You're My Only Shinin' Star (63) アフリカで 2 | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「・・・・・・」


カトリーヌの言葉にテギョンとミナムが何も答えられないでいると、カトリーヌは戸惑いながらも話を続けた。


「・・・私も以前歌を歌っていたの・・・クラシックを・・・。でもある出来事があって・・・歌えなくなった。自分で納得のいく歌が歌えなくなった・・・。そんな状態がずっと続いて、もういっそのこと歌うのをきっぱり諦めようと思ってた。あちこち旅行に出かけて気を紛らわせて・・・

そんな時、アフリカの教会でミニョの歌を聴いたの。発声もなってない、息も続かない・・・でも声は気に入った。そして何より心が震えたの。もう一度歌いたいって、心の底から思った。

私にそんな風に思わせたミニョの歌が気になった。ミニョの歌に込める想いとは何なのかを知りたいと思っていたら、いつの間にか声をかけてた。

色々聞いたわ。以前修道院にいたと言っていた。その修道院での生活に何かヒントがあるのではと調べていたら、一ヶ月程空白の時間があったの。修道院にはいない、行く筈だったローマにも行ってない。

それと同時期に双子の兄がA.N.JELLというバンドに入ったということを知った。双子の兄の歌なら何かミニョの歌と繋がるかも知れないと、A.N.JELLの曲を聴いたわ。

・・・二つの 『言葉もなく』 。私には判った、一つはミニョが歌っているって。」


カトリーヌはそこまで一気に話すと、喉を潤す為紅茶の入ったカップに口をつける。


「ミニョにそのことを話したら慌てていたわ、誰にも言わないで下さいって。もし発覚すれば大変な事になる、バッシングが凄いだろう、A.N.JELLというバンドの存続自体が危ういかもしれない・・・。悩むミニョに私が言ったの、 『言葉もなく』 を歌ったミニョと、今のミニョの歌声が明らかに違っていれば、別人だと言い張れるんじゃないかと。・・・これがミニョにクラシックを教えた経緯よ。」


カトリーヌは残りの紅茶を飲み干すと、カップを持って立ち上がり新しい紅茶を淹れて戻ってくる。


「入れ替わりが発端なら、どうしてミニョは俺達に何も言わなかったんだ?相談してくれれば、俺だって力になれたのに・・・」


「それが嫌なんですって。いつも助けられてばかりだったから、自分で何とかしたいって。それに・・・入れ替わりが発端なら・・・」


「その原因を作った俺が責任を感じると思ったんでしょ、ミニョは。」


カトリーヌの言葉を途中でミナムが奪うように、ため息まじりで呟いた。


「そう、だから言わないで欲しいって。それにあなた達は有名人よ。どこにいても聞き耳を立てている人間がいると思った方がいいわ。私たちがしていることをあなた達に話して、もしもそれがどこかに漏れたら・・・。だからミニョが一曲でもちゃんと歌えるようになったら話すことにしましょうって約束したわ。」


新しい紅茶に口をつけるとゆっくりと飲みながらカトリーヌは次の二人からの言葉を待っていた。


「それから、ミニョとテギョン君の関係も公にならないように気をつけてね。ミニョがテギョン君の恋人だってことが判れば、ミニョのことを探ろうとする人が出てくるから・・・今は少しでも二人の関係がバレそうなことは極力避けてちょうだい。」


テギョンとミナムは昨日事務所に姿を現したキム記者を思い出す。


「聞きたいことはそれだけ?本当は黙ってる約束だったんだけど・・・ミニョが辛そうだって聞いて話しちゃったわ。」


クスリと笑うカトリーヌにテギョンは少し言い辛そうに言葉をかける。


「あの・・・カトリーヌさんがミニョと・・・友達以上を望んでるっていうのは・・・」


「ミニョと一緒に歌いたいわ。友達だけの関係じゃなく、それ以上の・・・仕事上のパートナーとして。」


「一緒に歌うって・・・ミニョにオペラでもやらせるつもりですか?」


「あら、クラシックってオペラだけじゃないでしょう?」


「・・・歌曲ですか。」


「そう、純粋に歌詞と旋律だけを堪能する演奏形式の方が、ミニョには合ってると思うの。まだミニョには話してないけど。」


カトリーヌの言葉にホッとしたのか、カップの中身を飲み干すとテギョンの頬が次第に緩んでくる。


「よかったねヒョン、ミニョをとられなくて。」


ミナムがニヤニヤ笑いながら声をかけるとテギョンは顔を赤くしそっぽを向いた。




カトリーヌの部屋に入って来た時の緊迫した雰囲気とはうって変わって和やかなものになり、不意にテギョンが気になっていたことを口にする。


「それにしてもカッチーニの 『アヴェ・マリア』 を二度聴いただけで、シューベルトに変えた方がいいと言うなんて・・・俺だったら両方聴いてみないと断言できないと思います。」


テギョンの思いもよらない話題にカトリーヌはクスクスと笑い出した。


「ああ、あれね・・・あれは、ちょっと違うのよ。ただ・・・気をつけた方がいいわよ。・・・落ちるから。」


「え?」


「あの時テギョン君はミニョの歌に驚いて、それどころじゃなかったみたいだけど・・・あの声と、あの表情・・・たいていの男は落ちちゃうんじゃない?アフリカでもそうだったし。」


          ○          ○          ○


「プッ・・・クスクス・・・」


「コ・ミナム・・・笑うな・・・」


「ヒョンが来る前にあの人と色々話してたけど、カトリーヌさんって面白い人だな・・・クスクス。」


「コ・ミナム笑うな。」


ホテルを出た二人はカトリーヌの最後の言葉を思い出していた。


『たいていの男は落ちちゃうんじゃない?アフリカでもそうだったし。』


その言葉を聞いた時のテギョンの引きつった顔を思いだし、ミナムはクスクス笑っている。


― ミニョ・・・一体アフリカで何をやってたんだか・・・


歌うミニョの姿を周りの男達がどんな目で見ていたかと思うと、思わずため息が出てしまうテギョン。


「ヒョン、俺今いいこと思いついたんだけど。」


ニヤニヤと笑いテギョンの顔を見るミナム。


「ダメだ、許さん。」


テギョンはミナムの顔を見ると厳しい顔をした。


「え~、面白そうなのに・・・」


「お前は・・・女のことでもめるのは嫌だと言っていただろう。」


「いや~、人が恋に落ちる瞬間っていうの一度見てみたいんだよね~。あ、でもダメか、二人共とっくにミニョに惚れてるし・・・じゃ、マ室長辺りで試してみるってのは・・・」


「絶対ダメだ!ミニョには歌わせない。俺以外の奴の前では、歌わせない!」


「ヒョン・・・その俺以外のってやつ、ミニョが泣けなかった時に懲りたんじゃないの?いい加減にその焼きもち何とかしなよ。」


「・・・何と言われようが、シヌとジェルミの前では絶対に歌わせない!」



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