ドラマの主題歌も担当しているテギョンは自分の撮影の無い日でもよく現場に顔を出す。
監督と打ち合わせをし、脚本家とも打ち合わせをし、ストーリーの確認をしながら曲のイメージを作る。
自然に他の共演者達とも会話をする機会は増えるが、黙ったまま難しい顔をしていることの多いテギョンに、近寄り難いと距離を置く人達も多かった。
そんな中でテギョンのことをオッパと呼ぶミンジは他の共演者やスタッフから注目を浴びている。
不愉快そうな顔をしながらも、オッパと呼ばれることを受け入れたテギョンにも視線が集まった。
テギョンのことを 『A.N.JELLの皇帝ファン・テギョン』 としてしか知らなかったミンジは、テギョンの傍にいるだけで緊張しているのが周囲の人間にも判るくらい動きがぎこちなかった。
監督に注意され、テギョンと自然に接することが出来るようオッパと呼ぶようになってからは、NGも少し減ってきた。
テギョンを見ていると怖いというより人と接するのが苦手なのだということが判ってきた。
一度打ち解けた人とは話もするが、話を聞いていることの方が多い為、寡黙に見える。
「テギョンオッパ、お早うございます。」
挨拶を済ませたミンジはその後テギョンに話しかけることもなく台本を開いている。時々チラチラとテギョンを見るだけでそれ以上近づくことはしない。
初めの頃はテギョンを見ると緊張しながらも監督に言われた様に、テギョンに慣れる為近づき色々と話しかけていたが、近づき過ぎると途端に表情が険しくなることがある為距離をとるようになった。
そうして少し離れた所から見ていると、テギョンがさり気なくスタッフに気を配ったり、共演者のフォローをしていることに気がついた。
「背後霊みたいに後ろに突っ立ってないで座れ。見下ろされるのは気分が悪い。」
テギョンはオッパと呼び挨拶をしてくるミンジにいつも同じ言葉を返すと、黙って腕を組んでいる。
以前はやたらと近づき話しかけてきたミンジを疎ましく思っていたが、最近は少し離れた所にいるだけであまり近づいてこないので特に気にすることもなかった。
まったく会話をしない訳ではないし時には仕事以外の話もするが、ベタベタとくっついてきて我先にと話しかけてくる他の女優と比べたら遥かに気分のいい相手だった。
「今日はよろしくお願いします。」
幾つもの雑誌、新聞社から記者が取材に来る。
監督、脚本家、出演者と話を聞いていく。もちろんテギョンのところにも来る。
主役ではないし、出番もそれほど多くないが注目度では№1のファン・テギョンを取材しないで帰って行く記者はどこにもいなかった。しかし役柄について、主題歌について、共演者について、と当り障りのない質問をして帰って行くのがほとんどだった。
ミンジの役も出番は多くはなかったが、テギョンと絡みがある為記者に声をかけられる。
「普段から仲が良いんですか?」
テギョンオッパと呼び、テギョンの傍にいるミンジをよく見かけていた記者は興味津々で聞いてきた。
「撮影の為にオッパと呼ばせて頂いているだけで、特別に仲が良いという訳ではありません。」
記者はテギョンの役 『ヒョヌ』 に徐々に惹かれていく役 『ミンソ』 を演じているミンジに、共演していてテギョンに恋愛感情を抱くことはないかと聞き、ミンジは少しも考えることなく、それはありませんと否定していた。
どの記者に対しても同じように答えているが、その答えに満足しない記者は何でもいいからドラマ以外でテギョンとの付き合いはあるかと聞いてくる。
一緒に食事にも行ったことはないし、仕事以外で会ったのはNGを連発した撮影の次の日にテギョンの事務所に謝りに行ったあの時だけだったので、ミンジにはその時のことくらいしか話すことがなかった。
テギョン本人についてどう思っているかと聞かれた時は、口数が少なく、目つきが鋭い為近寄り難いというイメージしかなかったが、本当は優しい人だということが判ったと、今まで自分が抱いていた皇帝ファン・テギョンのイメージとは違っていたと話した。
ミンジは撮影スタジオに入るとキョロキョロと辺りを見回した。
スタジオの中を挨拶をしながらぐるっと一周歩き、セットを覗き、カメラの後ろを通り、いつも自分がよく座っているところへ戻ってくる。椅子には座らず立ったまま台本を開いて読み始めるが、暫くすると顔を上げドアの方を見る。
時々開いたドアからスタッフや共演者達が出入りしているのを確認すると、また台本へと目を向ける。
テギョンと一緒に出る場面も残りわずか。なかなか一発OKが出せないミンジはテギョンに申し訳ないと思いながら、せめて台詞だけでも完璧にしなければと意気込む。
台本を読みながらチラチラとドアを気にしていると、スタッフが走ってきてミンジの目の前に立った。
「ミンジさん、テギョンさん前の番組の収録がまだ終わってなくて遅れるそうです。撮影の順番も変わるかも知れないんでよろしくお願いします。」
ミンジは頭を下げ走り去って行くスタッフの後ろ姿を見ながら、テギョンがまだ来ないことに寂しさを感じていた。
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平日も時々休むかも・・・
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