You're My Only Shinin' Star (132) 心の変化 2 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

テギョン抜きでの撮影が続き、ミンジもテギョンとのシーン以外は撮り終わった。


「あら?まだ終わってないのね。」


スタジオのドアが開き入って来たヘイが近くのスタッフに声をかけた。


「あ、ヘイさん。はい、テギョンさんがまだ着いてなくて・・・もうすぐ着くって連絡があったんですけど。」


「ふうん・・・じゃあ終わるまで待たせてもらうわ。ちょっと監督に話があるから。」


ヘイはスタジオの隅の目立たない場所に座った。






テギョンは姿を現すと監督に頭を下げ、ミンジに悪い遅くなったと声をかけ撮影が始まる。



ヒョヌ (テギョン) とミンソ (ミンジ) は会社の同僚。

恋人のいるミンソはヒョヌに好きだと告白されるが拒絶をした。しかし、最近恋人との仲が上手くいっておらず、優しく時には強引な面を見せるヒョヌに徐々に惹かれていく・・・



夜のオフィス。

残業で残っていた社員も帰って行き、ヒョヌとミンソの二人が残った。

二人きりになった気まずさに、逃げるようにその場から離れようとしたミンソの腕をヒョヌが摑む。


『帰るなよ・・・』


ヒョヌがミンソの耳元で囁く。


『・・・・・・』


その声に、ミンジの顔は真っ赤になり次の自分の台詞が出てこない。


「カット!」


もう一度同じシーンをやり直す。しかし同じところでまたNGが出る。

声が小さすぎる、声が大きい、動作が遅い、動作が早過ぎる・・・

同じシーンを何度も撮り直し、やっとOKが出た。

次のシーン。

ミンソがヒョヌに惹かれつつあることを隠すように、わざと気のないフリをし何とも思っていないことを伝える台詞を言う。

少し長い台詞だがミンジは完璧に憶えていた。だが何度も途中でつかえ、NGの連発。


「ミンジ、一体どうしたんだ。」


大きなため息をつきながら監督が休憩の指示を出した。

ミンジは泣きそうな顔でペコペコと皆に何度も頭を下げると、唇を噛みしめスタジオから出て行った。


「ハァ~」


ザワザワと騒がしくなったスタジオの中、大きく息を吐いたテギョンはドサッと崩れるように椅子に座るとペットボトルのキャップを開け、水をゴクゴクと半分ほど飲んだ。


「あんなにNG出されて怒らないなんて、ずいぶん優しいじゃない。」


「あ?何でお前がこんな所に・・・何しに来た。」


テギョンはヘイの姿に顔をしかめるとペットボトルに口をつける。


「あの子、いつもああなの?」


「最近はそうでもなかったんだが・・・今日はひどいな。まあ、俺も遅れてきたんだ、文句は言えない。」


グビッと水を飲むテギョンに目を遣り、ヘイは監督の方へ行った。


「監督、お久しぶりです。」


「ああ、ヘイ!もうそんな時間か?もうちょっと待ってくれ、あと少しなんだ。」


「私は構いませんけど・・・さっきの子、いつもあんな感じなんですか?」


ヘイはミンジの消えて行ったドアを見ながら監督に聞いた。


「いや、今日も途中までは問題なかったんだが・・・。どうもテギョンと絡むとダメだな。最初はガチガチに緊張してたのが最近はだいぶ良くなってきたと思ったのに。」


ヘイは椅子に座り水を飲んでいるテギョンに目を遣ると、口の端にほんの少しだけ笑みを浮かべた。


「ホント、この男のどこがいいんだか・・・」


監督は腕組みをしながらため息をつき、周りのスタッフに指示を出す為椅子から立ち上がるとセットの方へと歩いて行った。






ミンジはトイレで溢れそうになる涙をぐっと堪えていた。

テギョンとの撮影も回を重ねるごとに自然に演技できるようになっていた。

迷惑をかけたくないという一心で台本を何度も読み台詞も憶えた。

なのに・・・

テギョンを目の前にすると頭から台詞がどこかへいってしまう。

上手く口から出てこない。

自分の意思とは関係なくドキドキと速くなる鼓動と赤くなっていく頬・・・


「イ・ミンジ、そこにいるんでしょう。私監督に用事があるの、早く終わらせてくれないと困るんだけど。」


トイレの個室の中にいたミンジは慌ててその場から出ると声の主を見た。


「ユ・ヘイさん・・・」


「そんなんじゃあ、テギョンに嫌われるわよ。あなたも女優なら撮影中は自分の感情をコントロールしなさい。それにあなたの役・・・今のあなたにピッタリだと思うけど。それとも自分の気持ちに気づいてないのかしら?」


ヘイは意味深な言葉を呟き笑みを浮かべその場から姿を消した。






スタジオに戻って来たミンジは監督やうんざり顔のスタッフに頭を下げ、テギョンにも深々と頭を下げた。


「遅いっ!何やってたんだ!」


テギョンにいきなり大声で怒鳴られ、スタッフの視線が集まる中、ミンジは目をギュッと瞑り首をすくめた。身体を硬くしていると、テギョンの大きな手が背中をポンッと叩いた。


「って、最初に遅れてきたのは俺だ、人のことは言えないな。俺に怒鳴られておけばスタッフに嫌味を言われることもないだろう。これでおあいこだ、ほら、さっさと終わらせるぞ。」


テギョンは口の片端を上げるとセットへと歩いて行く。

ミンジはテギョンの背中を見ながら速くなる鼓動を静めようと何度も深呼吸をした。

ヘイに言われた言葉の意味はよく判らない。ただ、テギョンに迷惑をかけたくないという思いはいつの間にか、テギョンに嫌われたくないという思いに変わっていた。



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前回の記事のサブタイトル 『心の変化』 を 『心の変化 1』 に変更しました。


人の心は刻々と変化していきます。

時には小さく、時には大きく。

良くも、悪くも。

周りから影響を受け、自分でも気づかないうちにいつの間にか・・・


連番のサブタイトルとしては一番長くなるかな?



いいえ、決してタイトルを考えるのが面倒だとかそんなんじゃあ・・・(笑)




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