You're My Only Shinin' Star (14) | 星の輝き、月の光

星の輝き、月の光

「イケメンですね」(韓国版)の二次小説です。
ドラマの直後からのお話になります。

― テギョンさんお元気ですか?


東アフリカにあたるこの国の広大で緑豊かな大地、素晴らしい景色には圧倒されてしまいます。

標高によってかなり気候は変わりますが、私のいる地域は比較的穏やかで温かい日中と涼しい夜の気持ちのいいところです。


東アフリカ唯一のキリスト教国家。

世界の中で最も歴史のあるキリスト教国家と言われているこの国は、内戦および周辺国との対立により、経済再建が進まず、財政破綻状態。

ミニョは政府、他の組織による資金援助を一切受けていないボランティア派遣団体を選び、ここへ来た。つまり、全額自己負担である。

ミニョの今回のボランティアは修道院とは関係なく、完全な個人契約。修道院からの指示で仕事内容を左右される今までのそれとは違い、自由に仕事が選べる。

ミニョは子供とふれあっていたかった。色々な人達と出会いたかった。

学生、社会人、様々な職種の人が参加する、このボランティアを選んだ理由もそこにあった。


          ○          ○          ○


空港へ着くと現地スタッフに迎えられ、一度施設へと向かう。その途中インターネットカフェと公衆電話の場所を教えられた。ボランティアは毎週末自由に過ごせる時間があるので、家族と連絡をとる人が多いらしい。

その後、ホストファミリー宅へ案内された。

アントニオ、ウ゛ィルザ夫妻、十歳のタニア、一歳のジョゼ。

皆、ミニョを歓迎してくれた。



ミニョの仕事は孤児院での子供の世話。

一度にたくさんの子供の相手をしていた韓国での養護施設とは違って、ここでは一対一で子供と時間を過ごし、笑顔を取り戻す。

子供たちの多くは今までの境遇から、愛情に飢え、必死に注目を浴びようとしている。

全く笑わない子供もいた。

そんな中でミニョが世話をすることになったのは、ネルソン。五歳の男の子だった。


「あなたに任せるわ。」


シスターメアリーは、ミニョにその子の世話を任せた。

シスターメアリーは韓国でミニョと一緒に仕事をしていたこともあり、ミニョのことをよく知っていた。

一日中膝を抱えて、ほとんどしゃべらず、全く笑わない。感情をおもてに表わさないネルソンは、相手をするにはかなり難しい子だった。

かけっこ、サッカー、お絵かき・・・片言の英語とジェスチャーを混ぜて、色々な遊びに誘ったが、膝を抱えたまま一緒に遊ぼうとしない。現地の言葉で歌も歌ってみたが、無反応だった。

そんな日々が続き、ミニョも精神的に疲れていた。


― どうしたら心を開いてくれるのかしら。


ある日昼食を食べ終えて建物の外に出ると、真っ青な空に白い雲がぽっかりと浮かび、ゆっくりと流れていた。


「テギョンさん、今日の空はとても青いです。」


― この空は韓国にも続いてますよね。あの雲はテギョンさんのところまで届くんでしょうか・・・」


急に寂しくなり、胸元の星を握りしめる。そっと目を瞑り、テギョンの顔を思い浮かべる。

ミニョはすうっと大きく息を吸うと、青い空を仰いで歌い出した。


Panis angelicus  fit panis hominum

Dat panis coelicus  figuris terminum ・・・


『天使の糧』


ミニョが初めてテギョンの前で歌った曲。

コ・ミナムとして契約書にサインをしたミニョ。いきなりテギョンに腕を摑まれ引っ張っていかれた。

三人に取り囲まれ歌えと言われる。


― あの時は怖くて、すごく緊張して・・・とっさにこの歌が出てきたんです。・・・この歌が私たちの始まりの歌ですね。


青い空に澄んだ声が響き渡る。ゆるやかに流れる風に乗って、ミニョの歌声は遠くまで運ばれる。


― テギョンさんに届きますように。


テギョンを想い、心を込めて、空へ向かって、想いを解き放つ。

ミニョの目尻から涙が頬を伝ってポトリと落ちる。


― ・・・会いたいです、テギョンさん。自分からここへ来ることを決めたのに・・・負けそうになる私の心を傍で支えて欲しい・・・。


ミニョの歌声は大気にとけ、空高く昇っていった。



いつの間にかミニョの周りに子供が一人、二人・・・。気がつくと、ミニョは子供たちに囲まれていた。

温かい拍手。柔らかい笑顔。今までほとんど笑ったことのない子供の顔にも笑みが浮かんでいる。

ネルソンの目からは涙が零れ落ちていた。

ボランティアスタッフ、現地スタッフからも惜しみない拍手が送られる。


「ここに来てよかった。」


子供たちが笑顔を見せたことも嬉しかったが、自分がほんの少しでも役に立っているかもしれないと思えた瞬間だった。


「テギョンさん、アフリカに行くことを許可して下さって感謝します。私はここで頑張ります。」


          ○          ○          ○


夜、ホームステイ先の家で手紙を書く。

窓を開け上半身を乗り出すように空を見上げる。


「今日も星がきれいです。」


漆黒の闇の中に光る無数の星。


― A.N.JELLの歌、毎日聴いてます。夜寝る前に目を瞑って一人で聴いていると、何だかすぐ傍にテギョンさんがいらっしゃるみたいで。そして最後の言葉・・・・・・サランヘ・・・。あの言葉があるから、私は頑張れます。約束を守って下さってありがとうございます。あの・・・・・・私も、大好きです。


ミニョは胸元から星を取り出すと、そっと唇を寄せた。



     *     *     *     *     *     *     *


― 次回予告 ―   (次のお話のどこかで出てきます)


「じゃあ、シヌヒョン。シヌヒョンは何て書いたの?」


― そう、問題はシヌだ。シヌが何を書いたのかが、もの凄く気になる。


「俺?俺は・・・・・・」



宜しければ1クリックお願いします

  更新の励みになります

         ↓

   にほんブログ村 小説ブログ 二次小説へ
    にほんブログ村



  ペタしてね    読者登録してね