ミニョのボランティアは三ヶ月以上は、三ヶ月ごとに二週間の休暇が出る。ミニョは最初の休暇は使わずに、六ヶ月で帰って来る予定だった。
しかしミニョが世話をしているネルソンは先天性の病気の為、時々具合が悪くなることがある。すぐにどうこうという訳ではないが、その子のことが心配で、ボランティアの延長を申請した。とりあえず、二週間韓国へ一時帰国後、またアフリカへ戻るつもりで手紙を書いた。
「問題は、ミニョが手紙を出した一週間後に、その子が死んだということだ。」
「死んだ!?」
「急に倒れて、医者が来た時には意識がなく、そのまま二日後に息を引き取ったそうだ。」
「・・・ミニョは?」
「子供が倒れたのは日曜日で、ミニョはバイト先で連絡を受け、孤児院にかけつけ、そのままその子が息を引き取るまで、ずっと傍にいたらしい。」
今まで誰にも馴染めず、初めてミニョに心を開いたネルソン。テギョンへの手紙にはいつもネルソンのことが書いてあった。その内容は、相手が子供だと判っていてもつい嫉妬してしまう程、あまりにも楽しそうに、嬉しそうに書かれていた。
どれ程辛い思いをしただろうか。テギョンはミニョが受けた衝撃を想像すると胸が苦しくなった。
「あいつのことだ、かなり泣いたんだろうな。」
母親の死を知った時、テギョンの肩にもたれて泣いていたミニョ。
今度はその涙をその場にいて受け止めてやれなかった事がテギョンには辛かった。
「いやそれが泣いてないらしい。俺には信じられない、あの泣き虫が・・・。友達が怪我をしたって泣くし、俺が怪我した時も大泣きしてたのに。」
ミナムは左手の甲を右の手の平でそっと包んだ。
「泣かずに普段通りに振舞おうとしているその姿が、かえって痛々しいってシスターメアリーが言ってた。ミニョが受けた精神的ダメージはかなりのものだと思うが・・・」
テギョンにも信じられなかった。テギョンの知っているミニョはよく泣いていた。
― 泣くだけでも少しは楽になれるのに・・・涙が出ないほど辛いのか?
ミニョはネルソンが亡くなった後も、ボランティアへ行っていた。
子供の世話ではなく、施設内の雑用を片っ端からやっている。昼食の後は、外で膝を抱えてぼんやりと空を眺める。皆に歌ってと言われると、「ごめんなさい、歌えなくなっちゃったみたい。」と悲しげに笑い、また空を眺める。
「元々六ヶ月だったボランティアを子供の為に延長したんだ。もうその子がいない以上、ミニョがアフリカにいる理由は無くなった。だからシスターメアリーは延長は取り消して、韓国へ帰るように勧めたんだけどそれをカトリーヌって人が止めたらしい。もう一度アフリカへ戻ってくるべきだって。でも最終的にもう一度アフリカへ戻ると決めたのはミニョだ。」
― カトリーヌ・・・一体何が目的だ?
「ただ、今の状態のミニョを一人で韓国へ帰す訳にはいかないから、カトリーヌって人も一緒について来るらしい。それが明後日の午後だ。」
「前に来た手紙から、大体の帰国日は判っていた。それに合わせてスケジュール調整をしてきた。明日の仕事をこなせば、明後日から二日間四人共オフだ。その後はそれぞれ仕事が入っている。俺は作曲作業は事務所に行かず、ここですることにしよう。」
「今のミニョを一人にはしたくないからな。にしてももう少し早く手紙が届いてれば、俺から院長様に連絡してミニョの様子を知ることができたのに。・・・マ室長・・・」
「マ室長には責任を取ってもらう。明後日から二週間、出来る限り急な仕事は入れないようにしてもらおう。ずらせる仕事は全て後回しだ。なるべく合宿所に誰かが居るようにする。」
「判った、後はシヌヒョンとジェルミにミニョのこと何て話そう・・・」
「そうだな、どこまで話すべきか・・・とりあえず、あいつから話が出るまではこっちからは何も聞かないことにしておいて様子をみよう。ネルソンに関する話は特に気をつけるように。」
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