「マ室長、今からお兄ちゃん仕事ですよね。私も一緒に乗せてもらえませんか?」
ミニョは定期的に薬をもらいに病院へ通っている。いつもならテギョンの車で一緒に行くのだが、今日はマ室長がミナムをラジオ局まで連れて行くついでに車に乗せてもらい病院まで来た。
ミニョを降ろし、車は走り出したがシートの上に携帯があるのを見つけ、ミナムが届けに行くことに。
ミナムがミニョを見つけると隣には知らない男が座っていて二人で話をしていた。ミナムは何度も病院に通っていれば顔見知りになった患者同士で話くらいするだろうと思い気にも留めなかったが、ミニョの隣にいるのは怪我の治療の為この病院に通っているハン・テギョンだった。
「ミニョ、忘れ物。」
ミナムは被っていたキャップのつばをぐっと下げ、顔を隠しながらミニョに携帯を渡す。
「ミニョ、早いとこヒョンと仲直りしてくれよ。」
「別に喧嘩してる訳じゃないもん・・・ただ意思の疎通が上手くいかないというか何というか・・・」
「どっちでもいい、俺達がとばっちり食うんだぞ。ヒョンの機嫌を直せるのはミニョだけなんだからな。」
ミニョは少し頬を膨らませながらミナムから顔を逸らす。
初めてみるミニョの表情に驚きながらも探るようにミナムを見ているハン・テギョンに、彼は自分の兄だと紹介した。
「ああ、お兄さんなんですか。怪我の方はもう大丈夫なんですか?」
ハン・テギョンはミニョと親しげに話をしているのがミニョの兄だと判ると、ホッとしたように表情を緩めた。
ミナムは、こいつ何で俺の怪我のこと知ってるんだ?と、首を傾げながら数日前ジェルミとふざけていて腕をぶつけて痣をつくったことを思い出し、「ええ、まあ・・・」と返事をした。
「ミニョ、とにかく病院が終わったらさっさと家に帰ってヒョンと話をしてくれよ。」
ミナムは急いでマ室長の待っている車に向かった。
テギョンは楽譜の入った封筒をアン社長に渡すと合宿所へ帰る車を急がせた。
一昨日明洞聖堂へ行くことを許可できないと言ってから、ミニョとは必要最低限の言葉しか交わしていない。
それは二人でいる時だけでなく、食事などでメンバーと一緒にいる時も同じで、あまりにも今までの二人と違った様子にジェルミはもちろんシヌやミナムまでも驚いた表情をしていた。
「ねえ、何で喧嘩したの?」
ジェルミが聞くと・・・
「喧嘩などしていない。」
「喧嘩じゃありません。」
と、二人声を揃えて言う。
テギョンは不機嫌な顔をしながらもミニョが食事の仕度をしていれば、何度も水を飲みに冷蔵庫を開け、ミニョがソファーで本を読んでいれば隣に座り雑誌をめくっている。
そんな二人の様子に、ミナムは傍観し、シヌはお茶を出し、ジェルミはオロオロするばかり。夜になればミニョはテギョンの寝ているベッドへ入り二人背中合わせの状態で朝を迎えていた。
そんな状態が二日ほど続いた為、今日がミニョの通院の日だということをテギョンはうっかり忘れていた。
合宿所に帰って来たテギョンは慌ててミニョを捜し回る。
「チッ・・・どこに行ったんだ。」
このままちゃんと話もせず過ごすのは決していいことではない、ミニョを病院へ連れて行った後でちゃんと話し合おうと思っていたテギョンはミニョの姿が見えないことに不安を感じる。
― まさか、何も言わずに聖堂へ行ったんじゃないだろうな?
眉間にしわを寄せ苛々しながら歩き回っていると玄関からミニョが入って来た。
「ミニョ!どこに行ってたんだ!?」
「どこって・・・病院ですけど?ちょうどお兄ちゃんが出かけるところだったんでマ室長にお願いして一緒に乗せてもらいました。帰りはバスで帰って来ました。オッパはもう通院しなくてもいいんですからこれからはバスで行くようにしますね。」
そのまま二階へ行こうとするミニョの手首をテギョンが摑む。
「何を怒ってるんだ?」
「別に怒ってません。怒ってるはオッパじゃないんですか?」
手を摑まれたミニョはテギョンの方を見ないままそう言うと哀しげに瞳を揺らした。
「俺がいつ怒ったんだ?」
「・・・許可できないって・・・私の話も聴いて下さらずに出て行っちゃったじゃないですか。」
顔を逸らしたまま自分の方を見ようとしないミニョにテギョンの苛々は増していく。
「あれは別に怒ったんじゃなくて・・・いや、怒ったのか?まあとにかくこっちを向け。」
摑んでいた手を引っ張り自分の方を向かせると、ミニョの瞳には今にも零れんばかりの涙が溜まっていた。
「何泣いてるんだ?」
「泣いてなんかいません。」
言った傍からポロリと涙が頬を伝っていく。
ミニョは下唇を嚙みながらじっとテギョンを見ていた。
テギョンはミニョの涙に怯むと、はぁ~と大きくため息を漏らし、そのままミニョの手を引っ張っていくとソファーに座らせた。
「ミニョ、俺達ちゃんと話し合おう。」
そう言いテギョンもミニョの隣に腰を下ろす。摑んでいた手首を離すと指を絡ませるように手を繫ぎ、自分の思っていることを話すことにした。
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