テギョンはミニョを抱きかかえたまま、ミナムの部屋のドアを開け・・・固まっていた。
「何だ・・・コレは・・・・・・」
首を傾げる。
床に散乱した雑誌、ベッドの上に広げられた大量の服。
「この間、この部屋に来た時は、もっと片付いてたぞ・・・」
暫く呆然と立ちつくしていたが、ミニョを寝かせるスペースがないと判断すると、自分の部屋へ足を向けた。
カチャ・・・
自分の部屋のドアを開け、ベッドへと向かう。
― こいつと一緒にこの部屋に入るのは、どれくらいぶりだろう。
ドキン、ドキン・・・・・・
何故だか妙に緊張して、自分の心臓の音まで聞こえてきそうだ。
首を傾げながら、気持ちよさそうに眠っているミニョの顔を見つめる。
― 俺は眠ってしまったこいつを、ベッドに寝かせる為に連れて来ただけだ。ミナムの部屋は、とても寝かせられる状態じゃなかったから、俺の部屋に連れて来ただけだ。
言い訳じみたことを考えているテギョン。
― 何故俺は、自分に言い訳してるんだ?
更に首を傾げながらも、ミニョをベッドへ下ろした。
「う~ん・・・」
寝返りをうったミニョは壁の方を向き、そのまま寝続ける。
テギョンは布団をかけると椅子に座った。
「テジトッキ、仲間が来たぞ。」
昨夜、部屋へ連れ戻したぬいぐるみのテジトッキに話しかける。
「絶滅は免れたな。」
ニンマリと笑い、テジトッキと握手をすると、五線紙と鉛筆を手にミニョの方を見る。
目を瞑り眉間にしわを寄せ、暫く考え込む。
チラリと目を開けミニョの方を見て、また目を瞑り、眉間にしわを寄せる。
何度か同じことを繰り返した後、あー、と声を上げて立ち上がった。
「こっちを向け!後頭部だけ見ていても、何も浮かんでこないぞ。」
紙と鉛筆を机に置き、ベッドまで来ると端の方に腰を下ろしミニョを見つめた。
「よく眠っているな。」
フッと口元が緩む。
暫く寝顔を眺めていたが、相変わらず壁の方を向いたままのミニョに、だんだん苛立ってきた。
ツン、ツンと頬を突っつく。
・・・無反応・・・・・・
もう一度ツン、ツンと頬を突っつく。
う~ん、と言いながら頬に触る物を無意識に手で払おうとする。
― 生意気な・・・。お前は今まで俺に姿も見せなかったくせに、今度は顔すらまともに見せない気か?・・・よ~し・・・・・・
テギョンは布団を捲るとスッと身体をミニョの横に寄せた。
自分の左腕の上にミニョの頭を乗せ、後ろから包み込むように抱きしめる。
朝のワイドショーでのミナムの言葉がよみがえる。
『天下の皇帝ファン・テギョンに告白されて、すぐにボランティアで外国に行く女性がいると思います?』
― ここに、いるんだよな・・・・・・
「はぁ~、やっとつかまえた・・・と思ったのにな。明日にはもう行ってしまうのか・・・」
沖縄でミニョの手を離した後のテギョンは、とにかく忙しかった。
六枚目のアルバムの大ヒットと共に増えたテレビ出演、ラジオ出演、雑誌の取材。いつもなら断っていたようなトーク番組にまで、テギョン自ら出ると言い出し、その結果、毎日必ずどこかでファン・テギョンの姿を目にし、ファン・テギョンの声を耳にすることができた。
この状況を喜んだのは、ファンとメディア関係者、それにアン社長だった。
毎日朝早く合宿所を出て、帰ってくるのは深夜。テギョンはその後作曲作業もして、かなりの疲労状態。
そこまで身体を酷使しなければ眠りにつけない。そんなテギョンの行動が、ミニョとの別れによるものだと判っているメンバーは、テギョンの身体を心配しながらも何も言えずにいた。
「俺は、お前がいると眠れるみたいだ。」
眠気からか段々と意識が遠のく。
― お前がいないと眠れないのか?はぁ~、また眠れない日々が続くのか・・・・・・
テギョンはミニョの髪に顔をうずめると、抱きしめている腕にギュッと力を込めた。
「・・・サランヘ・・・」
* * * * * * *
― 次回予告 ― (次のお話のどこかで出てきます)
「あ~、コホン。・・・ヒョン、入るよ~」
そっとドアを開けて顔だけ中に入れる。
「・・・お取込み中じゃないよね~。・・・そろそろ時間なんだけど。・・・電話したのに出ない方が悪いんだから・・・」
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