You're My Only Shinin' Star (17) | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

テレビ局でのPR活動、雑誌の取材二つを済ませ、最後の取材の為に指定されたホテルへ向かった。

レストランの個室へ通されると、中には女性記者と男性カメラマンが待っていた。


「初めまして、トレイシー・オールドマンです。本日は突然のオファーにも拘らず快くお引き受け下さり、ありがとうございます。」


流暢な韓国語でそう言うと、丁寧におじぎをするトレイシー。

背中までありそうな金髪は軽くウェーブがかかっており、左肩で一つに纏められると毛先が胸の辺りで揺れている。


「韓国語、お上手なんですね。」


シヌが微笑みながらじっとトレイシーを見つめる。


「ありがとうございます。以前、韓国に語学留学していたので。」


細めの赤い縁の眼鏡をかけており、青い瞳でニッコリと微笑んでいた。


          ○          ○          ○


和やかな雰囲気で始まった取材。

今回のアジアツアーのことに対しての取材は、どのテレビ局、雑誌でも皆おなじようなことを質問してくるので、答えるメンバーも、それ程考えることもなく、淡々と取材は進んでいったが、暫くするとテギョンが顔を歪めだした。


「アジアだけでなく、イギリスでもA.N.JELLの名前は広がりつつありますが、ヨーロッパ進出の予定はおありですか?」


ヨーロッパ進出という言葉に、ジェルミとミナムは小声でやったーと騒ぎ出す。

シヌはいつもの微笑みを浮かべ、テギョンは無表情のまま。


「ヨーロッパ・・・。いずれは視野に入れたいですが、まだ今はアジアでの地盤をもっと強固なものにしなければと考えています。」


ドアがノックされ 『失礼します』 という声と共に料理が運ばれて来た。


「あぁ、もうこんな時間なんですね。申し訳ありませんがあと少しだけよろしいですか、お食事されながらで構いませんので。このままですとせっかく香港の海鮮料理、味が落ちてしまいます。」


「私共は構いませんが。」


テギョンが答える前に、ジェルミとミナムは料理に箸をつけようとしていた。

料理と一緒に運ばれてきたアルコール類。

ウイスキー、ブランデー、ワイン、マオタイ酒。

ミナムはためらいもなくマオタイ酒に手を伸ばす。


「一度飲んでみたかったんだ。」


「ミナム、酒は取材が終わってからにしておけ。」


シヌに窘められ、テギョンに睨まれる。

ミナムはばつが悪そうに無言で伸ばしていた手を引っ込めた。


「ミナムさんはお酒がお好きなんですね。お酒にまつわる失敗談とか何かありますか?」


トレイシーは取材を続けながらも、料理を勧めている。

テギョン、シヌ、ジェルミが一斉にミナムを見た。


― ミナムじゃなくて、ミニョがやってくれたよなぁ。


三人はクラブの屋上での出来事を思い出し、軽くため息をつく。

その様子を見ていたミナムは、話には聞いているが実際に見た訳ではない例の事件を思い出しているのだろうと、クスクス笑いながらテギョンを見た。


「俺には失敗談はないですけど・・・俺の妹にはあります。」


ニヤッと笑ってテギョンを見る。


「ミナムさんの妹さんというと・・・ああ、あのコンサートの告白の。」


トレイシーは答えを求めるようにテギョンを見た。

テギョンは眉間にしわを寄せ、軽く握った拳の人差し指を鼻の下へあてている。よく見ると、目が赤く充血しているようだ。


「よくご存知ですね。あれは初コンサートのミナムの緊張をほぐそうとした演出だったんですが。」


テギョンの様子に気づいたシヌが、代わりに答えた。

ジェルミとミナムは前菜を食べ終え、スープに手を付けている。


「では、最後の質問なんですが・・・テギョンさん、あの告白は本当に演出だったんでしょうか。あの頃かなり騒がれていましたよね。本当の告白だったのではないか、と。実際にはどうなんですか?」


前菜を食べ始めていたシヌがテギョンを見た。テギョンに何か言いかけようとしている。

テギョンも料理に箸をつけ・・・箸を置いた。


「最後の質問と言うことは、これで取材は終わりですね。そのことでしたら、ジェルミに聞いて下さい。あれは、ジェルミが考えたことなので。」


突然話をふられたジェルミ。テギョンの不機嫌な様子に、口に入れたスープをごくんと飲み込みオロオロしている。


「マ室長、取材は終わりだ。俺は先にタクシーで帰るから。」


テギョンは立ち上がると、不機嫌な顔のままトレイシーとカメラマンに軽く会釈をして部屋から出た行った。


「答えられない質問だったんでしょうか。やっぱりあれは演出ではなかった・・・とか?」


トレイシーはクスクスと笑いながらテギョンが消えたドアを眺めている。


「何か誤解をされているようですね。テギョンの不機嫌な理由はコレですよ。」


シヌが箸でテーブルの料理を指した。


「エビが入ってます。テギョンはエビアレルギーなので。・・・それと、この部屋の生花。花器は部屋の隅に置いてありますが、暖房の風で花粉が舞っているのでしょう。俺には判りませんが・・・テギョンは花粉アレルギーなんで。」

ジェルミとミナムとマ室長は部屋の隅に置いてある大きな花器に目を向ける。


「イギリスの出版社の方があのコンサートのことをご存じなら、これくらいのことは事前に調べておくべきでしたね。」


柔らかい口調だが、シヌの目が鋭く光る。


「ジェルミ、テギョンのご指名だ。最後の質問の答えを・・・」


「あ、あれは、俺が考えて、テギョンヒョンに頼んだことです。ミナムの為にした、ドッキリ・・・演出です。」


「はい、これで取材は終了ですね。では我々は心おきなく食事を続けさせて頂きます。」


静かに微笑むシヌ。

自分の落ち度を指摘されたトレイシー。


「申し訳ありませんでした。本日はありがとうございました。」


頭を下げると、カメラマンと共に慌てて部屋から出て行った。

シヌはスープを口に運びながら、部屋から出ていくトレイシーの 『チッ』 と言う舌打ちを聞き逃さなかった。



     *     *     *     *     *     *     *


― 次回予告 ―   (次のお話のどこかで出てきます)


ガラス越しに見える丸い月。

窓を開けると、暖房のきいた室内に冬の冷気が流れ込む。

ぶるっと一瞬身震いをしたが、瞼を閉じ両腕を大きく広げ、月からの光を全身に浴び、二度、三度と深呼吸をする。


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