「そういえばジェルミ、ちゃんと元の体形に戻ったわね。」
ワン・コーディがジェルミの身体をまじまじと見つめ、感心した様に言った。
「年末の歌謡祭の時は、このままどんどん太ったらどうしようって思ったけど、努力したのね、えらいわ。」
「へへへ、ちょっと甘い物ひかえて、あとはジム行ったりして頑張ったんだ。」
プッと噴き出した口元をそっと手で隠すミナム。
今年になってミニョから手紙が届いた。ワン・コーディの祈りが通じたのか、ジェルミ宛の手紙にはこんな一文があった。
『アイスやお菓子の食べ過ぎには気をつけて下さいね。』
ミニョ効果は絶大だ。この一文と、あのミナムの一言。
『男の人の硬い腹筋が好きだって言ってたな。』
ミニョが言った言葉ではないが、誤解したジェルミはその後ジムに通い・・・。元の体形と、少しだけ引き締まった腹筋を手に入れた。
「そういえば、シヌとテギョンも少し痩せた・・・っていうか、引き締まったわね。」
二人の身体を見ながら、少し首を傾げる。
「コンサートツアーは体力勝負ですからね。余分なぜい肉がついてると、最後までもたないんで。」
「歌う為には肺と腹筋を鍛えておかないとな。忙しくてできなかったジョギングを再開しただけだ。」
シヌとテギョンを見ているミナムの肩が、笑いで微かに揺れている。
ミニョ効果は、この二人にも表れていた。二人も誤解したまま。
果たして、本当にミニョがそんなことを言うのだろうかという疑問は残るが・・・
「へぇ、頑張ってるのね。ミナムは・・・」
ミナムは目尻に浮かぶ涙をこっそり指で拭うと、軽く深呼吸をして笑いをおさめた。
「俺はもっと前からジム通ってるから、元々締まってたでしょ。やっぱ、男は筋肉ついてなきゃ。」
二の腕を軽く叩いてアピールする。
「ん、まあ、そうね。」
今日のステージで使った衣装をチェックしているところへ、マ室長が入って来た。
「おーい、そろそろ車に乗ってくれ。」
ハァハァと息を切らし控室のドアを開けて入って来たマ室長に、皆の視線が集中する。
筋肉・・・・・・。今この部屋の中でこの単語と最も遠い位置にいるであろうマ室長。
最近特に、ぽっちゃりとして、お腹が必要以上にで~んと存在を主張していた。
ワンコーディはマ室長の頭のてっぺんから足の先までゆっくりと眺めると、はぁ~~っと長いため息をついた。
皆の視線が自分に集中していることに気づいたマ室長は、にへっと妙な笑みを顔に浮かべる。
「なんだよ、皆俺の顔に見惚れるなよ~」
「見惚れてるんじゃない、あきれてるんだ。」
「マ室長、お肉つき過ぎ」
「もう少し運動したら?」
テギョンの言葉に、ジェルミとミナムも続ける。
「俺忙しいからそんな暇ないよ~。今だって走り回って大変なんだから。このツアーの間に、2㎏も痩せたんだぞ~。ほら、なんとなく引き締まっただろ?」
どう見ても全く変わらない体形を皆に見せつけ、へらへらと笑っている。
「フニ・・・あんたは身体の前に、その顔を引き締めなさい・・・・・・」
ワンコーディの言葉に一同頷いた。
○ ○ ○
夕食を済ませホテルへ帰る車の中、助手席に座ったマ室長が後ろを振り向きながら、明日のスケジュールを確認する。
「明日は、午前中にテレビ局で今回のアジアツアーのPR出演が二本と、午後から雑誌の取材が三本・・・」
「雑誌の取材は二本のはずだろ」
シートに深く座り、腕組みをして目を瞑っていたテギョンが口を歪める。
「さっき急に決まった。悪いが取材は三本だ。」
「勝手に仕事を入れるなと、いつも言ってるだろ。」
マ室長をギロリと睨む。
「俺じゃないよ~。社長から連絡があったんだ。どうしても断れないから、何とか頼むって」
「どうしても断れないって・・・何かあるの?」
ジェルミが口を挿む。
「さぁ、俺にはよく判らんが、社長の様子がずいぶん切羽詰まった感じだった。イギリスの出版社なんだが・・・。ホテルで取材の後、そのまま食事することになってるから、まあ、夕食を食べるつもりで・・・な、頼んだぞ。」
マ室長と仕事をしていると急に取材が入ることは今までにも何度かあったが、こんなにも急な仕事を、社長が断れない相手と言うのは珍しい。テギョンに一言の確認もなく、決定事項として伝えられたことも腑に落ちない。
テギョンとシヌは明日の取材を気にしながら、ジェルミとミナムは明日の夕食を気にしながら、車にゆられていた。
* * * * * * *
― 次回予告 ― (次のお話のどこかで出てきます)
「最後の質問なんですが・・・テギョンさん、あの告白は本当に演出だったんでしょうか。あの頃かなり騒がれていましたよね。本当の告白だったのではないか、と。実際にはどうなんですか?」
前菜を食べ始めていたシヌがテギョンを見た。テギョンに何か言いかけようとしている。
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