「何をやってるんだ俺は!」
車のハンドルを両手で叩きつけるテギョン。
ミニョの歌を聴いた時、自分の知らないミニョを見ている様な気がした。
高く澄み、艶やかで伸びのある声は以前のミニョとは違っていた。
孤児院で、教会で・・・ネルソンの為に歌っているだけだと思っていた。
でも違う。あの声はどう聴いてもプロの声、プロを目指している者の声にしか聴こえない。
ミニョがアフリカへ戻る・・・。ネルソンに聴いてもらいたいというミニョの想いにテギョンは賛成した。それが傷ついたミニョ自身の心を救うと思ったから、反対はしなかった。
自分の傍にいて欲しいという想いをぐっと堪え、笑って送り出してやるつもりだった。それなのに・・・
自分の知らないうちにカトリーヌと二人で何かをしようとしているミニョ。
自分には何の相談もなく、プロになろうとしているかもしれないミニョのことを思うと腹が立った。
ミニョにとって自分はその程度の存在なのか?
ジョギング?
アフリカで毎日走っていると、テギョンと出かける時身体を動かすことが楽しいと笑顔で言っていたミニョ。
それがトレーニングとしてカトリーヌと一緒にしていたことの延長線上のことだと思うと腹が立つ。
自分はミニョにとって一体何なのか?
ミニョがアフリカへ行っている間、見えない夜空を眺めては月だけを見つめ続けてきた。
帰って来たミニョはひどく傷ついていて、見ている自分ですら辛い状態だった。
優しくした。
ミニョの涙を優しく拭い抱きしめた。
自分の腕の中で安心したように眠るミニョがとても愛おしく思えた。
自分だけのミニョ。
自分の傍でだけ安心して泣き、眠るミニョ。それなのに・・・
ミニョの心の中にはカトリーヌがいる。
彼女への信頼感が今日の歌を聴いてはっきりと判った。
やっと手に入れた温もりを奪われたような気がした。
自分には何の相談もなくトレーニングを受けているであろうミニョを見て、腹が立った。
『何をしようとしているんだ』 という問いに答えられないミニョ。
― 俺の存在はあいつにとって何なんだ?
カトリーヌに対する嫉妬、自分だけのミニョでいて欲しいという激しい想いから強引に唇を奪った。
ミニョを誰にも渡したくない・・・・・・
自分の胸を叩くミニョの手。
唇を離して最初に目に入ったのはミニョの涙。
― 俺が泣かせた。
ネルソンの時のテギョンを見て流した涙とは違う。ミニョの瞳に一瞬テギョンに対する恐怖が見えた。
― 俺がミニョを怯えさせている・・・
そのことがテギョンに辛くのしかかる。
何にも言えずに逃げ出してしまった自分。
― 俺は一体何をしているんだ?
車を走らせる。
― 俺は一体何をやっているんだ・・・・・・
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