『ミニョ・・・』
何処からかテギョンの声が聞こえる。
『ミニョ・・・いつまで寝てるんだ?』
― 何だか凄く眠くて・・・最近あまり眠れなかったから・・・
『俺はお前がアフリカへ行ってからずっと眠れないぞ。事故を起こしてるんじゃないかと心配で。お前は何故眠れないんだ?』
― 私?私は・・・私も何か色々と心配事があって・・・あれ?何だったかな?
『まあいい、さっさと起きろ。』
― はい、でも何だか身体が思うように動かなくて。
『しょうがない・・・ほら、手を貸してやる。』
差し出されたテギョンの手を摑むと優しい温もりが伝わってくる。
― オッパの手・・・温かい・・・手・・・腕・・・・・・オッパ怪我!
「あ、ミニョさん、気が付いた?よかった。」
ミニョが瞼を開けると心配そうに覗き込むハン・テギョンの顔が見えた。
「ミニョさん、倒れたの憶えてる?気を失ってたのはほんの僅かな時間だけど、大丈夫?」
― 倒れた・・・?私が?
「ちょうど巡回医療の医師が近くに来てるって。シスターメアリーを呼んで来るね。」
ハン・テギョンはそう言って握っていたミニョの手をそっと離し、急いで部屋を出て行った。
ミニョは長椅子に寝かされ毛布を掛けられている。
ゆっくりと起き上がると、まだ少しふらつく身体を両腕でギュッと抱きしめた。
「・・・手・・・オッパじゃなかったのね・・・」
先程まで握られていた手をじっと見る。温かいと思ったのはテギョンの手ではなかった。
腕を怪我したと聞いた。精密検査もすると聞いた。そんなにひどいのだろうか・・・
震える手で胸の星を握りしめる。
― どうしよう・・・心配でたまらない・・・もうダメ・・・
巡回医療の医師の話によると、軽い貧血、過労、睡眠不足、栄養不良による体力低下、それに加え、大きなストレスが原因だろうと言われた。とにかく休養が必要だ、と。
「何か心配事でもあるの?」
最近ミニョの様子がおかしいと感じていたシスターメアリーが優しく聞く。
「・・・オッパが・・・オッパが怪我をしたって聞いて・・・それで・・・。あと少しでボランティアも終わるっていうのに、私また皆さんに迷惑かけて・・・」
ミニョは目に涙を溜め膝に置いた手をギュッと握りしめる。シスターメアリーはその手を両手でそっと包み優しく微笑んだ。
「無償ボランティアは家族のことが優先されるわ。途中で帰ってもいいのよ・・・いいえ、帰りなさい。あなたはもう十分ここで皆さんの役に立ったわ。今度は韓国であなたに出来ることをするのよ。」
シスターメアリーの言葉が心に沁みる。
ネットの記事が気になって、テギョンの怪我が心配で・・・
不安で押しつぶされそうだった心が解放されていく。今度は韓国で自分に出来ることをすればいい・・・
「・・・ありがとうございます・・・」
ミニョの涙が頬を伝った。
「お兄ちゃん!」
『ミニョか?どうした何かあったのか?電話してくるなんて。』
「何かあったのはそっちでしょ・・・オッパが・・・オッパが怪我したって聞いて・・・」
『オッパ?テギョンヒョンのことか?何で怪我のこと知ってるんだ。』
「ボランティアの学生さん達がネットで見たって教えてくれたの。さっきオッパの携帯に電話したけど繋がらなくて・・・私の携帯も繋がらないの。オッパの怪我はどうなの?ひどいの?入院してるの?ねぇ、お兄ちゃん、黙ってないで教えて!」
あまりにも強く受話器を握りしめている為ミニョの手がブルブルと震えている。
『ミニョ、落ち着け、とりあえず、深呼吸しろ』
ミニョはミナムに言われた通り受話器を握りしめたまま、二度三度と深呼吸をした。
『ヒョンなら大丈夫だ。検査の為に一日入院しただけで今は合宿所にいる。怪我は・・・』
「お兄ちゃん、私、帰るから!」
『へ?』
「今から帰るから!」
『おい、予定じゃもう少し先のはずじゃあ・・・』
「飛行機のチケット取れたから帰る!」
『お、おい、ミニョ。』
「今すぐに帰るから!」
涙声になりながらひたすら「帰る」を繰り返すミニョ。
『ミニョ、判った・・・・・・。俺が空港まで迎えに行ってやるから。いいか、一人で合宿所に帰ってこないで、ちゃんと待ってろよ。』
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前回の記事にたくさんのコメントありがとうございました。
すっごく嬉しいです!
お待たせしました。(ん?待ってくれてる人いるよね?)
いよいよ・・・やっと?
再会は近い・・・
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