You're My Only Shinin' Star (116) 離れていても  | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

ミニョの歌声がラジオから流れてから数日後、ミニョの周りで少しずつ変化が起き始めていた。

聖堂の広場で歌っていると、平日にもかかわらず聴いている人の数が増加してきた。そのほとんどが観光のついでにミニョの歌を聴いているのではなく、明らかに最初からミニョの歌が目当てで聖堂を訪れる人々だった。

ジェルミの 『ファンになっちゃった』 発言の影響もあり、ラジオを聴いていた人もそうでない人も、曲名と後ろ姿だけで顔が映っていないというヒントを頼りに動画を探し、見つけた、これは違うとA.N.JELLのファンサイトは大いに盛り上がっていた。その中には映っている景色で場所を特定し、明洞聖堂へ足を向ける人、実際に行って聴いてきたという人が続出し、書き込みには 『良かった』 という声が多く、否定的な意見はほとんどなかった。

聴衆が増えれば増えるほどミニョの顔が誰かに似ていると気づく者が出てくる。コ・ミナムに似ているという噂が立つと、顔を見ようと更に聴衆が増える。しかし聖堂にいる時のミニョの名前は洗礼名のジェンマで通している為、コ・ミナムの双子の妹のコ・ミニョの名前にたどり着く者はいなかった。

そしてまるでアイドルでも見に来たような人達も、聖堂の荘厳な造りと、街中とはまるっきり違う落ち着いた静けさに圧倒され、少しも騒ぐことなく歌を聴きそのまま帰って行った為、混乱が起こることもなかった。

そこにはミニョの人当たりの柔らかさも少なからず影響していた。

誰に対しても笑顔で接し、小さな子供が迷子になっていると歌を歌う時間になったにもかかわらず、一生懸命に保護者を捜している姿に皆好感を持った。

何もないところで転びそうになると、キョロキョロと辺りを見回し恥ずかしそうに顔を赤らめる姿は人々にドジだという印象を与えるが、ひとたび歌い始めるとその歌声の美しさと聖堂という場所に一変にして厳かな雰囲気に包まれる。

そのギャップがミニョの人気を更に上げていた。





『オッパは私が聖堂で歌うことに反対ですか?』


不安げなミニョの声がテギョンの耳に響く。


「どうしてそう思うんだ?」


『だって何だかオッパの声いつも沈んでるような気がするから・・・』


テギョンの車がミニョの住むマンションから出て来たところをスクープされてからテギョンはミニョと会っていない。

電話とメールは毎日欠かさなかったが、声の様子でテギョンが反対しているのではとミニョは不安になっていた。


「反対している訳ではない。」


ただあまりミニョを他の男の目に触れさせたくないだけだ・・・とは言えず、テギョンの言葉は歯切れの悪いものになってしまう。


「俺には何も出来ることがないから・・・」


テギョンはラジオから流れてくるミニョの声を車で聴きながら、これからミニョの周りで起こるであろうことを考えていた。

ミニョの歌が世間に広まれば広まるほど自分とミニョの距離が少しずつ広がっていってしまうのではと思い、不安な気持ちになる。


『オッパは今まで私にたくさんのことをして下さいました。ですから今度はオッパは見ていて下さい。私、頑張りますから。』


電話の向こうでミニョが拳を胸の前で握っているのを想像すると、テギョンの顔に笑みが浮かんだ。


「頑張りすぎて、空回りしないようにな。」


いつものテギョンを思わせる皮肉めいた声に、ちょっとだけ安心したミニョの顔にも笑みが浮かぶ。


「今日は歌う日だったんだろう?どうだった。」


『平日なのに沢山の人が聴いて下さいました。』


「歌は上手く歌えたのか?」


『はい、歌の方は大丈夫です。』


「歌の方は?」


『・・・えーっと、広場に出て来た時に転びそうになって、笑われてしまいました・・・』


電話の向こうで声を殺して笑うテギョンの声が微かに聞こえると、ミニョの頬が少しだけ膨らんだ。


『しょうがないじゃないですか、歌う時は少しヒールの高い靴を履くんです。慣れないと歩きにくくて・・・オッパ、聞いてます?』


微かどころかハッキリと聞こえだした笑い声にミニョの頬は更に膨らむ。


「ああ・・・クックックッ・・・子供達の世話と歌と、両方ある日は大変だな。」


『歌うのは週に二日ですから大したことはありません。それよりも聴いて下さる方が凄く多くて吃驚してます。』


ミニョの歌をネットで流すというのはカトリーヌの発案で、テギョンも承知した。今のミニョの状況はミニョ本人から聞かなくても自然とテギョンの耳にも入ってきていた。

聖堂という場所柄、マスコミのカメラが直接ミニョを捉えることはなかったがネットと口コミで評判は伝わり、平日でも広場はたった一曲の歌を聴く為に人々が詰め掛けた。

ここまでの聴衆の多さは一時的なものかもしれないが、クリスチャンでもない人がミニョの歌を聴く為に聖堂を訪れているのは事実だった。


「疲れてるんじゃないか?」


中山聖堂の修道院にいた頃も、アフリカの教会で歌っていた時もこれほど多くの人の前で歌ったことのなかったミニョは、その人数だけでも緊張するのか歌を歌った日は電話の声がいつもと違って聞こえる。


『オッパの方こそ毎日遅くまでお仕事ですよね。お疲れじゃありませんか?』


「俺はいつものことだが、お前は早く寝た方がいい、もう切るぞ。」


『あっ、あの・・・』


「ん?どうした?」


『あの・・・いつもの・・・』


「ああ・・・」


電話を切ろうとしたテギョンをミニョの控え目な声が引き止める。ミニョが何を求めているのか判ったテギョンは口元をフッと緩めた。


「ミニョ、サランヘ。」


囁くようなテギョンの声に満面の笑みを浮かべるミニョ。

たとえどれだけ疲れていようとも、電話でしか言葉を交わすことが出来なくても、この一言で元気が湧いてくる。


『オッパ、お休みなさい。』


いつも俺だけか?と思いながらも嬉しそうなミニョの声を聞き、テギョンも満面の笑みを浮かべていた。



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ピグ、始めてみました。

なーんにも判んないので、取り敢えず初心者広場に時々出現しています。

超短時間ですが(笑)



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