You're My Only Shinin' Star (33) ジョギング | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

上下白のジャージ姿のミニョと、黒いタンクトップに白いパーカーとクォーターパンツ姿のテギョン。


「手紙にも書いてあったが、アフリカでは毎日走ってるのか?」


「はい、最近は毎日走ってました。いいですね、身体を動かすって。何だか走るの癖になっちゃいました。」


ミナムの話によるとミニョはスポーツは苦手らしいが、鉄棒にぶら下がって耐えることは得意だと言っていたミニョには、ジョギングはピッタリだとも思える。

ミニョはシューズの紐をキュッと締めると、肩より少し伸びた髪を後ろで束ねた。


「念の為だ、これを被っておけ。」


テギョンが自分の黒いキャップを被せる。


「ありがとうございます。でも、テギョンさんは?」


テギョンのキャップを被りニッコリ笑うミニョ。

今まで肩にかかっていた髪を後ろで束ねた為、ミニョの首筋がはっきりと見える。初めて見るミニョの姿に思わずテギョンの顔が赤くなった。


「俺にはコレがある。」


そう言って、赤くなった顔を隠すかのようにパーカーのフードをサッと被った。

ミニョの少し日焼けしたうなじを見ただけで、心拍数が上がってしまったテギョン。

立ち上がると心臓を落ち着かせようと、何度も深呼吸をした。


「なるほど、走る前にも呼吸を整える為に深呼吸をするんですね、参考になります。」


何を思ったのかミニョもテギョンのまねをして、立ち上がると深呼吸をする。

ミニョの行動に思わずあっけにとられたテギョンだったが、二人で並んで深呼吸を繰り返し、柔軟でしっかりと身体をほぐす。


「行くぞ。」


首にタオルをかけると、明るくなり始めた街へと二人は足を踏み出した。


          ○          ○          ○


いつものテギョンのジョギングと比べると、だいぶゆっくりなミニョのペースに合わせ、人通りの少ない道を二人で走る。

横に並んで走るミニョに目をやると、ミニョは時々キョロキョロと辺りを見ながら走っていた。

暫く走ると急にミニョのペースが落ちてきた。顔を見るとかなり辛そうだ。

テギョンは今まで忘れていたある事に気づくと、ミニョを休ませる為に公園に寄った。

ミニョをベンチに座らせ、水を買ってきたテギョン。


「ハァ、ハァ・・・すいません、テギョンさん・・・いつもは、もうちょっと・・・走れるんですけど。」


大粒の汗が真っ赤になったミニョの顔から滴る。

ミニョはテギョンから受け取ったペットボトルに口をつけた。


「すまない、ミニョの体力がかなり落ちているとカトリーヌさんから聞いていたのに。」


一週間程あまり食べず、ほとんど眠っていないと聞かされていたのに、ミニョが傍にいるのが嬉しくて、ミニョと一緒にいられるのが嬉しくて、つい誘われるがままジョギングに出かけてしまった自分を責めるテギョン。


「え?カトリーヌさん?・・・あーっ、私カトリーヌさんに連絡するの、すっかり忘れてました。・・・あれ?今日って何日ですか?」


指折り数えるミニョ。帰国してから眠っていることが多く、日にちがあやふやになっている。


「帰国して今日で四日目だ。カトリーヌさんには昨日俺から連絡しておいた。ずいぶん心配していたみたいだが、昨日の電話で安心しただろう。何か忙しいみたいで暫く逢えないから、ミニョをよろしくと頼まれた。」


ミニョの横に腰を下ろし、首に巻いたタオルで汗を拭く。テギョンは公園の中を見回すと、滑り台のついた木製の大きな遊具に目をとめた。


「憶えているか?この場所を。」


テギョンが懐かしいような、辛いような複雑な表情でミニョに聞く。

ミニョは走りながら辺りを気にしていた。どこかで見たことがあるような景色。ただ以前通った時は夜で、しかも一度きりだった為、思い出せなかった。それがこの公園を見た時にはっきりと思い出した。

ここは以前二人でメンコを飛ばした公園。つまりテギョンが誕生日に 『産まなければよかった』 と、モ・ファランに拒絶された時に来た場所。

二人で過ごした楽しい場所ではあったが、ここまで来るに至った要因を思うと・・・。ミニョは胸が苦しかった。


「・・・・・・はい、ここで一緒にメンコを飛ばしました。」


俯き、戸惑いがちに返される言葉。

テギョンはそんなミニョの様子に自分のことを心配してくれているのであろうと思い、膝の上にあるミニョの右手をそっと包み込むように優しく握った。


「俺ならもう大丈夫だから。」


ミニョを気遣っての台詞。


「まだ・・・なかなか・・・母さんとは呼べないがな・・・」


モ・ファランの話をする時無意識に身体が強張るテギョン。長い間傷つけられ続けた心は簡単には癒されない。緊張し冷たくなった手を今度はミニョの手が優しく包む。


「あの時のメンコ、まだコ・ミナムのはありませんでしたね。今はあるんでしょうか。」


わざと明るい声でミニョが言う。


「ああ、ちゃんとあるぞ、見せてやりたいが・・・この時間では、まだあの店は開いてないだろうな。」


朝日が昇って間もない街は、店はおろか、車も人通りもあまりなかった。


「そういえば二人で買い物をしたのはあのお店だけですね。」


「買い物か・・・よし、コンビニだ、水を買いに行こう。お前はもう少し水分を採った方がいい。」


テギョンの顔に笑みが戻る。


「お水ならさっきテギョンさんが買ってきて下さいました。」


ミニョが飲みかけのペットボトルを見せると、テギョンはそれを奪い取り一気に飲み干した。


「ほら、もう無くなった。今日はこのまま合宿所まで歩いて帰るが、時間がかかるからな。水分補給が必要だ。買いに行くぞ。」


テギョンは片方の口の端を上げて笑うとミニョの右手を摑み、元来た道を歩き出した。




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