You're My Only Shinin' Star (61) 言葉にして | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「お久しぶりです。」


事務所のロビーの物陰から出てきたのは、半年間全く姿を現さなかったキム記者だった。

四人は一斉にキム記者の方を振り向いた。


「何ですか、取材でしたらマ室長を通してください。スケジュールが詰まっていますのでいつになるかは判りませんが。」


テギョンは口の片端を上げキム記者を軽く睨むと、階段を上っていく。


「コ・ミニョさんのことなんですが・・・」


テギョンの背中を引き止めるように、わざと大きな声でミニョの名前を出したキム記者にテギョンの足が止まる。


「俺の妹がどうかしましたか?」


ミナムがニコニコと笑いながら持っていたペットボトルのジュースをぐいっと飲んだ。


「いえ、アフリカから帰って来てるって耳にしたんで、ちょっと。」


「今頃になって、あの時できなかったコ・ミナムとコ・ミニョの取材ですか?」


シヌがいつものように口元に微笑みを浮かべながらキム記者を見た。


「ハハハ、そうですね、今頃になって、ですか。私も好きで姿を消してた訳じゃないんですよ。あの空港の一件の後、すぐに海外へ行きましてね・・・まあ、俗にいう飛ばされたっていうやつですが・・・」


「そりゃあんたが悪いんだろ。俺のこと付け回した挙句、あんなとこで服脱がせるんだから。」


ミナムがフンと鼻で笑いながらキム記者を見る。


「ファン・テギョンさんのコンサートでの告白は、ぜひ取材したかったんですが韓国にいなかったので・・・残念です。」


「それで今頃来たんですか?あの告白が本当なのかという取材ですか?」


「いえいえ、あなた方が誰と付き合ってるとか、誰と別れたとか、今の私にはそんなことはどうでもいいんですよ。もっと面白いネタを見つけたんで・・・」


意味あり気にニヤリと笑うとキム記者はドアの方へ向かって歩き出し、途中で足を止めた。


「そうそう、コ・ミナムさんのソロシングル 『言葉もなく』 ですが、発売してすぐにアレンジを変えて出し直してますよね。あれは何故ですか?空港で私が服を脱がせたコ・ミナムさんは男でしたが、最初に出した 『言葉もなく』 を歌ってたのは一体誰なんでしょうね。」


四人の顔に緊張が走る。

キム記者は振り返り眼鏡を触りながらニヤニヤ笑っている。


「私は韓国に帰ってきましたから、時間はいくらでもあります。当分海外へ行く予定はありませんし、行きたくても会社は金を出してくれないでしょう・・・。まあ、ゆっくり、じっくり調べさせてもらいます。今日はご挨拶に伺っただけですから・・・それでは。」


もう一度四人の顔を順番にゆっくりと見ると、ニヤニヤ笑いを顔にうかべたまま、キム記者は建物の外へと出て行った。

キム記者の後ろ姿を見ながら暫くの間四人は動けずにその場にいた。


「どうするテギョンヒョン、あれがミニョだってバレたら・・・」


爪を嚙みながらオロオロと動き出すジェルミ。


「くそっ、何で今頃・・・」


ミナムはキム記者の消えていったドアを睨みつける。


「とうとうきたか・・・」


半年前テギョンのコンサートでの告白について、翌朝ワイドショーに出演した後、車の中でシヌとテギョンが一度だけ交わした会話。

テギョンの恋人のことよりも、問題なのはコ・ミナムの入れ替わり・・・

まさか歌に目をつけてくるとは・・・
シヌは考え込むように顎に指を当てると、階段にいるテギョンを見た。


「・・・・・・」


テギョンは無言のままその場で目を瞑っていたが軽く下唇を噛むと、ゆっくりと瞼を開け階段を上って行った。


          ○          ○          ○


「あれ、お兄ちゃん一人なの?」


夜、ミニョがキッチンの椅子に座り、頬杖をついているとミナムが手にアイスを提げて帰って来た。


「ああ、シヌヒョンもジェルミも遅くなる。・・・テギョンヒョンは・・・判らない。」


ミナムはミニョの目の前にアイスを置くと、ミニョの座っているところから間を一つ開けた椅子に座り、自分のアイスを食べ出した。


「俺・・・余計なこと・・・したかな・・・」


半分ほどアイスを食べたミナムが眉根を寄せてポツリと呟いた。


「・・・お兄ちゃん…足りないよ・・・」


アイスを見つめたままミニョも呟く。


「ん?」


「・・・スプーンが足りない。」


ミナムは少し甘えたようにミナムを見つめるミニョを見てクスクス笑い出し、ミニョにスプーンを渡した。


「ありがとう。」


微笑むミニョにミナムの笑顔も広がる。

そのままお互いに言葉を交わすこともなくアイスを食べ続け、食べ終えたミナムが部屋へ行く時ミニョの後ろ姿に声をかけた。


「ミニョ、俺達って生まれてからずっと一緒で、こうやってお互いに何も聞かなくても、何も言わなくても、何となく相手のことが判るけど、ミニョとテギョンヒョンって出会ってそんなに経ってないだろ。アフリカで何があったのか、俺に話せないことがあっても、俺は不安にはならない。だけどヒョンは違う、不安なんだ。それに焼きもち妬きだろ。ミニョがアフリカでずっとカトリーヌさんと一緒だったから焼きもち妬いてる。」


「えっ、でもカトリーヌさんは女の人でしょ。」


「そんなのヒョンには関係ないよ。それにあの人ちょっと癖のある言い方するから、余計にヒョンの不安を煽っちゃってるし。・・・ヒョンに判って欲しいことがあるなら、ちゃんと言葉にしないとダメだ。心の中だけで想ってるだけじゃ何も伝わらない。黙ってたって後悔するだけだ。自分から話せないことをどうか察して欲しいなんて虫がよすぎる。ヒョンの気持ちも考えろ。ちゃんと言葉にして、本当のことを、本当の想いを伝えなくちゃ。・・・・・・俺が言いたいのはそれだけ・・・ちゃんと寝ろよ。」


ミナムは顔を真っ赤にしながら逃げるように足早に階段を上って行った。


「お兄ちゃん・・・ありがとう。」


ミニョは振り返ることなくアイスをじっと見つめたまま、ミナムに言われたことを考えていた。



宜しければ1クリックお願いします

  更新の励みになります

         ↓

   にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
    にほんブログ村



  ペタしてね    読者登録してね