You're My Only Shinin' Star (59) 兄貴として | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

「あ、いえ・・・喧嘩とか・・・そんなんじゃなくて・・・」


ポタポタッ・・・


ミニョの瞳から涙が零れる。


「えーっと、なんて言ったらいいんでしょう・・・」


ポタポタポタッ・・・


次々と涙が溢れてくる。


「あれ?変ですね・・・やだ・・・見ないで下さい・・・何で私・・・涙が・・・」


ふわっ。


ミニョの身体が引き寄せられ、優しく包まれる。


シヌは座ったままミニョを軽く抱きしめると、ミニョの顔を自分の肩につけるように頭を押さえた。


「は、離してください・・・」


シヌの胸を押し、その腕から逃れようともがく。


「ミナムが俺の弟なら、ミナムと双子のミニョも俺の妹だ。これは兄貴が妹を慰めている図だ。と言っても長男がいない時限定だな。焼きもち妬きのテギョンがいたらとてもこんなことできない。・・・それにこうしていれば、ミニョの涙は俺には見えない。」


シヌはミニョの耳元で優しく囁くとそっと髪を撫でた。


― やっぱりこれは、やめられそうにないな・・・でも、兄としてなら許されるよな・・・


「さっきも言っただろ、俺は相手を見てるって。今朝顔を合わせた時から、テギョンと何かあっただろうということは判ってた。」


「うっ・・・くっ・・・」


「今ここには俺とミニョしかいないから、遠慮しないで思いっ切り泣けばいい。」


「うっ・・・でも私・・・他の人の前では・・・泣かないって・・・テギョンさんと・・・」


ミニョは言葉を詰まらせながらも、シヌから身体を離そうとする。


「は~、何それテギョンが言ったの?ったくしょうがない奴だな。」


― 気持ちは判るけどな。こんなミニョを見たら放っておけない・・・


シヌはため息をつくとミニョを抱きしめていた腕を離し、ミニョにクルリと背を向けた。


「ほら、俺の前で泣けないなら、俺の後ろで泣けばいい。優しい兄貴が背中を貸してやるんだ。ありがたく使え。」


シヌの思いもよらない行動と言葉に、ミニョは泣きながらも少し笑った。


「シヌさん・・・ヒック・・・それ・・・クスッ・・・おもしろいです・・・うっ・・・」


シヌは少し振り返り、ミニョの手を摑み自分の背中へと引っ張る。そのはずみでミニョの両手はシヌの背中へ・・・。


「・・・うっ・・・うっく・・・」


ミニョはシヌの背中に両手を添えると少しだけ額をつけて泣いた。




シヌはそのままの姿勢で、ミニョの手と額の温もりを感じていたが、ミニョのおえつが小さくなり、背中に重みを感じるようになると、そっと後ろを振り向いた。


「寝ちゃったのか・・・」


崩れ落ちそうになるミニョの身体を、まるで壊れ物を扱うようにそっと抱き上げる。


「テギョンの為に泣いてばかりだな・・・」


ゆっくりと階段を上っていく。


「そんなにテギョンが好きか?」


ぬいぐるみ部屋のドアを開け、そっとミニョをベッドへ下ろす。


「・・・俺じゃ・・・ダメ・・・か?」


眠るミニョの唇をそっと指でなぞる。

その手をぐっと握りしめると、自分の想いを心の奥に閉じ込めるように、一度大きく息を吸う。

ゆっくりと覗き込むようにミニョの顔に近づくと、髪の毛にそっと手を触れた。


「はぁ、兄貴ってのも辛いな・・・」


シヌは髪の毛に置いた手でくしゃくしゃっと撫でると部屋を出て行った。




「あれ?私・・・」


ミニョが目を覚ましたのは午後を少し過ぎた頃だった。

下へ行くとシヌの姿はなく、キッチンのテーブルの上に一人分の食事とメモが置いてあった。


『俺は仕事に行くから、一人でもちゃんと食べるように。長男は俺が叱っておいてやる ―次男より―』


ミニョはシヌの心遣いを嬉しく思いながら昼食を食べた。




「とりあえず、今の私に出来ることをしなくちゃ・・・」


起きてしまったことをいつまでも嘆いていても仕方ない。ネルソンに歌を聴いて欲しいという想いは変わらない。

出来ることを一歩ずつ進めていくしかない。

ミニョは練習室へ入ると何度か発声練習をし、シューベルトの 『アヴェ・マリア』 を歌うことにした。

いつものように星のネックレスを握る為、手を胸元へと運ぶ。そして手の平に星以外の丸い物を感じた途端、ミニョの瞳から涙が零れ落ちた。

胸が苦しい。息が詰まって、思うように声が出ない。

服の中からネックレスを取り出す。

部屋の照明を反射してキラキラと輝くテギョンから貰った星と、ミニョが贈った月。

涙と一緒にテギョンへの想いが溢れ出す。


― 私はアフリカでもずっとテギョンさん(星)と一緒だったのに、テギョンさんは私(月)を置いて行ってしまったんですね。



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