土曜日の夜、ジェルミがパーソナリティーを務める生放送のラジオ番組はジェルミのレギュラー番組の中でも人気の高い番組の一つだ。
リスナーから送られてきた質問に真剣に時にはジョークを交えて答えたり、直接電話で会話するコーナーがあったり、愛嬌いっぱいのジェルミの声を聴いているファンはラジオの前で楽しい週末を過ごす。
あっという間に一時間が過ぎ、最後はいつもジェルミお勧めの曲をかけて終わる。
「皆、今日も俺と楽しいひと時を過ごしてくれてありがとう。今日のお別れの曲は、ネットの動画サイトで見つけたクラシックです。俺クラシックは全然詳しくないし、よく判んないんだけど、この歌を聴いた時はその声の美しさに息をするのも忘れたくらいだよ。
俺イギリスにいた頃家族でクラシックコンサートに行ったことあるんだけど、その時のことをフッと思い出したんだ。もう十年も前のことなんだけど、その時に聴いた歌も、もの凄く綺麗な声で感動したのを憶えてる。その時と同じくらい衝撃を受けたよ。
この動画の画像は後ろ姿しか映ってなくて、誰が歌ってるのか判らないけど、きっとこの声だけで皆ファンになっちゃうと思うよ。俺はもうファンになっちゃった。
皆、気になってきたかな?ちょっと前置きが長くなっちゃったね。それではお待たせしました。曲は 『アメイジンググレイス』 です。皆、今夜もありがとう、また来週!」
ジェルミの声が別れの挨拶を告げると、ラジオから女性の歌声が流れ出した。
「シヌさん、もうすぐ撮影再開するそうですけど。」
「判った、ちょっとだけだから。」
ドラマの撮影スタジオでシヌが口元に微笑みを浮かべコーヒーを片手に、スタッフが持って来たラジオのスイッチを入れた。
「あ、これ、ジェルミさんの番組ですね、いつも聴いてらっしゃるんですか?」
「今日はちょっと特別・・・かな。」
ラジオから流れてくる元気なジェルミの声。番組はもう終わりに近づいていて、ジェルミが最後の曲の紹介をしているところだった。
「あ、でももう終わりみたいですね、残念だな。」
「いいの、俺が聴きたかったのはここからだから。」
シヌはコーヒーを飲みながらラジオのボリュームを上げる。ラジオから流れてくるジェルミの声に気づいたスタッフや共演者達が声のする方を振り向いたが、ラジオのボリュームを上げたのが日頃から皆と笑顔で接しているシヌだと判ると誰も咎めることなく、ジェルミの声を聴いていた。
「ジェルミがこんなに気に入ったクラシックってちょっと気になるな。」
監督がシヌの横にやって来て興味深げに目を光らせる。
「そうですね、俺も朝からジェルミがあまりにも勧めるんで気になって・・・。すいません、撮影中に。」
立ち上がり頭を下げるシヌに監督は自分も聴いてみたいと、手に持っていた台本をテーブルへ置きシヌの横へ座った。
『・・・それではお待たせしました。曲は 『アメイジンググレイス』 です。・・・』
ジェルミの声が別れの挨拶を告げると、ラジオから女性の歌声が流れ出した。
「すみませんミナムさん、予定より時間がかかってしまって。」
取材の最中にチラチラと何度も時計を気にしていたミナムに、申し訳なさそうに女性記者は頭を下げた。
「あ、ゴメン気にしないで、ちょっとコレが聴きたかっただけだから。」
片付けをしてその場を去ろうとする記者にミナムはコーヒーを勧めると、部屋の隅にあったラジオのスイッチを入れる。
ラジオからはジェルミの元気な声が流れてくる。
「何とか間に合ったみたいだな。」
「私もこの番組好きで、よく聴いてますよ。やっぱり他のメンバーの番組ってチェックしたりしてるんですか?あ、これは取材じゃないですから。」
笑いながら話す記者にミナムは少し考えるような素振りを見せると、コーヒーを一口飲んだ。
「んー、そうでもないけど、今日の番組は絶対聴いてってジェルミが煩くて。特に一番最後は聴き逃すなよって、何度も念を押されたから。後でどうだったって聞かれるとマズいでしょ。だから一応聴いとかないとね。」
「あ、でも本当に終わりみたいですね。」
ジェルミの声は最後の曲の紹介をしていた。
「ジェルミさんがファンになったなんて面白そうですね。」
『・・・それではお待たせしました。曲は 『アメイジンググレイス』 です。・・・』
ジェルミの声が別れの挨拶を告げると、ラジオから女性の歌声が流れ出した。
テギョンは事務所を出るとカーラジオをジェルミの番組に合わせた。
屈託のない普段と全く変わらないジェルミの元気な声が車の中に広がる。
番組が進むにつれ、テギョンはハンドルを握る手に汗を感じ出した。
前方を睨むように目を細め、暫くそのまま走り続けたテギョンは車を駐車場に停めると、公園の中へ入って行った。
ミニョと二人でメンコを飛ばし、ジョギングの途中で休憩の為に立ち寄った公園。ミニョとの思い出の場所の一つ。
今夜は満月で、丸い月が夜空の中でその存在を一番強く主張しているように見える。
テギョンは特に何をするでもなく、ただじっとベンチに座り月の光を浴びている。
ドキドキと速くなる鼓動。
不安と期待の入り混じった感情がどこからやってくるのか判っているテギョンは、膝の上に置いた拳を強く握るとキュッと唇を結び、再び車へと向かう。
エンジンをかけるとカーラジオからジェルミの明るい声が流れてきた。
『皆、気になってきたかな?前置きが長くなっちゃったね。それではお待たせしました。曲は・・・』
暗い公園の駐車場。
フロントガラスから射し込む蒼白い月の光。
車内に広がるミニョの歌声・・・
テギョンはシートを倒し目を瞑ると大きく呼吸をした。
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カトリーヌの計画が進み始めました。
ミナム、ミニョの入れ代わり疑惑・・・自分でも何で話をそっちへ持っていくのかと何度も思いましたが、前の方で書いちゃったものはしょうがない。そのまんま放置する訳にはいかないのでキム記者を何とかします。
上手くいくか?
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