合宿所に帰って来たテギョンとミニョ。テギョンは冷蔵庫から青い瓶を取出し、ミニョはリビングの方をじっと見ていた。
「どうしたんだミニョ。」
誰もいないリビングを見つめているミニョを不思議に思い、テギョンが声をかける。
「テギョンさん、私今日は下でシャワー浴びますから。」
ミニョはそう言うと、テギョンを二階へ行くように促した。
テギョンの姿が階段から完全に消えたのを確認したミニョはキッチンで何やらごそごそと動き出す。
暫くすると甘い香りが漂ってきた。
「はい、お兄ちゃん、ここに置いておくから。」
ミニョはそう言うと、誰もいないリビングのテーブルに温かいココアの入ったカップを置いた。
暫くするとリビングの隅に置いてある大きな丸いビーズクッションがもぞもぞと動き出し、その後ろからミナムが姿を現した。
「何で判ったんだ?」
ミナムの小さな呟き。
「うん、何となく。そのクッションいつもそんなとこに置いてないし、お兄ちゃん昔から叱られたり嫌なことがあったりするとそうやって隠れてたでしょ。それに・・・ちょっとだけ足が見えてた。」
ミナムは養護施設にいた頃嫌なことがあると隠れる癖があった。でも完全には身体を隠さず、どこか一部が見えている。それは自分を見つけて欲しいと言っているように思えた。いつも見つけるのはミニョの役目。そしてそっと温かいココアを作る。
「ミニョ、ヒョンと出かけてたのか?」
「うん・・・ちょっとジョギングに・・・。あ、私下でシャワー浴びるから。」
ミニョはそう言いながら、着替えを取りに部屋へ向かった。
リビングに一人残ったミナムはミニョの作ってくれたココアのカップをそっと両手で包み込む。
「あったかいな。」
ミニョは何も聞かない。いつもココアを作って姿を消す。ミナムを気遣い、あえて何も聞かない。ミナムの性格を一番よく判っているから。
ココアの温かさがそのままミニョの温かさと重なる。
ミナムはココアを飲みながらミニョの温かさを感じていた。
○ ○ ○
テギョンが二階から下りて来るとミナムがリビングのソファーに座っていた。
「シヌとジェルミはもう出かけたのか?」
「ああ、今日は二人とも早いからね。マ室長が迎えに来てさっき出てったよ、ミジャおばさんも一緒に乗ってった。」
テギョンは地下へ下りる階段を気にしているようだ。
「ミニョならシャワーしに下りてったままだよ。」
ミナムはそわそわした様子のテギョンを一瞥するとフッと息を吐いた。
「ヒョン、ミニョは昨日もヒョンの部屋だったの?」
「いや、昨日はぬいぐるみ部屋だが。」
「・・・じゃあ、夜這いでもしに行った?」
「なっ・・・」
テギョンはミナムの言葉に顔を赤くし言葉を詰まらせる。
「昨日、ヒョンとミニョが一緒だったってことは判ってる。ついでに言うと、今までずっと一緒に寝てたってこと、シヌヒョンもジェルミも知ってる。」
「・・・・・・」
ミナムはテギョンの驚いた顔を見てため息をついた。
「ハァ~、やっぱり気づいてなかったんだ。そうだよね、あれだけ深くフード被ってりゃ周りなんて見えないだろうね。ていうか、ミニョしか見てないでしょ、ヒョン。ヒョンとミニョが喧嘩しながら下りて来た時、俺達キッチンで朝飯食ってたの。・・・で?結局夜這い?そりゃ元々俺がヒョンの部屋にミニョを寝かせるように仕向けたけど、さすがにそれはちょっと、ね・・・」
テギョンはソファーに身体を沈め、顔を押さえながらため息をつく。
「・・・泣いてるんだ・・・」
「ん?」
「・・・ミニョ、夜中に眠りながら、泣いてる。俺の部屋にいた時もそうだった。だから昨夜も気になって・・・」
テギョンはぬいぐるみ部屋へ入った時、そういう気持ちがなかった訳ではないが、ミニョの辛そうな寝顔を見た時ただ傍にいてやりたいという気持ちしかなくなった。
「そのことミニョは知ってるの?」
「いや、泣いていることは言ってない。ただ俺が・・・一人だと眠れないと言っただけだ。」
恥かしそうに顔を背けるテギョン。
「ぷっ・・・」
テギョンの言葉にミナムが噴き出した。
「一人じゃ眠れない?クックックッ・・・そうだね、それがいい、そうしておこう。」
ミナムは肩を揺らして笑いながら一人で納得したように何度も頷く。
クスクスと笑い続けるミナムにテギョンが顔を赤くしていると、ミニョが階段を上ってリビングへきた。
二人の様子にミニョが首を傾げているとミナムがミニョに大きな声で言う。
「ミニョ、今夜からテギョンヒョンの部屋で一緒に寝ろ。」
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