shinin' Star (139) 対面 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

開いたドアの向こうにいる女性はドアノブを摑んだまま驚いたように自分を見ている。何も言わない女性に対し、ミンジはもう一度声をかけた。


「テギョンオッパ、いますか?」


― ・・・テギョンオッパ?


ミニョはハッとして一瞬呆けていたことに顔を赤くすると、少しだけミンジから視線を逸らした。


「えーっと、皆さんまだ戻ってませんが・・・」


ミニョの返事に見るからにガッカリと肩を落とすミンジに、ミニョはきっともうすぐ戻って来る筈だから、よかったら中で待ちませんかとミンジを部屋の中へと呼んだ。


撮影の時にテギョンが抱きしめていた人・・・

今日テギョンの一番近くで歌を聴いていた人・・・


ミニョはミンジを部屋の中へ入れたものの、何を話していいのか判らず、取り敢えず椅子を勧めるとお茶を出した。


「私、イ・ミンジっていいます。テギョンオッパにはドラマで凄くお世話になってます。あなたは・・・」


「あ・・・コ・ミニョです。」


ミンジの、A.N.JELLの控室にいるあなたは一体誰?と窺うような視線にミニョは取り敢えず自分の名前だけを言った。


「コ・ミニョ・・・ああ、ミナムさんの双子の妹さんですね、明洞聖堂で歌ってるっていう。やっぱり同じ事務所なんですか?それとも今日はミナムさんを見に?」


「えーっと、あの、その・・・マネージャー見習いっていうか、何というか・・・」


恋人だということを隠す為にマネージャー見習いという肩書で出入りしているミニョは言葉を濁しながらもそう答えた。


「えーっ、歌手じゃないんですか?でもテギョンオッパと一緒の事務所でお仕事してるなんて羨ましいです。あ、もしかしてあの時の・・・」


テギョンが撮影で酔っぱらった日、撮影後ミンジは心配して控室の前で待っていたが、部屋から出て来たテギョンは差し出されたミンジの手を振り払い、さっさとエレベーターに乗ってしまった。それでもやっぱり心配で後からついていくと、片方の肩を女性に支えられ出て行くテギョンを目撃し、そのことが気になっていたという。


「テギョンオッパって人に触られるのあまり好きじゃないって聞いてたんで、私の手は振り払ったのに、そんな風に女性に肩を借りて歩くなんて誰だろうってずっと気になってたんです。でもちょっとだけ安心しました、マネージャーさんだったんですね。私上手く演技できなくてNGばっかり出して、そのせいでテギョンオッパたくさんお酒飲むことになっちゃって・・・大丈夫かなって心配してたんです。」


申し訳なさそうに俯くミンジ。


「テギョンオッパって最初は怖いっていうイメージしかなくて、撮影の時も凄く緊張してたんです。NG出したら怒鳴られるって聞いてたから凄くビクビクして。でも全然怒られなくて。何も言わないのは怒ると私がもっとNG出すと思ったからかな?でもそういうのもきっと優しさなんですよね。この間もNGを出した私がスタッフに嫌味を言われないようにって気を遣ってくれて・・・。あ、でも撮影が終わったら怒りが爆発してるのかな?撮影の後のテギョンオッパってどうですか?怒ってます?」


ミンジはテーブルを挟んだ向かい側の椅子に座っているミニョの方へ身を乗り出すようにして聞いてきた。


「あの、私はドラマの撮影にはほとんどついて行っていないので、詳しくは・・・」


ミニョはドラマの撮影には一度しか同行していなかった。途中でスタジオから出されたあの日だけ。

あれから何度かテギョンと一緒にテレビ局にも出入りしているが、ドラマの撮影現場には一度も連れて行ってもらえなかった。


「あ、そうなんだ。ミニョさんっていつもテギョンオッパと一緒にいる訳じゃないんですね。」


ホッとしたように笑みを浮かべるミンジの顔がミニョの心に引っかかった。


ミンジは撮影中のテギョンの様子をミニョに話した。

いつも黙って腕組みをし、椅子に座っていることが多いが、組んだ足の先がリズムを取るように動いているとか、台本は凄く綺麗なのに台詞はいつも完璧だとか。


「テギョンオッパの低い声って素敵ですよね。耳元で 『好きだ』 って囁かれた時は撮影だって判ってても、凄くドキドキしました。」


ミンジの屈託のない笑顔を見ながら、ミニョはいつの間にか胸元の星を握りしめていた。


ミンジはミニョにテギョンの事やA.N.JELLの事を聞いてくるが、本当のマネージャーではないミニョにはライブのことを聞かれても答えられなかった。


「じゃあ、A.N.JELLのステージもいつも見てる訳じゃないんですか?」


「ええ、まあ・・・」


二度、アフリカへ行ったミニョ。アフリカから帰って来た時にはテギョンは怪我をしていて休養中。

その後ミニョも施設で仕事を始めた為、忙しくてライブも見に行けなかった。

事務所での練習風景は何度か見ているが、ステージに上がっている姿を見るのは、テギョンに告白されたコンサート以来初めて。


「でも今日は皆さんの演奏が近くで見られて良かったです。」


ステージの上でキラキラと輝いていたテギョン。

心の底からそう思ったミニョは素直に言葉を口にした。


「やっぱりそうですよね、近くで見られるっていいですよね。」


ミンジもうんうんと頷くと、さっきのステージを思い出しているのかうっとりとしている。


「今日は私にとって最高に幸せな日です。テギョンオッパの歌をあんな近くで聴けて。」


ステージの上で聴いていたミンジ。

スタジオの端で聴いていたミニョ。


「なるべくテギョンオッパの方を見ているように指示されたんで、そうしたんですけど、恥ずかしかったなぁ。」


ミンジは赤くなる顔を隠すように両手で頬を挟んだ。


「テギョンオッパずっと私の方を見ていて、それがもの凄く真剣な顔で・・・あーもう何だか照れちゃって逃げ出したいくらい恥ずかしかった。」


テギョンの顔をずっと見ていたミンジ。

テギョンの姿が見られなかったミニョ。


ミンジの話を聞いているとミニョは徐々に息苦しさを感じてきた。


胸が痛い・・・

息が詰まる・・・


「あ、ごめんなさい、初対面の人に馴れ馴れしくこんなことペラペラしゃべっちゃって。何か私興奮しちゃって・・・煩くなかったですか?」


「いえ・・・気にしないで・・・」


ミニョは俯きそう答えると立ち上がり、そろそろ皆が戻って来る筈だからちょっと見てきますと言って部屋のドアを開けた。



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