ミナムの言葉に目を丸くするミニョ。
「お兄ちゃん・・・今何て・・・」
「今夜からテギョンヒョンの部屋で寝ろ。お前がテギョンヒョンと一緒に寝てたのは知ってる。さっき二人で喧嘩しながら外へ出て行った時、キッチンで朝飯食ってた。シヌヒョンもジェルミも知ってる。」
ミニョが顔を赤くし、口元を手で押さえてテギョンを見ると、テギョンは少し困ったようにミニョを見ていた。
「テギョンヒョンがどうしてお前の部屋で寝てたのか知ってるか?」
何も言わず、コクンと頷くミニョ。一人では眠れないという言葉を飲み込む。
「テギョンヒョンだっていつまでも合宿所の中にいる訳にはいかない。そろそろライブの練習も始まる。テレビ出演、CM撮影、雑誌の取材、外での仕事だ。寝不足のまま仕事をさせる訳にはいかないだろう?これはヒョンの為、A.N.JELLの為だ。」
多少大げさとも思えるミナムの言葉だが、ミニョは暫く考えた後黙って頷いた。
「・・・ミナム、お前めちゃくちゃだな。」
テギョンが呆れた様にいう。
「いいんだよ、二人でちゃんと納得してれば、今朝みたいなことはないだろ。・・・あんなのは・・・もうご免だ・・・」
ミナムはシヌとジェルミの前でつい感情的になってしまったことに苦い顔をする。
言わなくてもいいことを・・・言うつもりはなかったことを口走ってしまったことを悔いていた。
「ミニョ、俺はちょっとミナムと話があるから暫く上へ行っていてくれないか。」
テギョンの言葉にミニョは頷くと階段を上って行った。
○ ○ ○
「ミニョは本当に納得したのか?今朝俺が一緒のベッドにいたって、さっきまで怒ってたぞ、本人は違うと言っているが。」
「誰かの為に、てのに弱いからね、ミニョは。俺の為に男のフリしてA.N.JELLに入るくらいだから。一度やめた俺のフリもマ室長に頼まれてまたやっちゃうし。今回はヒョンの為だね。」
テーブルを挟み、ミナムの向かい側に座っているテギョンがミナムをじっと見る。
「ミナム・・・俺はお前の考えていることがよく判らない。何故お前がそこまでする?俺の為か?ミニョの為か?」
「・・・いや、俺の為だ。」
ミナムはソファーに身体を深く沈み込ませるとテギョンの方は見ず、視線を少し落としテーブルを見ながら話しだした。
「俺はメンバー皆が私生活まで仲良くした方がいいなんて思ってない。ただ諍いが起きて欲しくないだけ。女のことで争ってバンドが続けていけないような状態にはなって欲しくない。だからヒョンとミニョには誰にも何も言わせないように、仲のいいとこ見せつけて欲しい。煮え切らない奴にとどめを刺して欲しい。それでもダメなら・・・しょうがない。それ以上は俺は手を出さないよ。俺はバンドが解散なんてことにならないように祈ってるだけだ。」
最初は俯き真面目に話していたが、最後には顔を上げ少しおどけたように胸の前で十字をきるミナム。
煮え切らない奴・・・あえて名前は言わないが、誰のことかはテギョンにも判る。
「俺は練習生時代にかなりそういうグループ見てきてるから。契約内容、音楽の解釈の違い、色々あるけど、女が絡むと音が変わる。そうなるとバンド自体の存続が難しい。俺はそれを避けたいだけ。誰の為でもない、俺の為、俺の居場所の為に動いてるだけ。」
口元に優しい笑みを浮かべるミナムの顔は、数日前テギョンの前で見せた顔と同じだった。
「そろそろ準備しなくちゃ、マ室長が迎えに来る。」
ミナムはソファーから立ち上がり階段へと向かった。
「ミナム本当にいいのか、ミニョが俺の部屋で寝ても・・・」
「前にも言っただろ、ミニョはヒョンの傍が落ち着くって。」
ミナムは階段を上る途中で足を止め、クルリと振り返る。
「あ、そうだ、ミニョがカトリックだってのは知ってるよね。カトリックって結婚前の性的交渉を禁じてるって知ってた?まあ、どれだけの人がそれを守ってるか知らないけど、仮にもミニョはシスターになろうとしてたんだからね~。ヒョン、俺の言いたいこと、判るよね?」
いつものニヤニヤした笑いを顔に浮かべるとミナムは階段を上って行った。
「あいつは一体俺にどうしろって言うんだ?」
大きなため息をつき、複雑な気分のままぬいぐるみ部屋のドアをノックすると、中から苦しそうな 『はい』 という返事と小さな唸り声が聞こえる。
「ミニョ、どうした!」
テギョンが慌ててドアを開けると、中には床にうつ伏せに倒れているミニョの姿が・・・
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