A.N.JELLのアジアツアーが始まった。
タイ、フィリピン、香港、台湾の四ヶ国、約一ヶ月の予定だ。
宿泊先のホテルから、コンサートホールへ向かう車の中、ジェルミが皆に聞いた。
「ねぇ、ミニョへの手紙何て書いた?」
それまで腕を組んでシートに身体を沈めていたテギョンの眉がピクンと動き、閉じていた目がゆっくりと開く。
「俺はねぇ、ジョリーのことと、あと新しく見つけたカレー屋のこと。戻ってきたら一緒に、最高に辛いのを食べに行こうって書いたんだ。」
― 何?辛いカレーを一緒に食べに行こうだと?まさか二人きりでじゃないだろうな・・・。許さんぞ、俺も一緒に行くか・・・だが喉の為にもあまり辛いものは禁物だ。 『俺は辛いものは喉に悪いから、少ししか食べないぞ。』 『判ってますから。あまり無理しないで下さいね・・・クスッ』 なんて笑われてみろ、ショックで水も飲めなくなるぞ。・・・やはり、一緒に行くのはやめておくか・・・。
「ミナムは?」
― だいたい、何であいつはこいつらにも手紙を書いたんだ?俺にだけ書けばいいものを・・・・・・
「俺?書いてないよ。」
ミニョから送られてきた時と同じように、それぞれ書いた手紙を封筒に入れ、それを大きな封筒に入れたが、中身は三通だった。
「何で?」
「別に書くことないし。」
「冷たい奴だな、妹だろ。」
「・・・それ、この間も言われた・・・」
― よしっ。ミナムはあいつの兄だから許可しようと思ったが、それならそれで問題ない。問題は・・・
「じゃあ、シヌヒョン。シヌヒョンは何て書いたの?」
― そう、問題はシヌだ。シヌが何を書いたのかが、もの凄く気になる。
「俺?俺は・・・・・・」
シヌはチラッとテギョンの方を見る。一瞬目が合うと、テギョンは慌てて窓の方へ顔を向けた。
そんなテギョンの様子にいつもの微笑みを顔に浮かべると。
「・・・秘密。」
「え~、つまんないの。…じゃあ、テギョンヒョンは?」
最後にテギョンにも話がふられ。
「俺は・・・・・・」
テギョンはA.N.JELLの活動のことを書いていた。一か月間、アジアツアーの為韓国を離れること。コンサートの合間のテレビ出演、雑誌の取材など。
「お前達に言う必要はない。」
軽く睨むと、また窓の方を見る。
「テギョンヒョンのことだから、きっと仕事のことじゃないの。」
ミナムがテギョンの様子を窺う。
「今日はどこでコンサートやったとか、次の会場はどこになるとか。あと、どこのテレビに出たとか、どの雑誌の取材だったとか・・・・・・」
テギョンの顔が、段々と赤くなる。その様子を隣で見ているシヌ。
「ミナム、それ手紙っていうより、活動報告書だよ。」
ジェルミの言葉にシヌが噴き出した。
拳を口にあて、肩を揺らして笑いを堪えている。
テギョンは真っ赤だ。
そんな二人の様子にミナムは声を出して笑い出した。
一人キョトンとするジェルミだが、三人の顔を順番に見ると、ハッと気づく。
― まさか・・・図星?
「ぶっ・・・」
車が目的地に着いた。先にスタッフがぞろぞろと降りて行く。
そんな中、顔を真っ赤にしたテギョン。笑いを堪えるシヌ。声を出して笑うミナムとジェルミ。
「お~い、早く降りろよ~」
マ室長が声をかける。
ゴホンッと咳払いをするテギョン。
「さっさと降りるぞ。むだ口きいてる暇があったらリハーサルだ!」
テギョンに促され、メンバー達は笑いながら車から降りた。
* * * * * * *
― 次回予告 ― (次のお話のどこかで出てきます)
「そういえば、シヌとテギョンも少し痩せた・・・っていうか、引き締まったわね。」
二人の身体を見ながら、少し首を傾げる。
「コンサートツアーは体力勝負ですからね。余分なぜい肉がついてると、最後までもたないんで。」
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