母の病11
七ヶ月前より体は痩せ細り、すっかり自力では何も出来なくなってしまった。
寝たきりの母と夜中話をした。
「部屋から見える電気のスタンドや食器棚を見ていると、あんなのでもホッとするのよね」
そう呟いたかと思えば、いつの間にか眠っていた。
それから数時間後に目を覚まし、まだ違う部屋で寝ていた俺が様子を見に来ると、大変な事になっていた(自重)
それらを処理して、体をキレイにして、ご飯を作って食べさせて、あっという間に施設の方が迎えに来る時間に。
ケアマネさんが先に到着し、コロナ禍という事で、施設の方が直接単身で来てくれる事になった。
しばらくして、防護服みたいな上着を着た女性が家に入って来た。
下までは見送りに来て良いというので、ケアマネさんと車の前まで行った。
不安そうな母の顔。
優しく接してくださる施設の方とケアマネさん。
それに引き換え、
母に対するこれまでの自らの対応。
あんなにもがっついて嬉しそうに寿司を食べる姿。
誰も味方をしてくれないと言いたげな表情。
こんな筈じゃなかったのにと言う母の気持ち。
色んなものが頭の中を駆け巡った。
やがて車は走り出し、柄にもなく手を振った。
そのままケアマネさんと二人きりになり、
色々ご迷惑をと挨拶を交わし、別れた。
久しぶりに一人になり、ホッとするつもりだったが、
信じられないぐらい泣きじゃくった。
涙が勝手に流れて来て、暫く動けなくなってしまった。