番外編です。本編とは関係ありません。
時間の流れとしては、本編のかなり後の話になります。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『キスは好きですか?』
最近よく見かける口紅のCM。
赤い口紅をひいた女性の艶やかな唇に深くキスをする男性。
離れた唇にそっと指を触れると女性は頬を染め、恥ずかしそうに俯く。
その様子に男性が微笑むと、パッと顔を上げた女性が男性の肩に手を置き唇を重ねる。
スローモーションのようにゆっくりと離れる二つの唇。女性の唇は色鮮やかなまま。
二人は見つめ合い優しく微笑みあう。
『キスは好きですか?』
☆ ☆ ☆
「また見てるのか?」
合宿所のリビングでソファーに座りテレビを見ているミニョにテギョンが声をかけた。
「最近よく見かけるんですよね、このCM。街にも駅にもポスターがたくさん貼ってあって。」
チャンネルをかえると、またそこでも同じCMをやっていた。じっと見つめるミニョ。
「何だ、あの口紅が欲しいのか?」
テギョンが冷蔵庫から出した青い瓶に口をつけながらミニョに聞く。
「いいえ。ただ何か気になるんです。何かを私に訴えているような気がして・・・」
ミニョが画面をじっと見つめながら首を傾げる。
「オッパ・・・」
「ん?」
「・・・キスは好きですか?」
「ぶーっ。」
飲んでいた水を噴き出すテギョン。
「ゴホッ、ゴホッ・・・何だいきなり・・・」
「いえ、CMで言っていたので。・・・キスは好きですか?」
「あ、ああ、キスは好きだ。・・・だが、どちらかと言うと、キスより後の方が好きなんだが・・・・・・」
突然のミニョの質問に戸惑いながらも、素直に自分の気持ちを言ってしまうテギョン。
テギョンがミニョの顔を見ると、何かを考えるようにしきりに首を傾げていた。
「ミニョ、俺は今から仕事に行くがお前はどうする。」
「あ、はい、私も帰ります。今日は遅くなるんですか?」
「いやそうでもない、俺一人だけ別だ。八時頃には終わると思うが。」
「じゃあ、ご飯、家で食べませんか?私作って待ってますから。」
「判った、直接そっちに行こう。」
テギョンは事務所に向かい、ミニョはマンションへ帰って行った。
ピンポーン。
仕事が終わり、ミニョの住むマンションへ来たテギョン。
夜ミニョがテギョンを誘うことは珍しい。しかも自分のマンションに。
テギョンは内心期待しながらも、ミニョのことだから、何か大きなボケがあるのではと、少し警戒している。
「どうぞ、ご飯の用意できてますよ。」
テギョンが中へ入るとテーブルには料理が並んでいる。その中の一品に思わず目が点になるテギョン。
まさか、あの魚は・・・
「オッパ、残念ながら、キス(鱚)は出世魚ではありません。ですから鱚の後はありませんでした。」
真面目な顔で告げるミニョ。
キスは好きですか?・・・鱚は好きですか?
「・・・ハ、ハ、ハ・・・・・・ハァ~」
笑うしかないテギョン。やっぱり・・・ミニョは、ミニョだ。
ガックリと肩を落とし目を瞑って大きなため息をついたテギョンの肩が不意に重くなる。
慌てて目を開けると、目の前にはミニョの顔が・・・
「・・・んっ・・・」
ゆっくりと離れる唇。
ミニョはテギョンの肩に置いていた手を離すと、テギョンの胸に額をつけた。
「魚は冗談です。・・・オッパ、キスは好きですか?」
テギョンは満面の笑みでミニョの腰を抱き寄せる。
「ああ、キスは好きだ。・・・だがどちらかと言うと、キスの後の方が好きなんだが・・・・・・」
ミニョは少し困ったように微笑み、テギョンはゆっくりと顔を近づける。
そっと瞳を閉じるミニョ。
そして・・・・・・
* * * * * * *
「キスは好き?」というのをミニョなら「鱚は好き?」と上手くボケてくれるかなと思いついたお話です。
でもそのままではテギョンが可哀そうかな・・・と、こういうラストになりました。
番外編を通して本編後の生活が少し見えてきたでしょうか?
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