数日後、新しいボランティアが紹介された。
数人の男性と、数人の女性。その中の一人は韓国人の男性だった。
「はじめまして、ハン・テギョンです。」
スラッと背の高い男性がニコニコと笑いながら挨拶をした。
「いや~嬉しいな~、アフリカに来ていきなり韓国人に会えるなんて、よろしく。」
ハン・テギョンはミニョとその横にいたソユンとシヒョンの手を握るとブンブンと大げさに握手をする。
ソユンとシヒョンは目を点にし、がっくりと肩を落とすとプッと噴き出した。そのまま二人で顔を見合わせクスクスと笑い続ける。
「あー、やっぱり、皆同じ反応するんですよね。僕の名前間違って伝わってたんですね。A.N.JELLのファン・テギョンと名前が似てるでしょう。といっても僕、何年も海外で暮らしてるんで、A.N.JELLってよく知らないんですけどね。僕はファン・テギョンじゃなくてハン・テギョンです。」
目尻を下げ、申し訳なさそうにそう言うハン・テギョンに、ミニョも思わず噴き出した。そしてクスクスと笑い続ける。
ファン・テギョンではなくハン・テギョン・・・
今までテギョンに会えると思っていたミニョは、ここ数日仕事に身が入らずテギョンのことばかり考えていたことを反省した。
― そうよね、忙しいオッパが来られる訳ないよね。神様はどんな状況でも私がしっかりと仕事をできるかどうか試されたんでしょうか。
ため息をつきながらコンと自分の頭を叩いた。会えないと思うと急に悲しくなって、じんわりと涙が浮かんでくる。
ミニョは誰にも気づかれないようにこっそりと涙を拭った。
ハン・テギョンは三十歳で、建築のボランティアとして会社から休暇をもらい今回アフリカのこの施設へ来たという。一見気が弱そうに見えるが、学生時代アメフトをやっていたという身体は細身のわりにがっしりとしていて、Tシャツの袖から出ている二の腕は筋肉がその存在をアピールしていた。
「あの~、テギョンオッパって呼んでもいいですか?」
「あ、はい、いいですよ。」
ファン・テギョンではないが、目の前にいる人をテギョンオッパと呼べるということが嬉しいのか、ソユンとシヒョンは喜んでいる。
「えーっと、コ・ミニョさんでしたっけ。あなたもオッパでいいですよ。」
「いいえ、私はテギョンさんと呼ばせて頂きます。」
いくら同じテギョンという名前でも、とてもオッパとは呼べない。ミニョにとってオッパと呼べるのはファン・テギョン一人だけ。
そう思いながらも、このアフリカでテギョンという名前を口にすることができるだけでも嬉しくなってしまい、何となく顔が赤くなってしまう。
ハン・テギョンは三人の様子を見ながらニコニコと笑っていた。
『学校が休みに入ったせいでしょうか、最近は学生さんの短期ボランティアの方が多くなってきました。
オッパのファンだという人もいますよ。・・・私もその一人ですけど。
今日はとても吃驚することがありました。
オッパ、テギョンさんです。
新しくボランティアに来た人達の中に、テギョンという名前の人がいました。
ハン・テギョン。名前はオッパにそっくりです。
オッパより年上で、背も少しだけオッパより高そうです。学生時代にアメフトをやっていたそうで、腕を見せてもらいましたが凄い筋肉でした。
ボランティアスタッフは色んな人がいてとても楽しいですよ。
一生懸命働いて汗を流している姿は素敵ですね。ここにいる人達は皆さんとても輝いて見えます。
もうすぐカトリーヌさんもイギリスから戻ってくるそうです。また歌を教えてもらえるのが今から楽しみです。
雨季に入っているこちらでは毎日雨が降っていて思うように歌えません。お昼に施設の中で歌っているだけです。でも発声練習は毎日ちゃんとやってますよ。私の 『歌』 の方は大丈夫です、心配はいりません。
オッパは毎日お仕事で忙しいんでしょうね。夜はちゃんと眠れてますか?私は・・・ちょっと眠れない日がありました。その日は仕事中もずっとオッパのことを考えてしまって・・・会いたくて、会いたくて・・・
やっぱり私はダメですね。自分で決めてここに来たのに・・・これでは周りの人達に迷惑をかけてしまいます。もっとしっかりしなくては・・・
今も雨が降っていて少し肌寒いです。夜空に星は見えませんが、私の胸の星はいつでも輝いています。
この星を胸に抱いて今日も私は願います。
夢でオッパに逢えますように・・・おやすみなさい。』
* * * * * * *
あ・・・何か、石投げられそう・・・ごめんなさーい。
違うテギョンでした。
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